体操W杯決勝前半、女子レポート

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【女子跳馬】
ZAMOLODCHIKOVA(ロシア)
 北京五輪出場を果たせなかった、シドニー五輪金メダリストは、1本目のユルチェンコとび2回ひねりにおいて腰を引いた低い着地で後ろに大きく動いてしまう。2本目のロンダード~後ろとびひねり前転とび前方かかえ込み宙返り半ひねりは前に崩れてしまう。
KAESLIN(スイス)
 1本目は価値点の高いロンダード~後ろとびひねり前転とび前方伸身宙返り1回半ひねりを見事に決め、2本目のユルチェンコとび伸身1回半ひねりも前に一歩動くにとどめて高得点をマーク。
BOCZOGO(ハンガリー)
 前転とび前方屈身宙返り半ひねりは後ろに一歩動き、そして2本目のユルチェンコとび伸身1回半ひねりはしりもちをついてしまう。
GARCIA(メキシコ)
 北京五輪は参加していないが、体線の美しさで評判の高い選手。1本目はユルチェンコとび伸身1回半ひねりで前に一歩動く。2本目のロンダード~後ろとびひねり前転とび前方屈身宙返り半ひねりはひねり切った後の高さが不足して得点を伸ばせず。
VANWALLGEGHEM(ベルギー)
 ユルチェンコとび伸身1回半ひねりは大きさのある演技であった。2本目はロンダード~後ろとびひねり前転とび前方屈身宙返り半ひねりで、着地でわずかに動いたもののまずまずの実施。GARCIA選手とまったく同じ技を見せたが2本ともにGARCIA選手を上回る得点であった。
CHENG(中国)
 ユルチェンコとび2回半ひねり(アマナール)は実施しなかったが、ユルチェンコとび2回ひねりは格の違いを見せつける演技であった。2本目も自身の開発した「チェンフェイとび」ではなく、1回ひねりのひねりを少なくしたロンダード~後ろとびひねり前転とび前方伸身宙返り半ひねりであったが、これも素晴らしい実施。唯一の15点台の決定点となった。
 北京五輪では失敗のため、地元の声援にこたえられなかったCHENG選手が圧倒的な力を見せて優勝した。2位も価値点の高い技を決めたKAESLIN選手が入った。また、3位にはVANWAGHEM選手が入り、ベルギーの体操に初のメダルをもたらした。
【段違い平行棒】
HE(中国)
 北京五輪金メダリスト。ポディウム練習から北京の構成を維持してきたが、本番もその構成を見せてくれた。やはりイエーガー宙返り半ひねり~イエーガー宙返りは観客を一番沸かせてくれるものであった。しかしながら、北京五輪の団体予選と同様、パク宙返りの後の低棒でのけ上がり倒立半ひねりのところで倒立に上がりきらずに倒れていまい、落下しなかったが、明らかなミスが出てしまった点は残念であった。得点は、Aスコア7.7を保ち、16点台をマーク。
SIKULOVA(チェコ)
 シュタルダー1回ひねり~ギンガーなどをノーミスで決めた。全体的に姿勢欠点があり、Bスコアは伸びず。
KOVAL(ウクライナ)
 ポディウム練習で最後まで何度も確認していた閉脚トカチェフでバーに乗ってしまい、非常に危ない体勢で落下。ポディウム練習では逆にバーより遠くてキャッチできずに落下していた。その後、見事に演技を続けたものの、落下が大きく響いた得点であった。
JIANG(中国)
 片手軸のひねりを多く入れた構成で、E難度を連続して息をつかせないシリーズであった。しかし、若干ではあるが全体的にHE選手よりもそのひねりの軸がややぶれている印象で、Aスコアは7.1まで伸びたがBスコアが失敗のあったHE選手をわずかに上回ったのみであった。この時点2位につける。
HYPOLITO選手(ブラジル)
 低棒から振りとびで高棒に移動するときにタイミング早くなったのか、高棒に触れることなく前に飛んでしまって落下。その後も落下があり、得点は伸びず。
鶴見虹子
 片手軸のひねりの後の倒立部分で、その後の技に繋げる前に停滞したものの、演技としては継続して、大きなミスはなし。全日本のときと同様の構成で挑み、Aスコアを6.8まで上げて、この時点で3位。
ZGOBA(ウクライナ)
 大逆手エンドー1回ひねり~屈身イエーガーの高難度のシリーズを決めたが、低棒で大逆手エンドーを行うというところで前にいけず、握りを変えて急遽足裏支持回転~そんきょ移動に変更。Aスコアが伸びず、そんきょ移動のペナルティもあり、15点に届かない得点にとどまり、鶴見選手の銅メダル確定!
 鶴見選手が日本女子として、世界大会でメダルを獲得したことは大いに喜ばしい。これで北京五輪の平均台種目別決勝進出に続く快挙を果たした鶴見選手の存在は、今後の日本女子体操界の発展に大きな影響を与えることは間違いない。
優勝したHE選手に関しては、ミスがあっても、圧倒的なAスコアが結果に結びついており、新しいルールでまたどういう構成になるか、楽しみである。
 余談となるが、鶴見選手が炭酸マグネシウムをバーにつける準備を手伝ったのは中国のJIANG選手。昔、ジュニア合宿で一緒に練習したときに知りあったそうで、敵味方を越えた光景に、体操ファミリーとしての絆を感じた。
■鶴見選手インタビュー
 自分でもこの結果には大変驚いています。出場が突然決まり、通しの練習もほとんどできない中で来たので、今回はでき過ぎです。北京五輪前の練習で仕上げてきた分の余力がまだ残っているのかなと思います。表彰台では中国の選手と並べたことが大変嬉しかったです。「わ、世界レベルだ」と思ってました(笑)。今回の構成は全日本のときに上げてきた内容と同じです。ただ、途中で止まってしまったので連続にはなりませんでした。途中で止まったところでは、意地で「頑張らないと」という気持ちで必死でした。