北京オリンピック男子団体予選レポ

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 跳馬とあん馬に大きな過失を出したが、団体予選の日本の戦いぶりには、チームとしてのまとまりを感じた。沖口のけがが完治せず、チーム状態としては、決して万全とは言えない。しかし、その状況だからこそ、それぞれが持てる力を出し切ろうという気持ちが演技から伝わってきたからかもしれない。
 度重なるケガから復帰してきた鹿島が平行棒の最初の演技をまとめ、流れを作る。その後、五輪初出場となる中瀬、坂本、内村は、危なげない演技をし、主将の冨田へとつないだ。平行棒は支持系の種目であん馬とともに過失の出やすい種目だが、好スタートを切った。
 続く鉄棒では坂本が伸身新月面の着地を止めて日本の強さをアピール。鹿島の演技まで間があり、集中力を維持するのに苦労したと思うが、コールマンがバーに近づきけ上がりで処理する場面もあったが、坂本同様、最後の着地を決めた。中瀬の落ち着いた演技後、冨田、内村も大きなミスなく続いた。
 ゆかは、坂本、中瀬、冨田が大過失なく沖口の演技につなげた。そして沖口もそれに応える演技を成功させ、内村につなげた。チーム得点61.675はトップ。ベスト3の成績でもトップに位置した。
 あん馬では、中瀬、坂本と持てる力を発揮。内村はマジャール移動の途中でバランスを崩して落下。しかし、マジャール移動のD難度が成立していなかったことから冷静にマジャール移動を成功させてA得点を落とさずに演技を終了した。その後、冨田が演技を成功させて最終演技者鹿島につなげる。鹿島はEコンバインで握り換えがいつも通りにいかず、その後、バランスを立て直しにかかるが、一腕上上向き転向(E難度)で落下。チームとして2名の大過失を出してしまった。
 つり輪では大きなミスなく内村、中瀬、坂本が演技。冨田はホンマ中水平で停滞に近い実施でリズムを崩す。詳細は確認していないが、ホンマ中水平(F難度)の部分を「ホンマ(B難度)」と「中水平(D難度)」に分割して判定されたようだ。これにより「ホンマ中水平」であればグループⅢの技が、分割によりグループⅠとⅣになった。カウントできる技は同一グループで4つまでという制限があるため、グループⅢであれば問題のなかった構成がグループⅠとⅣに代わったことにより、その制限に抵触。予定では6.9であったA得点を6.3 まで引き下げてしまった。冨田としてはその表現に工夫を凝らし、個性的な習熟度をアピールする部分であったが、審判分業制のもっともマイナス面が出てしまい残念で仕方ない。
 跳馬は、沖口が見事に伸身カサマツとび1回ひねり(アカピアン)の着地を決め、鹿島、坂本、内村のいい演技に導いた。なお、冨田はドリッグスに挑んだが着地でバランスを崩し、左手をつき、左エリア外に出てしまった。
 12日には団体決勝が控える。持ち点もなくなり、予選と異なり6-3-3制(6選手の中から3選手が演技しその3選手の得点がチーム得点となる制度)はミスが許されない。正月の風物詩「駅伝」と同じように、区間で大ブレーキがあると失速する。2001年世界選手権にこの競技方式が採用された時には、男子団体において予選3位の韓国が選手の怪我により最下位に。また、昨年の世界選手権の女子団体においては予選4位のロシアが跳馬の助走をミスして0点となり最下位に沈んだ。何が起きるか分からないこの団体決勝。予選を通じて日本チームが見せてくれた「和(まとまり)」は、決勝においても力を発揮してくれることだろう。その後押しをぜひ皆さんにはしてもらいたい。
思い切った演技を披露した内村航平選手
(撮影 竹内里摩子)