第45回世界体操競技選手権現地レポート2

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 現地9月30日、男子6~10班ポディウム練習レポート。
【6班】
 チームとしては、とびぬけた選手はいないものの、フランスとオーストラリアがチームとしてまとまりのある練習に取り組んでいた。ミスも目立ち、上位を狙うには力不足は否めないが、オーストラリア国籍を取得したアテネオリンピックの塚原直也選手は堅実な演技構成でチームを引っ張る存在となっていた。なお、つり輪では入りで新技申請となる「正面水平懸垂~脚上挙十字懸垂」を行う予定。その他、グアテマラのVERA LOPEZ選手のゆか、アルメニアのMERDINYAN選手のあん馬など、種目別に注目すべき演技が見られた。
【7班】
 日本ゆかから登場。初出場の野々村選手がいい演技を見せると2番手に内村選手登場。会場中の視線を集める。その後の選手もそれぞれが着地まで丁寧な演技で日本の持ち味と強さを存分にアピールできた。2種目目あん馬。決して乱れることのない実施は周囲に強いインパクトを与えた。つり輪では振動技の決めに苦労していたが、田中選手が新技申請をした「ホンマ脚上挙十字」をFIG技術委員長の前で披露。跳馬、大きなトラブルなく乗り切る。平行棒、1番目の白井選手から連続で着地を止める。実施面でもシャルロの倒立やホンマからの倒立など、洗練された動きを披露。最終種目鉄棒では、田中、内村両選手が着地を止めて周囲を沸かせる。全体的には順調な仕上がりで、あとは予選、そしてその後に控える決勝へとコマを進めるための最終調整。是非、納得の演技を見せてほしい。その他、ハンガリーのBERKI選手があん馬でいつもの演技を披露。後半、少し旋回でリズムを乱したが、やはりメダル候補に違いない。
【8班】
 この班の注目はロシア。全体的にはエースのBELYAVSKIY選手がチームをリードしてた。他にABLIAZIN選手はゆかでは伸身新月面や、前方2回ひねり~前方2回宙の組み合わせにおいて高難度の技を構成を実施。つり輪でも背面水平経過後の引き上げ中水平の見せ方などは非常にアピール性が高く、この2種目においてはかなりポイントを稼ぐと思われる。あん馬でも1人がウクライナからロシアに変わったKUKSENKOV選手は鉄棒で苦労していたが、BELYAVSKIY選手と共に団体戦ではキーになる選手となるであろう。ロシアもトップ3がミスなく演技すればメダル争いに確実に絡んでくる勢いを感じた。
 
【9班】
 アメリカがあん馬スタート。今回のメンバーにスペシャリストが見受けられず、開始種目で波に乗れるか決まりそうである。ポディウムではミスを最小限で食い止め、流れをつかんだ。つり輪でもスペシャリストはいないが、それぞれの選手が0.1をあげられるように取り組んでいた。跳馬は、DALTON選手がロペスを決め、続けて2本目に挑戦(この時は予定の跳躍ができなかったが、その後、ヨー2を成功させた)。次にWHITTENBURG選手がドラグレスクとリセグワン(転倒)に挑戦し、2選手が種目別用に2本の跳躍を見せた。平行棒ではMIKLAK選手とDALTON選手が大過失を出すが、鉄棒、ゆかと非常にパワフルな印象が残った。そのパワフルさは波に乗れば大きなチーム力にかわりそうだ。
 
【10班】
ドイツ、ルーマニア、イタリアが登場。ドイツは日本で事前合宿を経て現地入りして調整。特にロンドンオリンピック個人総合2位だったNGUYEN選手がけがによりチームを離れ、その分を全員がカバーする意気込みを感じた。ただ、跳馬ではミスも目立ち、予選までの間にエースのHAMBUECHEN選手を中心にどこまで調整できるかがカギとなるだろう。ルーマニアは開始種目の平行棒で「シャルロ~単棒からヒーリー~ヒーリー」を2選手が完成度の高い実施で注目できる。しかし、力を持つ選手が少なく、どこまでミスをなくすかが鍵となるだろう。イタリアは以前のようにメダルを取るようなスペシャリストが不在で、チームの核ができていない。ウクライナからアゼルバイジャンに国籍を変更したSTEPKO選手は、膝にテーピングを巻き、全体的に練習不足のようだった。
男子ポディウム練習がこれで終了。日本、中国、アメリカがリードし、そこにヨーロッパ勢(ロシア、イギリス、ウクライナ、ベラルーシ)とブラジルが絡んできそうだ。そして、上位チームのミスで上がってきそうなチームは数多く、予選までのわずかな期間で選手6名の調子をどこまで持ち上げることができるか、そして、チームとしていい雰囲気に持っていくことができるか、どんな演技をしてくれるのか非常に楽しみになった男子のポディウム練習だった。
明日から2日間、女子のポディウム練習が始まる。