第63回全日本体操競技団体・種目別選手権大会 団体決勝を観戦して

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 11月21日、男子12チーム、女子8チームにより、6-3-3制の男女団体決勝が行われ、男子はKONAMIが初優勝、女子は朝日生命体操クラブが4年連続24度目の優勝を飾った。
 6-3-3制の団体総合の戦いを、一般に分かりやすく説明するとすれば、駅伝をイメージすることをお勧めする。それぞれの区間で、特徴に合わせて選手を起用し、すべての選手の合計タイムが最終的に順位を決める。当然、思わぬ力を発揮できる選手ももいれば、大ブレーキとなる選手もいる。今年から落下や尻もちのような誰でも明らかな失敗が1点の減点となったため、いわゆるそれは大ブレーキを意味する。男女ともに初の6-3-3制の導入は、その大ブレーキをトップチームさえも犯し、波乱の様相を呈したが、国内の多くの選手とコーチが身を持ってこの制度の怖さを体験できたことで、成功だったと感じる。
 女子においては、朝日生命体操クラブの圧勝かと思われた最終種目の段違い平行棒で、最初の演技者である野田咲くらが2度の落下。その時点で2位に5点以上の差をつけていたチームの空気は一転する。しかし、予定の演技順を変更した世界選手権銀メダリストの鶴見虹子がしっかりと演技をまとめ、今日初めての演技となる美濃部さゆりを落ち着かせ、2位戸田市スポーツセンターに対して0.950差での優勝となった。
 男子においては、KONAMIのゆか、徳洲会体操クラブの跳馬にミスが出て波乱の幕開け。極めつけは、鉄棒1番手に起用した内村航平が、世界選手権から変更した演技構成の中、後半のコールマンで落下。Dスコアのマイナスを最小限に食い止めようと実施したやり直しのコールマンで再び落下。ここで2点のマイナスを背負うことになった。最後の演技者、寺尾尚之も落下し、日本体育大学はチームとしてスタートで大きく出遅れることになった。
 鉄棒の最悪のスタート後、6-3-3制の団体総合の戦いにおいて、ゆかでは前半に演技するグループとなり、切り替えの時間なく演技を余儀なくされた日本体育大学。最初の佐藤巧が見事な演技を披露するが、続く山室が直接両足をフロア外に着地するライン減点-0.5。内村は鉄棒の失敗を払しょくする会心の演技。何とかタスキをつなぎとめた。
 ゆかを失敗したKONAMIはあん馬、徳洲会体操クラブは平行棒でそれぞれ第2ローテ後半グループのチームとしていい演技を披露。最初の種目のミスをじっくり見直すには十分な時間となったようだ。
 日本体育大学があん馬、つり輪で得点を伸ばしてようやく落ち着きを取り戻し、さらに跳馬で盛り返し、首位のKONAMI鉄棒、2位の日本体育大学平行棒を残し1.400差まで詰め寄っていた。前半グループの日本体育大学1番手山本雅賢は本日最初で最後の演技を迎え、途中、バーの上に乗るミス。その後、最後の演技者内村は着地を止め、最後の力をすべて使い切ってゴールした。それに対して5ローテ目の平行棒で小林研也が大過失を出していたKONAMIは、最終種目では後半のグループ。前の種目のミスを最終種目に引きずることなく、鉄棒の3選手(上田和也、関口栄一、植松鉱治)は自信を持って演技した。
 
 団体6-3-3制では、最初のスタートが前半グループになるのか後半グループになるのかで、まったく種目の波(リズム)が異なる。これによって起用する選手が異なったり、ペース配分を変えなければならないかもしれない。今回のこの方式の導入は、戦略面でも日本チームの将来に大きな知見を与えるような気がする。
 最後に一言加えて話せば、今回の全日本選手権はどこでだれがやっているのか分からないという点を各種目の掲示板が演技者名を表示してくれていて何よりもとても見やすい。途中経過の順位速報も見ているものをハラハラさせ、これまでにない団体総合の魅力を表現できた大会となった。
 最終日は男女とも交互にすべての演技が見られる種目別決勝。ここ数年、全日本では実施していなかったが、ようやく体操競技をエンターテーメントとして見られる日が来た。団体総合に出場した選手に対しては、若干、体力的な面で心配はあるが、年内最後の国内トップ大会をすべての選手が最高の演技で締めくくってくれることを皆さんの応援で後押ししてほしい。