体操ワールドカップ東京大会2018女子レポート

報告者:日本体操協会

跳馬

村上茉愛(JPN) ユルチェンコ2回ひねり
安心して見ていられる実施。着地後ろに小さくホップ。Eスコア9.166!

WOO Victoria(CAN) ユルチェンコ1回ひねり
高さのある跳躍。後半少し腰が折れ気味に下りてくる。後ろへ両足でホップ。Eスコア8.833

杉原愛子(JPN) ユルチェンコ1回半ひねり
足首への不安を全く思わせない力強い跳躍。高さも伸身姿勢も十分。ほんの少しだけ回転不足で後ろへ1歩。E9.0

SIMAKOVA Angelina(RUS) 転回屈身前宙1回ひねり
屈身姿勢から身体を開きながらひねる技術だが、非常に空中での姿勢が美しく実施される。チュソビチナ(転回伸身前宙1回ひねり)も跳べる選手なので、今後にも期待。E8.866

THOMAS Trinity (USA) ユルチェンコ1回半ひねり
高さ、伸身姿勢共に素晴らしく、迫力のある実施だったが、着地を1歩でおさえきれず、前へ小さく3歩。E9.033

SEITS Elisabeth (GER) ユルチェンコ1回ひねり
雄大でパワフルな実施。後半少し腰が折れて巻き込むように下りて来る。着地後ろへ大きく2歩。E8.9

DOS SANTOS Melanie (FRA)
ウォーミングアップで手を滑らせ少しヒヤッとしたが、本番はしっかりと跳躍。高さ十分、迫力のある跳躍だったが、着地まとめきれず前へ3歩。

 

段違い平行棒

WOO Victoria(CAN)

出だしのシャポシニコワでうまくバーが握れず、次のけ上がりで修正を試みたがうまくいかず一度バーから降りる。翻転倒立1回ひねり、屈身イエガー、伸身ダブル下りでまとめるが、最初の失敗が尾を引き終始フワフワとした落ち着かない実施になってしまう。

 

杉原愛子(JPN)

新しく入れたマロニー1/2ひねり、閉脚シュタルダー1/2ひねり+閉脚屈身イエガー(D+E)、フット倒立1回ひねりからの1/2ひねり低棒移動で反りが入ってしまい前に倒れてしまいそうになるが、なんとかこらえ、最後のムーンサルトまでまとめあげた。少し頭の低い着地になってしまったが、ホッとした表情を見せる。

 

SIMAKOVA Angelina(RUS)

屈身イエガー、シュタルダートカチェフ、フット倒立1回ひねり+パク宙返り(D+D)、マロニー+車輪1回ひねり(D+C)、前宙ダブル下り。ロシアらしい体操。一つ一つの技の質が良く、美しい演技。まだまだ伸びしろあり。

 

THOMAS Trinity(USA)

ワイラー(前方翻転倒立)1/2ひねり+マロニー+翻転倒立1回ひねり+トカチェフ+パク(D+D+D+D+D)、マロニーハーフ、伸身ダブル下り。最初のD難度5つの組み合わせは見ていて思わず「おお、おおお、おおおお!」と言ってしまうような迫力がありつつ、とても流れがスムーズでリズムの良い実施。日本国内ではなかなか見られない構成。
SEITZ Elisabeth(GER)

マロニー+シュタルダートカチェフ(D+E)、閉脚屈身イエガー、シュタルダー閉脚屈身トカチェフ+パク(F+D)、マロニーハーフ、フット倒立1回ひねり+ムーンサルト下り(D+D)
盛りだくさんな内容!かつ、彼女の持ち味のパワフルな捌き方も相まって、とても迫力のある見ごたえ抜群の演技。Eスコア8.433!

 

DOS SANTOS Melanie(FRA)

閉脚シュタルダートカチェフ+パク(E+D)、マロニー+翻転倒立1/2ひねり大逆手持ち(D+C)~エジョワ(バックカット1/2ひねり)+マロニーハーフ(D+E)、閉脚シュタルダー倒立1/2ひねり+大逆手車輪1回ひねり(D+D)、伸身ムーンサルト!!(F)

まず、序盤の閉脚シュタルダートカチェフでびっくりさせられている間にパク宙返りで組み合わせ加点!今大会で新しく取り入れたというエジョワも見事に成功させ、終末技もF難度で下りるという器用さ。ダイナミックだが、姿勢も美しく、とても見ごたえのある演技構成。

 

村上茉愛(JPN)

マロニー+ギンガー(D+D)はもうお手の物。屈身イエガー、開脚イエガーを決めるが、フット倒立1回ひねりで少し流れてしまう。いつも一番減点が多いところだが、1/2ひねり低棒移動はしっかりとおさめ、下りのムーンサルトまで、まとめる。ところどころ振り上げ倒立の倒立へのおさまり方が甘かったように見えたが、出来自体は良かった。

平均台

杉原愛子(JPN)

ロンダートからの両足伸身宙返り上がりで落下。宙返り自体はそんなに悪くなかったように見えたので、少し、着台を急ぎ過ぎたか。片足伸身前宙+脚交差ジャンプ(D+C)の組み合わせのリズムはおそらく減点対象。その後も前宙、側宙、交差輪とび等でふらつきが目立つ実施に。屈身ダブル下りは大きく前へ1歩。最初の落下が演技全体に響いてしまったか。

 

SIMAKOVA Angelina(RUS)

最近世界で流行の台の横から後転とび胸倒立上がり(D難度)。交差輪とび、バク転~スワン+スワン(B+C+C)で3つの技の組み合わせ加点「シリーズボーナス」を取る。片足伸身前宙、前後開脚ジャンプ輪、交差ジャンプ+前後開脚ジャンプ+羊ジャンプ(C+B+C)でまたシリーズボーナス。側宙、かかえ込み側宙、ロンダート~かかえ込みダブル下り。見ていて「あ~、ロシアだなぁ♪」と感じる、旧ソ連時代から受け継がれるベーシックをしっかりと入れた技、動きのさばき方をする。素敵。

 

THOMAS Trinity(USA)

前転上がり、交差ジャンプ+交差1/2ひねり+左右開脚ジャンプ(C+D+B)3つの技の組み合わせでシリーズボーナス。片手バク転~片足スワン、片足伸身前宙+前後開脚ジャンプ(D+B)、抱えこみジャンプから…おそらく1回ひねりに挑戦したが、3/4ひねりになってしまい、おそらくC難度がB難度に下がる。かかえ込み側宙、側宙、ジョンソン、抱えこみダブル下り。

練習日にバク転からスワンを2回続けて練習していたが、なかなか調子が上がらず断念。ところどころふらつきが見られたが、技一つ一つはそこまで悪くない実施。

 

SEITZ Elisabeth(GER)

ロンダート~片足スワン上がり(E)、前宙、バク転~屈身宙返り、横向きの前後開脚ジャンプ1/2ひねりで落下。その後、抱えこみ側宙、交差ジャンプ~ウルフジャンプ、アウエルバッハ屈身宙返り下りと危なげなくまとめる。落下したところ以外の技の出来がとても良かったため、落下が非常に悔やまれる結果に。

 

DOS SANTOS Melanie(FRA)

屈身前宙上がり(E)、台上屈身前宙(E)、バク転+両足スワン、交差ジャンプ~シソンヌジャンプ、横向き前後開脚1/2ひねり、交差ジャンプ1/2ひねり(D)、交差輪とびがEで承認されているかどうか。1回ターン、ロンダート~かかえ込みダブル下り

派手さがそれほどあるわけではないが、淡々と一つずつこなしていく感じ。ただ、やはり脚力があるので屈身前宙、片足スワンの高さが素晴らしい。

 

村上茉愛(JPN)

交差ジャンプ上がり、屈身前宙、バク転~スワンで足を上げてしまうふらつき、交差輪とび、側宙でも足があがってしまうふらつき、かかえ込み前宙+左右開脚ジャンプ+前後開脚ジャンプ(D+B+B)の組み合わせ加点はどうか。新しく入れた交差ジャンプ1/2ひねりは少し実施減点が多いか。片足伸身前宙+交差ジャンプ、ロンダート~屈身ダブル下り

村上選手、平均台の練習をすごくやってきたんだろうなと伝わってくる演技。すなわち、「熟練性」が出てきたように見える。世界選手権で落下があった2回ターンを抜き、交差ジャンプ1/2ひねりで代用。少し自信がついてきたのかなという印象。

 

WOO Victoria(CAN)

Simakova選手同様、流行の後転とび胸倒立から正面支持で上がり、バク転~スワンで後ろ一歩、片足伸身前宙からの前後開脚ジャンプは組み合わせのリズムがどうか。かかえ込み側宙、横向きの前後開脚ジャンプ1/2ひねり、その後の2回ターンで落下。終末技はロンダートから2回ひねり。台上での立ち姿勢をすごく意識した演技。少し落ち着かない実施になってしまったが、動きのユニークさはカナダ選手ならではといった感じ。

ゆか

※最終種目の演技順は3種目めまでの順位で決まり、下位の選手からスタートし、1位の選手が最後になるようにオーダーを組む。そのため、カナダのWoo選手が平均台最終演技からのゆか最初の演技になってしまった。

WOO Victoria(CAN)

豪快な伸身ダブル着地ピタリ!メメルターン(足持ち2回ターン)は少しひねり不足か。かかえ込み前宙から2回半ひねりの間接の組み合わせ(A+D)、最後は屈身ダブル
とにかく最初の伸身ダブルがガツンと印象に残る演技。流れるような曲に合わせた独特な振り付けも素敵。

 

杉原愛子(JPN)

メメルターンはもちろん、余裕の実施。今日は3回(ムスタフィナターン)はやらず。ロンダート~1回半ひねり片足着地~ロンダートバク転3回ひねり(間接のC+E)からの…ドカーン!と前後開脚ジャンプ!…だとよかったのだが少しバランスを崩し脚ポジションが中途半端になってしまう。塩山コーチ苦笑い。3回ターンもきれいに決まり、カデット輪とび1/2ひねり少し流れる。3本目のタンブリングの後の交差輪とびが高さ、開脚度、脚のポジション(輪の形)が素晴らしい実施!減点なし!最後のかかえ込みダブルの着地は小さくホップ。曲もだいぶお馴染みになってきた。

 

SEITZ Elisabeth(GER)

ロンダート~1回半ひねり~ロンダートバク転~かかえ込みダブル(間接C+D)、屈身ダブルで大きく後ろへ1歩。前後開脚ジャンプ1回ひねり、カデットハーフ、前宙~ロンダートバク転~2回ひねり、交差輪とび~交差1/2ひねり。持ち味のパワフルさとノリの良い曲調で観客も盛り上がる。

 

SIMAKOVA Angelina(RUS)

2回半ひねり+伸身前宙1回ひねり(D+C)、ムーンサルト、しゃがみの2回ターンは途中で姿勢が崩れてしまったので2回で承認されているかどうか。屈身ダブル前へ1歩、交差輪~交差ジャンプ、かかえ込みダブル。オルゴールから出てきた人形のような振付と可愛らしい曲がSimakova選手にとてもよくマッチしていて、本当に、旧ソ連から往年のロシア選手を思わせるようなスタイルの体操を見せてくれる。

 

THOMAS Trinity(USA)

交差ジャンプ1回ひねりでスタート。ド迫力の伸身ダブル。ロンダート~2回半ひねり片足~ロンダートバク転~かかえ込みダブル。強い!!しゃがみ立ち2回ターン、転回~伸身前宙+伸身前宙2回ひねり(B+D)、交差輪~カデットハーフ、最後は屈身ダブルの着地をまとめる。強い、強い!さすがアメリカ!

 

DOS SUNTOS Melanie(FRA)

こちらも迫力の伸身ダブルでスタート!ムーンサルトで折り返し、交差1回ひねり、しゃがみ立ちの2回ターンは少しひねり不足か。転回~伸身前宙1回ひねり~鹿ジャンプ、かかえ込みダブル、交差輪~カデットハーフのダンスパッセージで終わる。独特のパワーとしなやかさを併せ持った、見れば見るほどとても魅力的な選手。

 

村上茉愛(JPN)

4回ターンバッチリ!シリバスほぼ完ぺき!伸身ダブルもフワッフワッと2回浮く実施で鹿ジャンプに繋げ、日体大応援団大盛り上がり。2回半ひねり+伸身前宙1回ひねり(D+C)はいつも通り安定の実施、交差輪とび~カデット1回ひねり、浮足水平2回ターンは少し浮足が上下してしまったか。最後は屈身ダブルの着地をまとめて大歓声を浴びる、個人総合優勝を決めた。 村上選手、昨年から比べると体操がさらに「うまくなった」印象。一つ一つの技のさばき方であったり、動き(ダンス)もしっかりと練習してきたというのが伝わってくる。本人も審判の資格をとり、一つ一つの細かい減点を気にしながら、Eスコアを上げてさらに高みを目指すと記者会見でも語っていた。

 

オランダの選手が急遽怪我のため棄権をし、7人での試合となったワールドカップ最終戦。日本選手はもちろん、ロシア、フランス、カナダ、ドイツと、色んな国の特徴、色んなスタイルの体操を見ることができ、また、そこから、各国がどんな強化指針で強化を進めているのかを垣間見ることがきたのではないだろうか。その中でも、村上選手、杉原選手という2人のまったく違うタイプの選手を擁している日本チームはある意味、個性派ぞろいでおもしろいという印象を与えているかもしれない。もちろん、日本チームとして全体で取り組まなければならない課題はあるが、このような選手それぞれの個性を活かしたチームが東京オリンピックの表彰台で首からメダルを掛ける姿が見られることを期待したい。