ロッテルダム世界選手権・女子ポディウム練習1日目レポート&フォト

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 1987年に世界選手権が開催されたオランダ・ロッテルダム市にある「アホイ」。1987年大会において、日本男子は団体5位、更に個人でも初のメダル無しに終わったということで、悔しさの残る大会であり、一方、日本女子は若手の台頭により団体において9年ぶりに一桁の9位に入り、躍進した大会であった(それ以降、この記録を上回るのは2008年北京五輪の5位)。その地で今日、女子ポディウム練習初日を迎えた。
 今日のポディウム練習では、第1班に中国が登場し、いきなりHE Kexia選手が五輪、世界選手権と連勝を続ける段違い平行棒で素晴らしい構成を披露した。チーム全体的には、平均台、ゆかで体操系の正確な捌きが目を引き、更にはゆかの振り付けも印象深いものがあった。HE選手も普段はなかなか目にしないゆかであるが、ジャパンカップ時から曲を変えてボレロに乗った妖艶な振り付けでいい演技を見せた。
 続く第2班に日本が登場。今回、プレスルームやメディアバスの中で、日本女子が話題にあがるほどチームに対する注目度は高い(下の最後の写真はFIGフォトとフジテレビの依頼を受けて記念撮影している光景)。やはり、北京五輪の活躍、昨年の世界選手権の鶴見選手の活躍によるところが大きいが、非常に誇らしく思える。
 練習では、後に塚原千恵子監督から「ゆかが硬かった」ことや、鶴見選手からも「バーが新品でさらさらしてすべりやすかった」など、器具に対する戸惑いもあったようだが、各選手、ポイントを絞って調整していた。特に印象的だったのは小沢選手の跳馬。ユルチェンコとび2回ひねりをなかなか跳べずにいたが、移動した他の選手から励ましの声を受け、最後の一本は着地を止めるまでに仕上げていた。
 日本はチームキャプテンを特に決めず「日替わり」で当番制にしているが、大島、田中という二人のベテラン選手が精神面でリードし、鶴見選手が実力という点でチームを引っ張り、選手全員がうまく支えあっているチームという印象だ。
 団体総合で優勝争いに加わる可能性のあるルーマニアが続く第3班に登場。脚力の強さが目立つチームではあるが、姿勢欠点も目立っている印象であった。しかし、北京五輪金メダリストのイズバサ選手を筆頭に、若手も経験を積み、大過失を見せない。特に平均台ではシリーズのつなぎがスムーズで、組合せ点を正確に獲得できる状況まで習熟度を高めていた。イズバサ選手のゆかでは、今日唯一の手拍子が起こった。このことに代表されるように、今大会のルーマニアはゆかの曲がいつも以上に観衆が乗りやすいものを使っている。
 個人総合メダル争いでライバル視されるミッチェル選手のいるオーストラリアが第5班に登場したが、団体としては若干技が不足している印象があった。ミッチェル選手に絞れば、得意の平均台で独特のシリーズを安定して実施するなど、充実した仕上がりを見せていた。
 第6班、今日最後の見所はロシア。更にイギリス、フランスも登場。ロシアは、今大会シニアデビューとなるナビエワ、ムスタフィナ両選手が跳馬でアマナールを見事に決めており、また、他もユルチェンコ2回ひねりが2人。跳馬ではおそらく他を寄せ付けない状況といえる。段違い平行棒ではナビエワ選手がフットからの伸身トカチェフを最後の最後に決め、かなり面白い構成になっていた。しかし、ゆかの通しでは着地ミスが相次ぎ、セメノワ、ムスタフィナ両選手は涙を流しながら演技していた。
 イギリス、フランスは脚力の強いところを見せた。イギリスの跳馬はクエルボ1回ひねりやツカハラ1回ひねりを見せていた。フランスはゆかのタンブリングでもっとも豪快に演技していた選手が跳馬で足を負傷。本番に向けて不安を抱える状況となった。また、過去2回世界タイトルを獲得しているイギリスのトゥエドル選手は、段違い平行棒で今年から新たにした構成を見事にまとめていた。中国のHE選手との優勝争いが楽しみである。イギリス、フランス、そして第1班のイタリア、第3班のブラジルは日本と決勝ラインを争うと見られるが、今日の状態ではややイギリスが乗っている印象だ。ありきたりの言い方ではあるが「ミスをしたら負け」。実力以上に精神面での争いになるのは間違いない。