2012リューキンカップ報告

報告者:

【派遣期間】 2012年12月5~11日 
【場所】アメリカ テキサス州・ダラス WOGAジムナスティックアカデミー
【競技会場】WOGA‐Frisco GYM 
【選手団】
監督 田野辺満(鯖江高/強化部員) 
コーチ 森川勝俊(埼玉栄高/強化部員)、吉野僚祐(市立船橋高)
選手 宮地秀享(鯖江高)、鈴木大介(市立船橋高) 早坂尚人(市立船橋高)、神津源一郎(埼玉栄高)
【大会概要】  
 ジュニアナショナル強化選手より7年連続派遣となった今大会は、格レベル・年代別で競技クラスが分けられ、3日間の競技日程で開催されている。今年のエリートクラス(シニアの部)はアメリカ、日本、ウクライナ、プエルトリコ、メキシコからの5カ国32名が出場した。エリートクラスには、各国のナショナル選手やジュニアナショナル選手が参加しているため、毎年レベルの高い大会となっている。その中には、ウクライナのOleg  Verniaev(2012年ロンドンオリンピック団体4位メンバー)やPetro Pakuhnyuk(2012年チェコ国際種目別あん馬7位)が出場していた。今年は、ワールドカップ個人総合大会、アメリカのナショナル合宿と日程が重なっていたため、例年よりは有力選手の参加が少なかった。日本チームは、国際大会を4度経験している神津、国際大会初出場の宮地、鈴木、早坂の高校上位選手でチームを構成し、3年連続団体総合優勝を目標とした。また、宮地は、1ヶ月前に足首を捻挫してしまったため、現地での最終調整を実施しながらの参加となった。競技は、団体総合(4-4-2制)、個人総合、種目別を1日で競い合う方式であり、ルールは来年度から適用される新ルールが採点された。
【大会レポート】
12月8日(土) 競技
 今年の大会は、跳馬の種目別点数計算、鉄棒の組み合わせ加点などが変更された、新ルールが適用されての採点になった。ウォーミングアップは、昨年と同じく1時間のフリー練習で行われた。1時間のフリー練習ではあったが、指定された時間前に行われていた表彰式(Level10)の最中に器具を使った簡単なアップを実施することができた。15分間のオープニングセレモニーでは、参加選手の紹介や歌手によるアメリカの国歌斉唱が行われ会場を盛り上げる他、会場にいる全ての人たちで盛り上げて試合を楽しもうとする雰囲気がみられた。日本チームはあん馬からのスタートであった。試技順は、各チームで決める指示があったので、各種目によって演技順を変更しながら競技を進めていった。
■第1ローテーション<あん馬>
(宮地)Eフロップ、マジャール、シバド、終末技C 14.10 Dスコア5.3
(早坂)Eフロップ、とび前移動、シバド、終末技D 14.75 Dスコア5.3
(神津)逆交差ひねり倒立、Eフロップ、Dコンバイン、前移動、シバド、終末技C 14.80 Dスコア5.2
(鈴木)Eフロップ、Dコンバイン、とび前移動、シバド、終末技C 14.45 Dスコア5.3
チーム得点・・・29.55
 第一演技者の宮地が、終末技で完全に停止する場面もみられたが(技は認められる)落下なく演技を終え、チームに良い流れをつくった。その後も神津、鈴木が終末技でC難度になってしまったが、内容は非常に良い演技であった。採点が若干甘い部分もあったが、日本の粘り強さ、正確な旋回や技の実施が高く評価され全員が14点台を獲得し、良いスタートをきることができた。また種目別では、ほぼすりなく最後まで正確な演技を実施した神津が優勝、早坂が2位と見事な結果であった。
■第2ローテーション<つり輪>
(宮地)ホンマ十字、振十字、ヤマワキ-ジョナサン、屈前方ダブル 14.60 Dスコア5.5
(早坂)振脚上挙十字、ジョナサン‐ヤマワキ‐ホンマ十字、後車輪‐サルトハーフ 14.35 Dスコア5.4
(神津)振中水平、け上がり中水平、ジョナサン-ヤマワキ‐ホンマ十字、振開脚上水平、後車輪‐伸サルト 14.60 Dスコア6.0
(鈴木)振十字、ジョナサン‐ヤマワキ‐ホンマ十字、後車輪‐サルトハーフ 14.95 Dスコア5.4
チーム得点・・・29.55
 1番手の宮地が大きな過失なく着地を前に1歩で抑える素晴らしい演技を実施した。続く早坂、神津も大きな減点もなく、無難にまとめる演技を実施した。最終演技者の鈴木は、十字懸垂の手首を入れずに実施し、着地を止めたことが評価され、Eスコア9.55の高得点を獲得し、種目別3位に入賞した。
■第3ローテーション<跳馬>
(宮地)ユールチェンコ2回ひねり(1技目) 13.60  Dスコア5.2
  伸身カサマツハーフ(2技目)  13.85  Dスコア4.8 種目別決定点…12.55
(神津)アカピアン 14.30 Dスコア5.2
(早坂)アカピアン 14.45 Dスコア5.2
(鈴木)アカピアン(1技目) 14.65 Dスコア5.2
 伸身クエルボ1回ひねり(2技目) 14.25  Dスコア5.2 種目別決定点…13.70
チーム得点・・・29.10
 1番手の宮地がユールチェンコで着地が大きく横に2歩出てしまい、ラインを両足出てしまう失敗をしてしまうが、2技目のカサマツハーフでは、着地を前に1歩と素晴らしい演技を実施した。続く神津、早坂は共に着地を後ろに1歩と素晴らしい演技を実施した。鈴木は雄大なアカピアンで着地を小さく後ろに1歩と完璧な実施で高得点を獲得。2技目のクエルボ1回ひねりでは、後ろに1歩と無難にまとめて、前半種目を大きなミスなく終えることができた。種目別では、2本の跳躍をした宮地が4位、鈴木が2位に0.1点の差で勝利し、見事優勝することができた。また、種目別決定点が速報の点数と違いがあるが、新ルールの採点方法であれば上記の得点になるため、今回の報告では上記のように記入した。
■第4ローテーション<平行棒>
(宮地)棒下、ディアミドフ、車輪、チッペルト、ツイスト、ライヘルト、Dツイスト、屈身ダブル 12.80 Dスコア5.8
(早坂)棒下、ホンマ、ツイスト、ディアミドフ、車輪、モイ、チッペルト、屈身ダブル 14.95 Dスコア5.7
(神津)ホンマ、棒下ひねり、棒下、開脚前宙腕支持、移行(落下)、チッペルト、モイ、ツイスト、屈身ダブル 13.90 Dスコア5.9
(鈴木)チッペルト、棒下ひねり、棒下、車輪、ツイスト、ホンマ、屈身ダブル 14.65 Dスコア5.7
チーム得点・・・29.60
 1番手の宮地が途中のDツイストで、倒立支持になる時に大きく横に倒れてしまい落下はなんとかこらえたものの、着地で大きく前に1歩と大過失を重ねてしまう。続く早坂は最後まで正確な演技を実施して高得点を獲得。神津は堅実な演技構成を選びベーレを外しての演技を実施したが、まさかの移行で落下。その後は、落ち着いて着地まで止める正確な演技をして、得点を大きく下げずに演技を終えた。2人が失敗しているプレッシャーのなか、最終演技者の鈴木は、着地で転倒しかけるものの、大きく後ろに2歩となんとかこらえて、チーム得点を大きく下げずになんとか平行棒を終えることができた。種目別では、14.95の高得点を獲得した早坂が3位に入賞することができた。
■第5ローテーション<鉄棒>
(神津)ヤマワキ、エ1/1片逆手、アドラー1/2、シュ1/2大逆手、1/1大逆手、アドラー、大逆手エ、伸身サルト 14.15 Dスコア5.4
(早坂)アドラー1/1‐ヤマワキ、エ1/1大逆手、アドラー1/2、シュ1/2大逆手、1/1大逆手、大逆手エ、伸身ルドルフ  15.20 Dスコア5.9
(宮地)ヤマワキ(B難度判定)コールマン、コバチ、ホップ、シュ1/2大逆手、大逆手エ、伸身サルト 14.65 Dスコア5.7
(鈴木)アドラー1/2‐モズニク、伸トカチェフ、伸モズニク、アドラー、大逆手エ、ホップ、伸身サルト 15.20 Dスコア6.0
チーム得点・・・30.40
 不安種目である鉄棒だが、第一演技者の神津が大きな減点なく無難にまとめ演技を実施した。続く早坂が雄大な演技で着地も止める完璧な演技を実施し、高得点を獲得した。宮地は始めのヤマワキでB難度判定になるものの、残るコールマンやコバチといった高難度の技を確実に決めて素晴らしい演技を実施した。最終演技者の鈴木は、ホップターンで大きく外れてしまう場面もみえたが、D難度以上の離れ技を3つ取り入れたことが評価され、15.20の高得点を獲得した。種目別では、早坂、鈴木が15.20の同得点であったが、Eスコアの高い早坂が優勝した。また、この種目では、優勝に早坂、2位に鈴木、3位に宮地と日本人3人が表彰台を独占する素晴らしい結果であった。
■最終ローテーション<ゆか>
(宮地)前2/1-0.5、後3/2-前1/1、ダイブ、後2/1、前3/2、後5/2 14.15 Dスコア5.4
(神津)前2/1-前2/1、ダイブダブル1/2、後2/1、フェドル、十字倒立、後3/2‐前1/1、後5/2 14.80 Dスコア5.6
(早坂)後7/2‐前1/2、前5/2、フェドル、ダイブダブル1/2、後3/2-前2/1、後5/2-前1/1、後3/1 15.95 Dスコア6.5
(鈴木)ダイブダブル、前2/1-前0.5、前3/2、フェドル、後2/1、後ろ3/2-前1/1、後3/1  13.80 Dスコア5.7
チーム得点・・・29.55
 宮地、神津それぞれが最後まで大きな過失なく演技を実施し演技を終了することができた。続く早坂は、高難度の技を多く取り入れながら、着地も確実にまとめていく素晴らしい演技を実施して15.95の高得点を獲得した。鈴木は、ダイビングダブルの着地で手をついてしまう痛恨のミスをしてしまうが、その後は着地を確実にまとめていき、大きく点数を下げずに演技を終了することができた。種目別では、早坂が2位に0.65点の差をつける圧巻の点数で見事に優勝することができた。
【総評】
 今大会の結果としては目標以上の成績を収めることができた。平行棒でのミスが悔やまれたが、他種目では素晴らしい演技を実施し、2位のウクライナ(2名参加)とは6点以上の差をつけて、団体優勝を達成した。個人総合では、早坂がほぼ完璧な演技で優勝することができた。また、鈴木3位、神津5位、宮地8位のほか、種目別ではすべての種目において入賞し、ゆか、あん馬、跳馬、鉄棒の4種目で優勝することができた。海外の選手に関しては、個人総合2位のウクライナのOleg選手は別格の実力を持っていた。跳馬のローチェ、平行棒のスイング系、ゆかの基本技(前方転回~宙返り系の技術、ロンダート~後転とびの技術)等が非常に正確であり、日本のジュニア選手の参考となる動きであった。アメリカ、プエルトリコの選手は身体も大きくパワーのある選手が多かった。鉄棒や跳馬でダイナミックな演技を実施していたが、全体的に演技が仕上がっていないためミスが多かった。好成績が収められた要因としては、チームワークが非常に良かったことが1番だと考えている。11月末の高校生ジュニアナショナル強化合宿で事前合宿(試技会含む)が行えたこと、現地で3日間の調整練習が行えたことにより、選手間・コーチ間のコミュニケーションを図ることができた。また、海外初経験の3名に関しては、器具の調整(初日は平行棒の車輪系ですべってばかりであった)、時差対策等が十分に対応できたことも重要であった。初の海外試合を良い結果で終えたことは、選手にとって今後の自信となることは間違いないであろう。大会の雰囲気としては、会場全体が独特な盛り上がりのなかで、選手全員が国際大会の雰囲気を楽しみながら競技に望むことができた。観客、審判、他国選手・コーチからの日本選手への注目度が高く、良い演技には大歓声をいただき、さらにモチベーションを上げることができた。また、日本の美しく正確な体操は年齢に関係なく、世界に通じる技であると今大会を通じて改めて感じることができた。しかし、結果的には多くの入賞を収めてはいるが、個々の技の正確性や基本技術(特に倒立の姿勢やきめ方)、技の高さやスピードといった部分では、まだまだ高校生では見劣りする部分が見られたことも事実である。今回の結果に満足することなく、本遠征で得たすばらしい経験を今後の日本のジュニア強化に反映させていきたいと考えている。
 最後に、大会参加にあたりご尽力頂いた日本体操協会の関係者、大会主催者であるWOGAスタッフの皆様をはじめ、多くの関係各位に心より感謝申し上げ、本遠征の報告とする。