北京オリンピック女子個人決勝レポ

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 女子個人総合は、団体戦と同様にアメリカ対中国の一騎打ちの様相を見せた。
 第一ローテーション(跳馬)では、アマナール(ユルチェンコとび2回半ひねり)に挑戦した中国のJIANG選手がしりもちをつき、残念なスタートとなった。同じくアマナールを見せた世界チャンピオンのジョンソン選手(アメリカ)、ユルチェンコとび2回ひねりを行ったYANG選手(中国)は共に着地をまとめた。そして一番見事であったのはリューキン選手(アメリカ)。ユルチェンコとび1回半ひねりを、空中姿勢もこれまでで最高といえる美しさで着地まで止めた。この時点ではジョンソン選手が順当にリードした。
 第二ローテーション(段違い平行棒)は高得点が連発した。まず団体決勝で16.900を出したリューキン選手。片手軸の車輪1回ひねりを連続するシリーズは見事であったが、パク宙返りの後の捌きでややスピードが落ちてしまい、着地も低くなって前に一歩出てしまう。しかし、それでも16.650を出し、伸身新月面宙返り下りの着地を止めたジョンソン選手を逆転。しかし更に上回ったのはYANG選手で、リューキン選手と違い、流れが留まることなく演技を続け見事に16.725と今日最高の得点を出した。
 第三ローテーション(平均台)に入ると、まずジョンソン選手が追い上げにかかる。スタンドの後方宙返り1回ひねりやかかえ込み月面宙返り下りなどの高難度を見せ、着地以外ではほぼミスがなく演技を行った。そして16.050という得点を出してリューキン選手、YANG選手の演技を待つ。YANG選手は非常に落ち着いた演技で15.750をマークし、ジョンソン選手を上回った。そして最後のリューキン選手は更に完璧な実施を行う。ぐらつきを見せない実施を見せて、最後の後方伸身宙返り2回半ひねり下りでは跳馬同様美しい実施で着地を見事に止め、ジョンソン選手を更に上回る16.125を出した。これによりリューキン選手が優位に立った状態で最終種目を迎えることになった。
 最後のローテーション(ゆか)ではまずYANG選手が後方宙1回半ひねり~前方宙返り1回半ひねりの着地が低くなり15.000に留まり、アメリカ勢二人にプレッシャーを与えることはできなかった。次にリューキン選手が素晴らしい着地を連続し得点は15.525。その後に行ったジョンソン選手は同じく素晴らしい演技を見せ15.525。リューキン選手を上回ることはできなかったが、YANG選手を上回り、アメリカ勢が見事に金メダル、銀メダルを獲得した。また、YANG選手はシドニーのLIU選手、アテネのZHANG選手に続いて、三大会連続となる中国勢の個人総合メダル獲得となった。
 表彰式では、「Olympic Champion」のアナウンスと共に感動の涙を浮かべるリューキン選手の表情が印象的であった。演技と共に我々の心に刻み込まれるものであったといえよう。五輪でこそ生まれる感動的な瞬間ではないだろうか。
 なお、決勝に進出した鶴見選手はゆかの最後の後方屈身2回宙返りで後ろに数歩大きく下がって両足が出てしまうライン減点、大島選手は平均台で落下するなど、団体の時よりはミスを出し順位を伸ばすことはできなかったが、両選手ともに、はつらつとした演技を披露した。