2012男子ジュニア海外合宿報告

1 期間 平成24年1月21日(水)~2月2日(木) 
2 場所 CAR Gymnastics Cancun (メキシコ/カンクン)
3 宿泊 OASIS PALM BEACH HOTEL  
4 選手団 コーチ7名、選手12名(計19名)
コーチ 田野辺満(団長/鯖江高)藤原佳市(関西高)山崎隆之(徳洲会)森川勝俊(埼玉栄高)梅本英貴(清風高)小倉雅昭(四天王寺)小林隆(NTC専任)
選手  岡準平(鯖江)市瀬達貴(清風)今林開人(市船橋)長谷川智将(関西)鈴木湧(栗東)神本雄也(関西)瀬立憲翔(大成学院)堀野真志(関西)野々村晃司(市船橋)神津源一郎(埼玉栄)佐藤匠(大成学院)千葉健太(四天王寺)
5 スケジュール   
 1月21日 成田空港出発→ダラス経由→カンクン到着
 1月22~31日 強化練習
 2月1日 カンクン出発→ダラス経由
 2月2日 成田空港到着
6 イギリスチーム視察
昨年同様、イギリスチームの日程に合わせた合宿であった。イギリスチームは、ナショナルチーム13名、ジュニアナショナルチーム10名の計23名の選手が参加していた。
 ナショナルチームは、ロンドン五輪テストイベント直後の合宿であった。基本練習、続行練習、新技の取り組み、体力トレーニングといったメニューを実施していた。種目的には、ゆか、あん馬、跳馬の強化をメインとして、平行棒の棒下系、鉄棒の手放し技や連続技によるDスコアの向上を目指していた。ゆかに関しては正確なひねり技や伸身2回宙返り2回ひねり等のビックタンブリングの強化をしていた。前方転回やロンダートなどの基本技術が高く、私たちジュニア指導者には大変参考となった。
 ジュニアチームは、基本を中心とした強化であった。体幹トレーニングや姿勢つくりを丁寧に行っていたほか、ゆかの後転倒立やひねり系等の細かい基本練習を熱心に指導している姿勢が好印象であった。種目に関しては、ナショナル選手同様、あん馬のレベルが非常に高く、フロップ・コンバインなどの転向系に関しては高い技術レベルであった。他の種目に関しては、現段階ではDスコアが高まっていないが、伸びしろの多い選手ばかりであり、今後の成長にも注目していきたいと考えている。また、ジュニア期の傷害予防のトレーニングを取り入れていた。足首、膝、股関節、腰、肩関節等のインナートレーニングやリハビリテーション等をトレーナー2名の指導のもとで、毎日の練習後に実施していた。
 今回のカンクン合宿を含めて、4年間を通じてイギリスチームと合同で合宿をさせていただき、ロンドン五輪に向けた中長期的な強化システムの一部を見させていただくことができた。4年間の視察で感じたことは、「ジュニア選手からナショナル選手までの一貫指導体制に取り組んでいること」、「指導者が、常に新しい技術や練習方法を取り入れようと工夫していること」「基本練習を大切にしていること」の3点が印象的であった。
7 日本選手のレポート
 本合宿では、春先に主要な大会(3月のアジアジュニア、環太平洋選手権、高校選抜、4月の全日本選手権)があり、例年の海外合宿に比べて技術練習・続行練習の配分を多くした練習メニューで実施した。
 昨年の報告書にも記載した事であるが、体育館はGYMNOV製の器具でゆかフロアー2面、ピット施設、タンブリングトランポリン、パワータンブリングなど、非常に充実した設備が整っていた。また、日中の平均気温が28度で湿度も高くないため、練習中の選手の動きが大変良く、心身ともに充実した練習を行うことができた。何より、全員けがなく合宿が行えたほか、ジュニア期に多い腰痛や慢性的な関節痛を持っている選手たちが、調子良く練習ができたこともカンクン合宿での成果であったと考えている。
 主な練習内容に関しては、午前中に基本練習を行うパターンと、午前中に技術練習(続行練習、幹通し、前後半)を行う2つのパターンを取り入れた。基本練習に関しては、体幹や脚力・倒立等のトレーニングを行った後、主に以下の基本練習を取り入れた。
・あん馬 各種旋回の大きさ、下向き転向、Bシュテクリ、ポメル旋回、グループⅠ
・つり輪 スゥイング倒立、力技、倒立の姿勢
・平行棒 スゥイング倒立、移行・逆移行、ツイスト連続、ディアミドフ、宙返りの高さ
・鉄 棒 1/2ひねり、とび1/2ひねり、グループⅢ、終末技
・跳馬 高くしたマットでの入りの練習
・ゆか タントラにて前方・後方の宙返りの連続、ひねりの技術練習、ビックタンブリング
 基本練習に関しては、ここ数年のジュニア強化の柱として取り組んでいる課題であり、選手・指導者が全員で課題に取り組むことができた。技術練習に関しては、鉄棒の手放し技(コバチ、コールマン、カッシーナ等)に意欲的に取り組む選手が多かった。本合宿で初めてコバチを成功させた野々村、ひねり技からの手放し技に果敢に挑戦する長谷川など、活気のある雰囲気であった。他の種目でも、今林、堀野のあん馬の実施、岡の跳馬のロペスなど、随所にすばらしい動きが見られたほか、選手全員がジュニアの代表としての自覚を持って行動することができた。
8 総評
 長期合宿の実施にあたり、食事や練習環境、生活環境などが心配されたが、特に不便がなく順調な合宿であった。イギリスチームから受ける刺激や情報、外国選手や日本選手同士のコミュニケーション、互いの技術交換など、海外合宿ならではの経験をさせていただいた。これらの経験は、成長期のジュニア選手にとっては貴重な財産であり、今後の選手生活にプラスとなることは間違いなく、春の大会に向けた良いスタートが切れたのではないかと考えている。2月下旬には、NTCでジュニア合宿(含研修合宿)が予定されている。本遠征での情報伝達はもとより、これまでジュニア強化で取り組んできたトレーニングや基本練習、技術指導を取り入れ、さらに参加される指導者・選手との情報交換・コミュニケーションを図ることにより、実りある合宿になれば幸いである。
 最後に、本遠征の実施にあたり、カンクンの関係者、日本体操協会をはじめ多くの関係者各位にご理解、ご支援を賜り心より感謝を申し上げたい。また、今後ともジュニア強化へのご支援をお願い申し上げ報告とする。