2010国際ジュニアチームカップ報告

報告者:

<派遣期間> 
 平成22年3月3日(水)から3月8日(月)
 ※競技3月6日
<会場・宿泊>
会場  ドイツ・ベルリン SPORTFORUM BERLIN
宿泊  ホリデーイン ベルリン
<選手団>
コーチ
 松本忠親、小倉雅昭、田野辺満
選手
 村上雄人、岡準平、井口大輔、千葉健太
<競技方法・参加資格>
・団体総合選手権(4-4-3制、年代別3グループのミックスチームで構成)
・個人総合選手権(グループ別表彰)
 グループⅠ(1992-1993生、FIGユースルール)
 グループⅡ(1994-1995生、FIGユースルール)
グループⅢ(1996生以下、 FIGユースルール、終末技加点(A0.1 B0.3 C0.5))
<参加国>
 16カ国、26チーム、109名が参加(グループⅠ54名、グループⅡ38名、グループⅢ17名)
 (ESP/SUP/FRA/BEL/GER/BRA/CAN/JPN/NED/CRO/SVK/POL/AUT/JOR/ITA/MON)
<会場・器具>
練習会場
 ベルリンの総合スポーツトレーニング施設内の体操体育館を使用。器具が豊富で、練習環境が大変すばらしく、十分な練習を行う事ができた。
大会会場
 同施設内の競技場で実施。昨年までは、ドイツ製の器具であったが、今年はスピース製の器具で行われた。ゆかフロアーが非常に硬く苦戦したが、他種目では十分に器具の対応ができた。競技場は、国際大会特有の雰囲気があり、大会を盛り上げようという運営側の工夫・配慮が多く見られた。
<報告>
1日目 練習
 初日の練習であり、移動・時差による疲労、環境・器具への対応などが心配された。しかし、4選手とも国際経験があったため、器具にも素早く対応するなど、落ち着いた雰囲気であった。続行練習を中心に5時間程度の練習を行った。
 
2日目 練習
 午前中は、練習会場でトレーニング、基礎練習、部分練習を中心に2時間程度を実施。午後は、本会場練習を行った。村上が腹痛のため調子を落としていたが、他の選手は大変調子が良かった。
3日目 競技
 本会場の練習時間が1時間と少なかったため、午前中に練習会場で2時間程度の練習を行った。本会場練習では、人数的に混み合うことを予測し、日本チームは平行棒から練習をスタートさせた。アップでは、予想通り順番を守るという事が少なく、器具の取り合いが生じた。もう少し、マナーよく練習してほしいと感じた。チームは、村上の体調も良くなり、準備万全の状態で大会に挑む事ができた。
以下、試合の流れ、演技の出来、主な構成を簡単に記載する。
■1ローテ(つり輪)
「千葉」屈身ヤマワキでスイングが大きく揺れたため、終末技の前で停滞してしまった。(12.05/4.6/7.45 後振開脚上水平、前方車輪、後方車輪、屈身ヤマワキ、伸身ダブル)   
「井口」振動倒立も良く,着地が決まり、すばらしい出来であった。(13.75/4.8/8.95 後振開脚上水平、屈身ヤマワキ、ヤマワキ、前方車輪、後方車輪、ムーンサルト)
「岡」初めて挑戦した終末技のルドルフを成功させ,納得した内容であった。(14.0/5.0/9.0 ヤマワキ、屈身ヤマワキ、後振十字、ホンマ十字、後方車輪、ルドルフ)
「村上」十字懸垂,中水平を力強くさばき、自分の力を出し切った。(14.4/5.1/9.3 け上がり十字、引き上げ中水平、後方車輪、屈身ヤマワキ、ムーンサルト1/2)
 日本チームは、スタート種目のつり輪を無難にまとめ、良いスタートができた。
2ローテ(跳馬)
「千葉」伸身ツカハラ(13.65/4.6/9.05後ろに小さく1歩)
「井口」伸身カサマツ(14.55/5.4/9.25横に小さく1歩、ライン減点-0.1)
「岡」アカピアン(15.35/6.2/9.15前に1歩)
「村上」伸身ユルチェンコ1/1 (14.45/5.4/9.05前に1歩)
 跳躍板が硬く、村上は難度を下げた技を選択。全員ミスなく演技することができた。
3ローテ(平行棒)
「千葉」前半は大変良かったが、着地で両手をついてしまった。(12.7/4.6/8.1 棒下倒立、車輪、チッペルト、ツイスト、ダブル)
「井口」棒下倒立から車輪ディアミの流れも良く、着地もまとめ、良い演技だった。(13.8/4.8/9.0 棒下倒立、車輪デイアミ、車輪、ツイスト、ディアミ、ダブル)
「岡」前半の流れは大変良かったが、終末技で転倒してしまった。(13.0/5.0/8.0 棒下倒立、車輪、チッペルト、ツイスト、ディアミ、屈身ダブル)
「村上」グループⅢの技を正確に実施。着地もまとめ良い演技であった。(13.85/4.9/8.95 車輪、モイ、チッペルト、ヒーリー、ツイスト、屈身ダブル)
 演技内容が良かった千葉、岡の着地失敗が悔やまれた。バーのセット時間も早く、棒下系、車輪系の技で手がすべるような心配がなかった。
4ローテ(鉄棒)
「千葉」きれいで正確な演技を行い,着地が後ろに大きく動いたが,E得点9.35の評価を受けた。(12.75/3.4/9.35 シート、アドラー倒立、大逆手車輪、エンドー、伸身ダブル)
「井口」ひねり技の流れが良く、着地も決め、すばらしい演技であった。(13.9/4.8/9.0 アドラー1/2、トカチエフ、シート大逆手、エンドー1/1アドラー倒立、大逆手、伸身サルト)
「岡」コバチが遠く落下、終末技で転倒。平行棒の失敗を立て直す事ができなかった。(11.95/4.9/7.05 ヤマワキ、アドラー1/2、コバチ、ホップ、ホップ1/2、エンドー1/1大逆手、伸身ルドルフ)
「村上」初めて挑んだコバチを確実に決め、チームの役割を果たした。(14.1/5.0/9.1 コバチ、ホップ、ホップひねり、エンドー1/1大逆手、大逆手エンドー、伸身サルト)
 高得点が期待された岡の失敗を村上がカバーし、ベスト3をキープすることができた。
5ローテ(ゆか)
「千葉」きれいな演技で、ひねりのスピード、演技の流れが良かった。1番手の役割を果たした。(13.05/4.4/8.65 後方5/2、後方3/2~伸身前宙、脚上挙、伸腕倒立、側宙、後方2/1)
「井口」大きな失敗もなく、無難な演技を行った。(13.2/4.7/8.5 前方1/1~前方1/2、前方2/1、後方ダブル、後方5/2)
「岡」演技構成を下げずに挑戦した。着地を意識した良い演技で、チームの雰囲気を盛り上げた。(14.2/5.2/9.0ダイビングダブル1/2、後方5/2~前方1/2、後方3/2~前方1/1、プロペラ、後方3/1)
「村上」多少難度を下げて安全な演技構成を行った。着地も無難にまとめ、落ち着いた内容であった。(13.55/4.8/8.75 後方ダブル、後方3/2~前方1/1、伸身ダイビング~前宙1/2、後方5/2)
 ライバルチーム(スペイン,スイス,ドイツ)の得点が伸びていない種目であった。日本チームは、岡の高得点もあり、無難に乗り切る事ができた。良い雰囲気で最終種目のあん馬に向かった。
6ローテ(あん馬)
「千葉」旋回の大きさ・スピードが非常に良かったが、前移動で落下した。(12.05/3.8/8.25 1/2後ろ移動、前移動、Bシュテ、フクガ、逆交差、正交差、逆リア倒立下り)
「井口」5種目完璧な演技でチームを引っ張ってきたが、交差技に入る前の旋回で落下した。(12.3/4.4/7.9 マジャール、シバド、Bシュテクリ、フクガ、逆交差、正交差、逆リア倒立移動下り)
「岡」失敗できない状況での演技であった。得意な種目でもあり、ゆかに続き完璧な演技を実施した。(13.85/5.0/8.85 正交差とび、Dコンバイン、Dフロップ、マジャール、シバド、逆リア倒立移動下り)
「村上」練習から不安定な種目であり、マジャール移動で落下。井口同様、最終種目で初失敗となった。(12.35/4.7/7.65 Bシュテ、1/2後ろ移動、マジャール、シバド、セア1/2、Aシュテ倒立移動下り)
 千葉は、3日間の練習では非常に安定した種目であっただけに残念であった。最終種目で3人落下という不本意な結果となり、団体優勝の行方もわからなくなった。
成績
  団体総合優勝 (5年連続優勝) 2位スペイン、3位スイス
  個人総合 グループⅠ 優勝 千葉
         グループⅡ 優勝 井口
        (表彰式後に訂正、2位から優勝に繰り上がり)
         グループⅢ 4位  村上  5位 岡
        (表彰式後に訂正、順位が1つ繰り下がり)
外国選手の動向
・ゆかは,ユースルール(8技)のため,後ろとびひねり前方2回宙返り(グループⅣ)を実施する選手が多かった。ゴゴラーゼやシュピンデル倒立の良い実施も数名見られた。
・あん馬は,ポメル系や馬背下向き系が得意な選手が多かったが,旋回の質的には良くない選手が多い。
・フランス選手の1名は,つり輪の力技がすばらしく,手首を完全に落とした中水平~引き上げ上水平を,
3セット程度練習で実施していた。ヤマワキ系の技を実施する上位選手が多かった。
・平行棒は,宙返りからの腕支持技が禁止のため,地味な演技構成が多く、得点も伸びていなかった。
・鉄棒は,上手な選手が少なかった。8技のため,演技構成が短く感じた。
<総評>
 日本チームとして5年連続の団体優勝、2種別での個人総合優勝という、大変良い結果で大会を終えることができた。また,本大会を通じ、優勝の喜び、失敗の反省、今後の課題発見,外国選手団との交流等、多くの経験をさせていただいた。これらの経験を生かし,さらに成長していく事が大切であると考えている。
 最後に、本遠征の参加に際し、日本体操協会をはじめ、ご理解、ご協力を頂いた多くの関係者に感謝を申し上げ、本大会の報告とする。