第49回世界体操レポート(女子予選)

報告者:遠藤幸一

まずは東京オリンピックの団体出場権を獲得した選手たちをねぎらいたい。おめでとう!
以下,日本女子の予選について簡単にレポートする。

1種目めのゆか。梶田選手がアクロバット系だけでなく,ふんだんに盛り込んだターンをうまくこなし,13.166。第2演技者の畠田選手は,後方宙2回半ひねり~前宙で前にとび,ライン減点0.3もあり,12.500。続く寺本選手は,片足水平ターンの乱れ,後方屈身2回宙の着地数歩後ろに動き12.566。松村選手は着地姿勢が少し低くなったが,ポディウム練習でうまくいかなかった後方宙1回半ひねり~前宙1回ひねりを成功させるなど落ち着いた演技で12.933を出してチーム得点を引き上げた。ゆか42.766

2種目めの跳馬。国内合宿で痛めていた左足首の状況を見ながら現地入りした杉原選手が,最初の演技者として登場し,ユルチェンコ1回半ひねりを成功させて14.033を獲得。続く畠田選手もユルチェンコ1回半ひねりを成功させて同じく14.033。寺本選手はチュソビチナ(前転とび前方伸身宙1回半ひねり)を成功させて14.633。最終演技者は松村選手。ユルチェンコ2回ひねりをユルチェンコ1回半ひねりに変更し,14.100を獲得して締めくくった。チーム内に大過失がひとつでも出ると士気が落ちる。この選択は有効な戦略の一つと言える。跳馬42.766。

3種目め段違い平行棒。杉原選手がマロニー~ギンガー,屈身イエガー,前振り低棒とび越しひねり倒立を決め,後方2回宙の着地を止める。13.266。梶田選手は最初のゆかに引き続き落ち着いた演技で段違い平行棒を乗り切る。13.533。寺本選手,ギンガーでバーに近づきすぎたが落下や停滞せず,何事もなかったように演技をまとめて13.966。畠田選手,非常にのびのびとした実施でリズムよく演技していくが,前振り低棒とび越しひねり倒立で大きく横にゆがむが持ちこたえて13.733。段違い平行棒41.232。ここまで大過失なく,もっとも大過失の出やすい最終種目平均台へ。しかしすでにこの時チーム内では杉原選手の左足首の痛みがピークに達しているという緊急事態を迎えていて,チームドクターやスタッフが本部席を走り回っていた。

最終種目平均台。もっとも重要な最初の演技者は畠田選手。安定感抜群の選手でも失敗はある。そんな中,崩れることなく12.966。続く寺本選手。チームのすべてを支えてきた彼女からは,今の状態での精いっぱい自分の出し切ろうとする演技で12.966。大過失を出さないという演技を畠田,寺本両選手が次にバトンをつなげた。そしてその思いは,梶田選手,そして杉原選手に代わって急遽出場を決めた松村選手にしっかりと伝わり,大過失なく,11.900,12.633を引き寄せた。平均台38.565。チーム得点合計161.228。ベルギーに一歩及ばず9位で10班,11班,12班の得点を待つことになった。

 結局,10班のロシア,12班のアメリカに抜かれはしたが,結果11位。すでに東京オリンピックの団体出場権を獲得しているアメリカ,ロシア,中国を除く9か国に与えられる団体出場権枠を獲得した。自身の演技を終えた時には大粒の涙を流す選手もいたが,この女子予選を振り返れば,すべての選手が大過失を出さなかったのはフランスと日本だけ。このプレッシャーがかかる大会で,さらに予定していた選手を交代するなどのアクシデントにも負けずに最後までやり切った点は大いに評価できる。また,選手たち自身の力はもちろん,それを支えてきた周囲のサポートの貢献も非常にいい状態だったと思う。

 一方で,ミスがなくて11位ということは,今後,覚悟を持った取り組みをしなければ,到底世界に追いつけるはずはない。すでに今回をともに戦った選手たちは東京オリンピックに出場するライバルとなった。それぞれが,そして国内にいるオリンピックメダル獲得を夢見る選手たちが,今から覚悟ある取り組みの必要性を感じて前に進む必要があるだろう。
引き続き皆様の温かい応援をよろしくお願いします。