体操W杯後半、男子レポート

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【男子跳馬】
HYPOLITO(ブラジル)
 1本目はドリッグスで前に大きく一歩動く。2本目は伸身クエルボ1回ひねりで後ろに大きく一歩。Aスコアも低い為得点は伸びず。
WAMMES(オランダ)
 1本目のユルチェンコとび伸身2回半ひねりは雄大な実施で、前に一歩動いたものの9.525のBスコア。2本目は前転とび前方伸身宙返り2回ひねりで、後ろにわずかに動いたもののほぼ着地が止まった印象。これも9.575のBスコアで7.0のAスコアはないものの高得点で揃えた。
GOLOTSUTSKOV(ロシア)
 1本目のルーユーフー(屈身ツカハラダブル)は前に一歩であったが、着地が低かった。2本目のローチェもやや空中姿勢に締めがなく、前に一歩動く。
BOUHAIL(フランス)
 北京五輪のメダリスト。1本目のルーユーフーは低い着地で前に手を着いてしまうものの、2本目のドラグレスクは北京五輪のときと同じく見事に着地を止めた。2本ともAスコアを7.0にした唯一の選手。
FAHRIG(ドイツ)
 1本目の屈身ローチェは膝の曲がりもあり、しりもちをつきかける低い着地。2本目のドリッグスはやや高さ不足で得点は伸ばせなかった。
SAPRONENKO(ラトビア)
 1本目のローチェはしりもちで、2本目のヨー2は低い着地で膝を着き、空中でも膝割れあり。Bスコアが2本とも低かった。
GONZALEZ(チリ)
 地元スペイン選手と同様に温かく紹介された。昨日のゆかは棄権。1本目はユルチェンコ2回半ひねりで左に大きく崩れてラインオーバー。2本目の伸身カサマツとび1回ひねり(アカピアン)は大きさを感じる演技を見せた。
BOTLLA(スペイン)
 地元選手が初めて登場するとあって会場のボルテージは一気に上がった。1本目のドリッグスは距離が出て9.5までBスコアを伸ばした。2本目の前転とび前方伸身宙返り2回ひねりは前に大きく動いてしまったが、何とか3位タイに入り、会場は大いに盛り上がった。
【平行棒】
COUCHERAT(フランス)
 棒下宙返りひねり~屈身ベーレ、棒下宙返り~かかえ込みベーレなど、好調な演技を見せた。価値点は6.7。
FENG(中国)
 前方開脚宙返りを支持と腕支持で二つ入れる構成でアピールしたが、棒下宙返りひねりで前に動いてしまうミス。中国らしい技の多い演技構成でAスコアが7.0となり、B得点が伸びなかったもののCUCHERAT選手と並ぶ。
冨田洋之
 カット倒立の際、カット後にバランスを崩して足をバーにつけてしまうミス。終末技も後方屈身2回宙返りで大きく前に崩れてしまった。しかしながら、地元選手のように場内アナウンスで偉大な選手であること、今回がラストの大会であることを告げられて、観客からは温かい拍手が送られた。
PIASECKY(スロバキア)
 棒下宙返り~車輪~かかえ込みベーレが見せ場のシリーズできれいにまとめた。その後モリスエ、ヒーリー、ピーターズなども決めた。
TSOLAKIDIS(ギリシャ)
 北京五輪には出場できなかったが、オリジナル技が二つあり、ワールドカップならではの注目の選手。オリジナルのトゥソラキディスで大きく乱れてしまうが、リチャードも入れており、前振り上がり系がかなり得意な選手で演技そのものは見ごたえがあった。
CARBALLO(スペイン)
 今夜二人目のスペイン選手で、演技前から大いに盛り上がった。ティッペルトの後の倒立で動いてしまうが、着地も小さな一歩に留めて得点を待つが、Aスコアが6.0ということで上位には食い込めず。
GONCHAROV(ウクライナ)
 棒下宙返りひねりで前に動いてしまう。その後は前方屈身2回宙返り腕支持やヒーリーからの前方開脚宙返り腕支持を決めた。Bスコアを伸ばせなかったため、上位二人にはわずかに及ばず3位。
星陽輔
 トップが15.775の得点ということで、十分に優勝のチャンスがあったが、初めて構成したティッペルトで足がマットに当たり、そのまま落下する大過失。また、その他の演技では棒下宙返り1回ひねりをきれいに決めるなど、彼のよさは十分にアピールした。
 各選手に大小のミスが出てしまい、少々残念な結果となった。特に五輪や世界選手権では16点以上の争いであったことを考えると、今回は得点的なレベルは劣ってしまった。しかし、持ち技としては各選手見せ場があり、それを観客の方々には十分にアピールできた。
【鉄棒】
CUCHERAT(フランス)
 コールマンとコバチはきれいに決めたものの、アドラーひねりで足が割れてしまうミスを犯した。
ZONDERLAND(オランダ)
 スペシャリストのそろうオランダ勢で唯一北京五輪に出場した選手。見せ場であるコールマン~コバチを見事に決め、そして終末技の伸身新月面宙返り下りも見事に着地を止めてノーミスの演技であった。
CASSINA(イタリア)
 アテネ五輪金メダリスト。イタリアから多くのファンが来て熱烈な声援を送る中、自分の名前のついたカッシーナ(伸身コールマン)は決めたが、かかえ込みコバチで落下。その後、アドラー1回ひねりでも非常に危ない体勢で落下と振るわず。
RODRIGUEZ(ブラジル)
 リバルコ~ツォウリミン~エンドー1回ひねりなど、車輪系は技が豊富だが、手放し技はギンガーのみ。Aスコアが低く、上位争いには加わらず。
冨田洋之
 場内アナウンスで平行棒の演技前と同じく今大会で引退することが紹介されたが、「一人の偉大な、美しい体操をする選手」という言葉も含まれ、更に長いアナウンスで紹介された。会場からも、日本人のファンの方々以外からも多くの声援を受けて演技開始。非常に感動的なシーンであり、海外でも評価のみならず人気も高い選手であることを改めて感じた。
 演技としては、コールマンを見事に決めるが、その後やや停滞する場面が2箇所。そして、伸身新月面宙返り下りにおいては回転不足で前に大きく転んでしまう大過失を出してしまった。それでも、終末技以外は非常に美しく、切れのいい捌きで、美しい体操を最後まで見せてくれた。そして、ミスはあったもののBスコアは8.525が出て、この段階で何とか2位に入りメダル確定!
RIZZO(オーストラリア)
 アドラー1回ひねり~ヤマワキ、持ち味であるアドラーひねり~デフをきれいに決めて、場内を沸かせた。最後の伸身新月面宙返り下りで一歩動いたものの、ミスのない演技であった。そして得点は冨田選手を上回り2位に入り、冨田選手は銅メダルを獲得!
 PEGAN選手が棄権し、7名のみの競技となり、そのうち5名にミスが出てしまい残念であった。その中にあって、終末技でミスしたものの、「体操とはこうあるべき」というメッセージを冨田選手は最後まで演技でアピールし、銅メダル獲得へとつながった気がする。何よりも場内の誰もが惜しみない拍手を送り続けるシーンがそれを証明しており、非常に感動的だった。