長崎がんばらんば国体2014 少年女子決勝レポート

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1班: 佐賀県・岡山県・広島県・香川県
インターハイの上位常連校である山陽女子高等学校の選手3人を擁する岡山県がまさかの予選16位という波乱からの朝1班での演技。
午前8:10から本会場割り当て練習というかなり朝早い時間で組まれたスケジュールだったが、朝から気合の入った様子であった。その気合通り、予選で4ミスも出てしまった段違い平行棒を全員ほぼノーミスで終える。しかし平均台では落下が3つ出てしまうが、後半のゆか、跳馬で重高愛莉選手(山陽女子高等学校)が持ち前の脚力を見せ、ゆかではムーンサルトや3回ひねり、跳馬では高さ、距離共に非常に大きさのある雄大な演技を行ない、1班終了時点で桁違いの唯一200点台、204.00というチーム得点を叩き出し、入賞へ向けて残りの3班を待つ形となった。
佐賀県チームは跳馬で2人ユルチェンコ伸身1回ひねりを実施するなど、積極的に攻めてきたが、段違い平行棒、平均台で得点が伸ばせず、198.250に留まる。
2班: 新潟県・長崎県・群馬県・宮城県
ここで地元、長崎県チームが登場。
地元開催ということで、かなり力を入れて強化してきた様子。
段違い平行棒をなんとかミスなくこなすが、平均台でまさかの乱調。5人中4人と落下が続いてしまったが、次のゆかではしっかりと気持ちを切り替え、ダンス、振り付け専門のコーチを呼んで強化してきた通り、感情を込めた演技を披露する。中でも、小川舞選手(佐世保市立諫早中学校)はパワフルなタンブリングを見せ、13.800をマーク。チームに笑顔と活気が戻る。
最終種目跳馬では入口ほたる選手(創成館高等学校)がユルチェンコ伸身1回ひねりを力強く決め、チーム得点198.100で地元開催の国体を終える。
この班で他に目を引いたのが元日本代表、跳馬のスペシャリストとして名を馳せた渡辺進弥監督率いる、近年県としての強化を進めてきている新潟県。
吉田優香選手(新潟市上山中学校)や、大矢奈菜選手(新潟県立長岡大手高等学校)を中心に、特にゆかのダンス系や芸術性で高評価を得ていた。中学生が3人という若いチームで臨んでいたので今後の飛躍に期待したい。チーム得点198.200。
3班: 福井県・兵庫県・千葉県・神奈川県・京都府
この班はどの県が最終班にいてもおかしくないような強いチームでの構成。
ここで意地を見せたのが元ユニバーシアード日本代表垣谷真理子監督率いる兵庫県。
先日行なわれたアジア大会団体銅メダルメンバーの本田美波選手(尼崎市立尼崎高等学校)を主軸に、それぞれの選手の個性を生かした構成でチーム得点を重ねる。段違い平行棒はミスなくこなし、平均台も最後までミスなくつなげるが、本田選手がまさかの終末技屈身ダブルで後ろへ転倒。しかし、最近磨きのかかった表現力を生かしてゆかの演技はしっかりこなし、終わってみればチーム得点210.700。最終班の5チームの中に食い込むチャンスを残して試合終了。
千葉県は先日行なわれた世界選手権団体銀メダルメンバーの野々村笙吾選手(順天堂大学)の妹、野々村璃選手(フジスポーツクラブ)が出場。
坂本美優選手(東京学館高等学校)をエースとし、ゆか、跳馬では正確、かつ魅力的な演技で12点台後半から13点台を積み重ねるが、段違い平行棒、平均台でのミスが響き、兵庫県に0.1及ばず210.600で試合を終える。
福井県は福井県立鯖江高等学校所属の選手のみでのチーム編成。
四方奈々依選手、森口紗希選手の雄大なユルチェンコ伸身1回ひねりの実施で跳馬からのスタートを切り、段違い平行棒ではスイングが大きくしっかりと振れた演技を見せる。平均台では四方選手が素晴らしい高さのあるかかえ込み前宙~バク転~片足スワンを見せるなど、期待が持てたがまさかの落下。ゆかでは目線や指先にまでこだわったダンスに雄大なアクロバットを組み合わせて追い上げを見せるが、兵庫、千葉に一歩及ばず208.100で試合を終える。
4班: 愛知県・埼玉県・大阪府・静岡県・東京都
大接戦の最終班。
●第1ローテーション
先日の予選のゆかで足首を負傷してしまったエース土橋ココ選手(名古屋経済大学市邨中学校)を欠いての4人での出場。
4人の点数がカウントされる団体戦では完全に不利な状況での決勝となったが、序盤の跳馬、3番手の稲川右佳選手(東海学園高等学校)がユルチェンコ伸身1回ひねりで空を飛ぶような非常に雄大な実施でEスコアなんと9.3を獲得。すると松村泰葉選手(東海学園高等学校)がユルチェンコ1回半ひねりの1本目で転倒してしまうが、2本目は意地を見せ成功、団体戦のキーとなる跳馬で55.250と圧巻のチーム得点を叩き出す。
先日のアジア大会団体銅メダルメンバー山本優理子選手(県立戸田翔陽高等学校)を擁する埼玉県は段違い平行棒からのスタート。
大きなミスなく、全員が13点台を超える演技で最終演技者の山本選手へつなぎ、山本選手がさらに力強く安定した演技を見せ14.35を獲得、段違い平行棒で55.300と、愛知県には譲らないぞ!というチーム得点。
団体戦ではほとんどの選手が苦手とするであろう、平均台スタートは大阪府。
国際ジュニアにも出場経験のある安井若菜選手(吹田市立山田中学校)に惜しくも落下が出てしまい、他の選手もふらつきが多くなるなど、「1種目め平均台」の難しさを改めて実感させられる出だしとなった。51.600
静岡県は得意のゆかからスタート。
芦川美鈴選手(常葉学園高等学校)が安定した演技を見せると妹の芦川七瀬選手(常葉学園高等学校)が3回ひねりや3回ターンを完璧に決め、13.700の高得点をマーク、すると、まさに「ゴムまりのような」脚力を持ち主、渡邊琴美選手(県立清流館高等学校)が元気いっぱいの演技でチームを勢いに乗せる。みかん色のユニフォームで揃った静岡県の応援席が大いに盛り上がる。53.800
*東京都は休憩
●第2ローテーション
段違い平行棒へ移動した愛知県。
ベスト4をチーム得点にカウントで4人で戦うというプレッシャーの中、見ているこちら側の胸が熱くなるほど選手たちは力強く素晴らしい演技をを見せる。稲川選手はイエガーで少し近付いてしまうが執念で演技を続け、田中亜悠選手(名古屋経済大学市邨中学校)は中学生ながらイエガー、ギンガーと2つの手離し技を組み込んだ構成を成功させると、松村選手がギンガー、イエガー、フワリと宙を舞うようなムーンサルト下りで14.150を叩き出す。湯元ゆりか選手(半田市立青山中学校)も高さのあるイエガー、性格な倒立姿勢でのひねり、ムーンサルト下りでベスト4をしっかりと揃える。54.300
埼玉県は平均台。
宮内玲奈選手(県立戸田翔陽高等学校)が少しふらつきながらも足持ちターン等高難度の構成を見せ、13.500。山本選手は前宙やバク転~スワン、終末技かかえ込みダブル等で持ち味のパワーを見せ、13.450。予選で落下してしまった田中萌選手(聖望学園中学校)もこの日はノーミスで演技をまとめる。網中萌華選手(埼玉栄高等学校)、近藤聖莉選手(県立戸田翔陽高等学校)にミスが出てしまい、チーム得点が伸ばせず49.900
ゆかに移動した大阪府。
中村有美香選手(四天王寺高等学校)や安井選手が力強いアクロバットを見せたかと思うと、大石理湖選手(羽衣学園高等学校)がターン等のダンス系で思わず「うまい!」と言ってしまうような実施を見せ、バラエティに富んだ演技構成を見せる。53.750
東京都は休憩明けで1種目めの跳馬。
ユルチェンコ伸身宙返りが4人、転回かかえ込み前宙が1人と、他のチームに比べると少しDスコアが低くなる構成であったが、ミスなくこなし、チーム得点52.750
*静岡県は休憩
●第3ローテーション
愛知県は鬼門の平均台。
やはり、平均台。稲川選手はパワフルな前宙、ロンダート~伸身宙返りを決め、松村選手はバク転+バク転+スワン、交差リープ+屈身宙返りなど組み合わせで加点を取り多少のふらつきがありながらもミスなく演じきるが、ここで田中選手と湯元選手に落下のミス。1点の減点×2をチーム得点にカウント。50.450
埼玉県は得意のゆか。
近藤選手、宮内選手が独特な伴奏曲、振り付けで審判、観客を魅了し、山本選手がパワフルにムーンサルトの着地を「ドカン!」と決めると、田中選手、網中選手が安心した様子で繊細かつ思い切った演技を見せる。54.400とチーム得点をしっかり稼ぐ。
跳馬に静岡県。
美鈴選手の安定したツカハラかかえ込み1回ひねりでスタートを切ると、澤根さくら選手(浜松開誠館高等学校)がユルチェンコ伸身宙返りを2本しっかりと揃え、七瀬選手が1本目ユルチェンコ伸身宙返り、2本目に1回ひねりに挑戦し、成功。続く小笠原希選手(浜松開誠館高等学校)がユルチェンコ伸身1回ひねりでEスコアを9.0に吊り上げると、渡邊選手も同じ跳躍でEスコア8.95をマーク。水鳥政弘監督の采配が光る。54.800
東京都は段違い平行棒。
全日本選手権への出場経験がある水永菜月選手(大智学園高等学校)や石曽根理央選手(大智学園高等学校)を中心に全員が手離し技+終末技に前宙ダブルや伸身ダブル等の大技を持っており、4人目までなんとかミス無く実施。最後の演技者に落下が出てしまうが、13点台中盤から後半でチーム得点を揃える。54.600
*大阪府は休憩
●第4ローテーション
愛知県は最後の種目となるゆかへ。
田中選手が小柄ながら元気いっぱいの演技でトップバッターを勤めると、脚力が持ち味の稲川選手。期待が膨らむがラインオーバーがあるなど終始着地が定まらず。しかし大過失にはつながらず13.850を確保。続いて松村選手が躍動感のある演技でムーンサルト、2回半ひねり+伸身前宙、3回ひねり等を決め、Eスコア8.95と高評価、14.050を叩き出す。こうなったらもう無敵の愛知県。湯元ゆりか選手がまるでコンテンポラリーダンスのショーを見ているかのような力強く独特な表現で他を圧倒し、Eスコア9.20、14.600という高得点で逃げ切り体勢に入る。チーム得点56.350!
なんとか3位以内には留まりたい大阪府は跳馬。
山崎千穂選手(大阪体育大学浪商高等学校)の転回かかえ込み前宙でスタート。
金田明星選手(四天王寺高等学校)、大石選手がユルチェンコ伸身宙返りで着実に得点を重ね、中村選手、安井選手がユルチェンコ伸身1回ひねりをしっかりときめ13点台後半を積み上げる。53.850
静岡県は段違い平行棒へ。
出だしの澤根選手が振り上げ倒立で前に反ってしまったがなんとかこらえる。が、屈身ダブル下りでまさかの転倒。しかし、チーム全員から笑顔が消えることはなく、美鈴選手へバトンタッチ。イエガー、1/2ひねり低棒移動などを決めると、続いて渡邊選手、小笠原選手とミスなくつなげ、最後は七瀬選手がイエガー、車輪1回ひねり、ムーンサルトなどを正確に決め、ベスト4を確保。本当にチームワークが良い印象。53.150
平均台は東京都。
石曽根選手がトップバッターで、猪爪選手がバク転~屈身宙返り、前宙のほかに交差1/2ひねり、ジョンソン等の難しいダンス系要素を決める。その後、最後の沼田冴選手(藤村女子高等学校)までつなぎ、沼田選手もミスなく演技をまとめる。50.400
*埼玉県は休憩。
●最終ローテーション
全ての種目をやり終えた愛知県チームが休憩となり、行く末を見守る中、埼玉県は跳馬へ。
近藤選手ユルチェンコ伸身宙返り、宮内選手ユルチェンコ1回ひねりを2本ずつしっかり揃えると、山本選手が1本目の特大ユルチェンコ1回ひねりを豪快に「着ピタ」で決め、Eスコア9.20をマーク。14.200を叩き出す。続く田中選手はユルチェンコ屈身宙返り、網中選手はツカハラ屈身宙返りの着地をしっかりときめ、チーム得点54.350で最終種目を終える。
大阪府は最後に得意の段違い平行棒へ。
山崎選手がギンガー、屈身ダブル下りを決め、先陣をきると、大石選手がイエガー伸身宙返り1回ひねり下りで次につなげ、安井選手はギンガー、1/2ひねり低棒移動、ムーンサルト下りで13.500。すると金田選手もイエガー、1/2ひねり低棒移動~足裏支持回転倒立、ムーンサルト下りを決めて13.550、最後に中村選手がイエガー、1/2ひねり低棒移動、足裏支持回転倒立、シュタルダー倒立、翻転倒立、車輪1回ひねりを正確に決め、終末技は大きなスイングを利用したバーのはるか上で回転をかける、正しく「ムーンサルト」下りで最後を締めくくる。13.950はすばらしい評価。チーム得点54.050
静岡県は今大会鬼門となっている平均台が最後。
やはり・・・ 小笠原選手、七瀬選手に1つずつ落下が出てしまうが、渡邊選手がロンダート~片足伸身宙返りの開始技、美鈴選手は羊とび、バク転+バク転+スワン、かかえ込み側宙、片足伸身前宙等、積極的に攻めた構成で臨み、澤根選手のノーミスの演技でしめくくる。51.600 チーム得点が出た瞬間、3位という表示が出たので喜ぶが、大阪の段違い平行棒の方が後で終わったので大阪府の得点をすぐ隣で見守る形になる。50.800
東京都の最後はゆか
猪爪選手→石曽根選手→水永選手→沼田選手の順でほぼ大きなミスなく最終演技者の白石陽子選手(十文字高等学校)に襷をつなげる。かかえ込みダブルや1回半ひねり+前方1回ひねり、2回半ひねり等を男子選手のような技術、捌き方でこなし、最後まで笑顔で演じきる。52.250
結果、4人で最後まで戦った愛知県が2位埼玉県に2.4の差をつけて優勝。
段違い平行棒で得点を稼いだ埼玉県が2位。
最後の最後まで隣同士で得点の表示待ちをした大阪府と静岡県は0.7の差で大阪府に軍配。
3班で演技を終えて祈るように待っていた兵庫県、千葉県が5位、6位に滑り込み、7位に東京都、8位に福井県、1班で演技を終えていた岡山県がなんと9位へ大躍進という最後の最後まで読めない、見ごたえのある試合となった。
少年女子決勝順位(入賞者のみ)
1. 愛知県  216.350
2. 埼玉県  213.950
3. 大阪府  213.250
4. 静岡県  212.550
5. 兵庫県  210.700
6. 千葉県  210.600
7. 東京都  210.000
8. 福井県  208.100 
*愛知県女子は成年、少年共に優勝。