第49回世界体操レポート(女子個人総合決勝)

報告者:日本体操協会広報委員会 明名亜希子

第1ローテーション

1組【跳馬】

DE JESUS DOS SANTOS Melanie(FRA)
今年のヨーロッパ個人総合チャンピオンが非常に高さのある、審判も天井を見上げるようなユルチェンコ2回ひねりの着地を小さなホップでまとめ、決戦がスタート、1種目めから強さをアピール。(E9.233)

LEE Sunisa(USA)
今年シニアデビューのバイルズに次ぐアメリカの新エース。
ユルチェンコ2回ひねりを実施。前のDOS SANTOS選手に比べると高さも距離も少し物足りなく感じるが、足先まで揃った美しい実施。着地で足が前後に開くのが気になるところ。とはいえ、まだ年齢が若いのにとてもエレガントな体操をする選手。緊張した面持ちも初々しい。(E9.066)

BILES Simone(USA)
ロンダート~1/2ひねり着手 前方伸身宙返り11/2ひねり

非常に雄大で、スピード、迫力満点の実施。勢い余って横へ大きくホップ、ラインオーバー。 BILES選手、この跳躍でさらにもう1/2ひねり多い2回ひねりを昨年発表、「BILES」と名前が付いているので、もちろんかなりの余裕をもってのひねりきり。(D6.0 E9.333 P-0.1)

LI Shijia(CHN)
ユルチェンコ2回ひねり。小柄ながら雄大な実施で着地をまとめる。他の選手と比べてしまうと見栄えがしない気がするが、小柄さを考慮するととても大きさの出ている実施。(E9.033)

TANG Xijing(CHN)
予選では平均台の2回落下が響き21位、「各国2名」ルールで予選敗退だったが、5位で予選通過していたLiu Tinting選手と入れ替えで決勝に出場。
ユルチェンコ2回ひねりを綺麗な空中姿勢で実施、着地は横へ大きく1歩でてラインオーバー。(E8.866 P-0.1 )このあと彼女が快挙を成し遂げることになるとは誰が良そうで来ただろうか。

MELNIKOVA Angelina(RUS)
非常に高さのあるユルチェンコ2回ひねりだが、ひねりの間中ずっと足先がバラついてクロスしているのがもったいない。膝も少し緩く見える。着地大きく後ろホップ。(E9.033)

2組【段違い平行棒】

SEITZ Elisabeth(GER)
パワフルなマロニー+シュタルダートカチェフ(D+E)、屈身イエガー(E)、シュタルダー屈身トカチェフ+パク+チャウ1/2(F+D+E)、翻転倒立1回ひねり+ムーンサルト(D+D)と、組み合わせ盛り沢山な構成をスピード感と迫力のある潔い実施で通しきり、Eスコア8.466好評価。目の肥えた地元ドイツの観客の大歓声に応える。

DERWAEL Nina(BEL)
昨年のこの種目の世界チャンピオン。今年こそ個人総合でのメダルがほしいDerwael選手。

雄大なナビエワ(フット伸身トカチェフ:G)、シュタルダートカチェフ1/2ひねり+エジョワ(バックカット1/2ひねり)+チャウ+パク+マロニー1/2ひねり(E+D+D+D+E)の手離し技と棒間移動技の5つの連続は圧巻!正確で美しい基本要素のけ上がり~振り上げ倒立の後、フット倒立1回ひねり+ムーンサルト下り(D+D)を組み合わせ、着地もピタリ。
この実施なら間違いなく種目別金メダル。(D6.5 E8.7!)

 

3組【平均台】

寺本明日香(JPN)

今シーズン不安をかかえつつずっと取り組んできたしゃがみ立ちの2回ターン(D)を危なげなく成功。立位での2回ターンは小さなふらつきでとどめる。片足伸身前宙+前後開脚ジャンプ+左右開脚ジャンプ(D+B+B)で組み合わせ加点をしっかり稼ぐ。オノディ(D)、交差ジャンプからかかえ込み側宙は繋げずに実施。バク転スワンは少しフワっとした印象の着台。側宙、ラスト2回半ひねりは着地を長めに決める。
足首の痛みがあったのか、いつもは頭の位置が高く胸を張った良い姿勢で演技をこなす寺本選手が、前半は少し前かがみで全ての技を実施。後半も、いつものようなバシッ!という決め方はせず、ふわっと、だがしっかりと確かめるように着台をして技をこなしていた印象。(D5.3 E8.066)

KINSELLA Alice(GBR)
2019年この種目のヨーロッパチャンピオン。
後転とび胸支持上がり(D)、しゃがみ立ちの2回ターン。側宙+スワン+スワン(D+C+C)の組み合わせは非常にスムーズに実施。交差+ジョンソン(C+C)は少し硬さが見えて脚を開き切れていない印象。片足伸身前宙(D)、屈身ダブル下りは着地1歩。シンプルなだが難しい構成。Eスコア8.3はさすが。(D5.5)

VOSS Sarah(GER)
流行の後転とび胸支持上がり(D)、バク転+スワン+スワン(B+C+C)少しブレるがこらえる。平均台では非常に難しいカデットジャンプ(D)。側宙、交差+交差1/2ひねりジャンプの連続はスムーズに実施(C+D)、片足伸身前宙+前後開脚ジャンプ+バク転(D+B+D)、高い着台姿勢のかかえ込み側宙、2回半ひねり下りの着地をピタリと決める。良い実施。今大会も厳しい採点と言われている平均台でまずは8点台をとれるかどうかが平均レベル。メダル争いをするならEスコア8点中盤をとりたいところ。(D5.6 E8.2)

STEINGRUBER Giulia(SUI)
こちらも流行の交差ジャンプ上がり(C)、片足伸身前宙では膝曲がりが目立つ実施。かかえ込み前宙は足を上げるふらつき。バク転スワン小さくふらつき。こちらも少し膝曲がり。屈身前宙も足を上げるふらつき。交差~かかえ込み側宙もこらえる。1回ターン、交差1/2ひねりはひねり不足か。台の端へアウエルバッハ伸身宙返り1回ひねり下り(E)はお見事。
(D5.3 E7.5)

4組【ゆか】

畠田瞳(JPN)
しゃがみ立ち2回ターン(D)綺麗に成功、足持ちかかとを水平に保った2回ターン(D)はひねりきった後にトウ立ちを保ったままほどく捌きをみせ、アンダーコントロールである余裕をアピール。交差1回ひねりジャンプ(D)はひねりきりがどうか。かかえ込みダブル後ろへホップ、足持ち2回ターンも余裕のある実施。2回半ひねり+前方伸身1回ひねり(D+C)ではダイレクトに両足がラインの外へ。しかし実施自体は高さもあり良いと言える。交差~カデット1/2ひねり、屈身ダブルも後ろへ大きくホップしたがこらえた。
畠田選手、一種目めまずまずの滑り出し。予選の硬さを払拭するような攻めの姿勢が見られた。(D5.2 E7.833 P-0.3)

VARINSKA Diana(UKR)
後方1回半ひねり~ロンダートバク転~3回ひねり(間接C+E)の難しい組み合わせ。着1歩。美しい浮足水平2回ターン、2回半ひねり+かかえ込み前宙(D+A)は小さくホップ2回。十分に頭部後屈、胸からのアーチが見られる交差輪~前後開脚輪は素晴らしい実施。足持ち2回ターン、かかえ込みダブルの着地をまとめる。ひねり技での足のバラつき、クロスしているのが気になるところだが、ダンス系要素の実施は素晴らしさはさすがウクライナ代表。(D5.3 E8.1)

MOORS Brooklyn(CAN)
転回~かかえ込み前宙ダブル1/2ひねり!すごい高さ!伸身前宙2回ひねり+伸身前宙1回ひねり(D+C)これも高さのある素晴らしい組み合わせの実施。後ろアチチュード2回ターンは最後少し足が下りてしまったか。交差輪~大ジャンプ輪、前後開脚ジャンプ1かいひねり、最後は2回半ひねり+かかえ込み前宙(D+A)でしめくくり。ポディウム練習の時からその振付、感情のこもった表現の素晴らしさの前評判が高く、予選でも決勝でもドラマチックかつパワフルな演技で魅せた。一つの作品として素晴らしいプログラム。(D5.2 E8.366)

第2ローテーション

1組【段違い平行棒】

LEE Sunisa(USA)
身体がまっすぐなままバーを越える素晴らしい実施のナビエワ+パク(G+D)だったが、パクで少し歪んでしまい、キャッチがうまくいかず一旦足がマットに着いた後、下に弾かれマットに座る形で落下。マロニー+パク1回ひねり(D+E)も少し歪んでキャッチするがなんとか力でつぎのけ上がりに繋げる。マロニー1/2ひねりで再び高棒へ、車輪1回半ひねり+屈身イエガー(D+E)はしっかりキャッチ。ムーンサルト下りの着地を決める。非常に残念そうな表情。(D6.1 E7.033)

BILES Simone(USA)
け上がり逆手持ち替え~ワイラー1/2ひねり+マロニー+トカチェフ(D+D+D)、フット倒立1回ひねり+屈身トカチェフ+パク(D+E+D)、マロニー1/2ひねり、かかえ込み2回宙返り2回ひねり パワフルで非常に安定した実施。姿勢欠点も少なく、余分なけ上がりも入っていない賢い構成。終末技では演技の最後であれだけ小さなかかえ込み姿勢が作れて、早く2回ひねりを終えられるその体幹の強さはさすが。(D6.2 E8.533)

LI Shijia(CHN)
屈身イエガー(E)、シュタルダートカチェフ+パク(E+D)、マロニー+ギンガー少し高さ不足(D+D)。ここまで順調だったが次のフット倒立1回ひねりで大きく横に軸ブレ、次の車輪で反りが入ってしまうが、なんとか立て直す。ムーンサルト下りの着地は頭が下がり前へ2歩。(D5.6 E7.766)

TANG Xijing(CHN)
マロニー+パク(D+D)、マロニー1/2(E)、逆手前方車輪片手軸1回ひねり+大逆手前方車輪片手軸1回ひねり+大逆手前方車輪1回ひねり+屈身イエガー(E+E+D+E)の組み合わせは‟The Chinese bars”と言われるほど、中国スタイルの芸術的で技ありの実施。終末技伸身ダブルの着地をピタリと止める。素晴らしい実施。演技中、コーチが全く下で補助に付かなかったところを見ると、演技が相当熟練され、安定したものなのだとわかる。(D6.0 E8.533!)

MELNIKOVA Angelina(RUS)
流れるような閉脚シュタルダー1回ひねり+マロニー+パク(E+D+D)、マロニー1/2ひねり(E)、閉脚シュタルダー1/2ひねり+屈身イエガーしっかりキャッチ。最後のフット倒立1回ひねりの途中、1/2ひねったところで少し停滞してしまう。なんとかひねりきり、ムーンサルトへつなげ、着地をまとめる。(D+D)(D5.9 E8.0)

DE JESUS DOS SANTOS Melanie(FRA)
ここでDOS SANTOS選手に試練が。。。
序盤の閉脚シュタルダートカチェフでまさかの落下!バーをしっかりと握らずに落下したので要素(難度)として成立しないと判断、やり直してパクへ繋げる(E+D)、マロニー+パク1回ひねりでキャッチ後手が滑ったような様子で2回目の落下。マロニー1/2ひねり(E)、閉脚シュタルダー1/2ひねり+大逆手前方車輪1回ひねり(D+D)最後は伸身ムーンサルトの着地をピタリと止める。ここで2回の落下は非常に厳しい。(D5.7 E6.233)

2組【平均台】

BLACK Elsabeth(CAN)
2回ターン完璧。非常に高さのある、減点0のかかえ込み前宙、バク転+両足スワン(B+E)は身体がまっすぐな姿勢での実施。交差+交差1/2ひねり+バク転(C+D+B)の組み合わせは真ん中の交差1/2ひねりで少し膝の緩みが見えた。かかえ込み側宙、2回半ひねり下りの着地をまとめる。膝などの姿勢欠点がほんの少しきになるものの、一つ一つの技の高さが素晴らしい。(D5.6 E8.4)

VILLA Giorgia(ITA)
ロンダート~片足スワン上がり(E)、ロンダート+かかえ込み宙返り1回ひねり(B+F)宙返りの高さは素晴らしかったが片足を上げてしまうふらつき。しゃがみ立ち2回ターンは軸が前にブレてしまい落下。交差1/2ひねり(D)、後転倒立+B大ジャンプ+側宙(B+B+D)は独創性のある技の組み合わせ。終末技は2回ひねりで小さくホップでまとめる。(D5.4 E7.233)

SARAIVA Flavia(BRA)
ロンダート~バク転上がり+前後開脚ジャンプ+バク転ローリング(D+B+B)の組み合わせで勢いに乗せる。ロンダート+両足スワン(B+E)は綺麗な伸身姿勢での実施。1回ターン、バク転+スワン+スワン(B+C+C)も安定した実施。交差輪とびで大きくふらつく。側宙、かかえ込み側宙、大ジャンプ輪もしっかりと決め、屈身ダブルの着地を一歩でおさえる。(D5.7 E8.333)

2020へ向けて今回もメダル候補とまで言われていたブラジルだったが怪我人続出でなんと予選敗退、来年のオリンピックの団体出場権さえも落としてしまった。そんな中でもエースとしてリオの頃からチームを引っ張るSARAIVA選手。最近は大人っぽさも増して本当に質の良い体操をするようになってきている。

SEITZ Elisabeth(ESP)
交差ジャンプ上がり(D)、かかえ込み前宙(D)、バク転~屈身宙返り(C)、かかえ込み側宙(D)、2回ターン(D)、交差ジャンプ(C)~ウルフジャンプ、側宙(D)、伸身前宙1回ひねり下り(C) 派手な大技や組み合わせは構成には入っていないが、一つ一つの実施の空中での高さ、着台の姿勢の良さ、スピード感と安定性をハッキリと表現し、質の良さでEスコア8.333。(D4.9)

3組【ゆか】

STEINGRUBER Giulia(SUI)
今年のヨーロッパ選手権のこの種目のチャンピオン。出だしのカデット1回ひねり(D)の素晴らしい高さ!伸身ムーンサルト、伸身ダブルと演技前半で圧倒される構成。本当に脚力が強く、衰えない。交差~交差1回ひねりジャンプも高さがあり余裕のある実施。かかえ込み前宙~ロンダートバク転~かかえ込みダブル、屈身ダブルも素晴らしい高さでの実施。パワフル。(D5.2 E8.433)

寺本明日香(JPN)
新しい曲と振付を今大会でお披露目。
最初の浮足水平ターンは後半ブレてしまい難度承認がどうか。ロンダート~後方1回半ひねり~ロンダートバク転~2回半ひねり(間接C+D)着地をグッとこらえながら決める。転回~伸身前宙2回ひねりもしっかりとひねりきる。座の2回ターン、立ち上がって3回ターン共にしっかりとひねりきる。交差輪~交差1回ひねりもいつもよりも丁寧に行なっている様子。ラスト屈身ダブルは回転不足で前は大きく動くが転倒は免れる。
足首等の痛みをこらえてなんとか最後まで通しきった。(D5.0 E7.700)

4組【跳馬】

畠田瞳(JPN)
ユルチェンコ1回半ひねり。今シーズンずっと安定していたが、着地でのしゃがみ立ちの減点が響き、Eスコア8.8。(D5.0)

GODWIN Georgia(AUS)
伸身ツカハラ1回ひねり 少し空中での腰折れが見られる実施。(D4.8 E8.933)

第3ローテーション

1組【平均台】

BILES Simone(USA)
しゃがみ立ち3回ターン!(E)、片足伸身前宙少しバランス崩したので繋げずに前後開脚ジャンプ+左右開脚ジャンプ、安定したバク転+スワン+スワン(B+C+C)、交差+交差1/2ひねり+屈身宙返り(C+D+C)もスピードと迫力で潔く決めていく。側宙(D)、横向きの前後開脚ジャンプ1/2ひねり少しふらつき。バク転+バク転+かかえ込みムーンサルト(B+B+H)団体決勝に引き続き、今日も新技「バイルズ」(かかえ込み2回宙返り2回ひねい)は行なわず。(D6.0 E8.433)

LI Shijia(CHN)
交差+大ジャンプ輪(C+D)、少し停滞してバク転。おそらく3つの組み合わせなし。側宙(D)、前方転回+前宙(B+D)ユニークな組み合わせ。高さもスピード感あり、一気にこの演技をスペシャルな物にする組み合わせ。交差輪+バク転(E+B)、前後開脚ジャンプ~ウルフジャンプで要求を満たす。片足伸身前宙+ヤンボー(D+D)で少しふらつき。横向きの前後開脚ジャンプ1/2ひねり(D)ターンもほんの少しブレる。ここまで順調だったがラスト屈身ダブルで勢い余って着地後ろへ4歩。非常にもったいない。(D5.7 E8.0)

TANG Xijing(CHN)
ロンダート~片足スワン上がり(E)、ロンダート+両足スワン(B+E)は身体がまっすぐな伸身姿勢での実施。交差輪+ヤンボー+バク転ローリング(E+D+B)正確な実施。交差ジャンプ+大ジャンプ輪+バク転(C+D+B)は片足を上げてしまうふらつきになるが、こらえる。1回ターン、片足伸身前宙+前後開脚ジャンプ+鹿ジャンプ輪(D+B+B)でまた組み合わせ加点。終末技2回ひねり(C)着地1歩はちょっと物足りない気がするが、盛り沢山な内容に実施の正確さが伴い、Eスコア8.5。Dスコア6.1も素晴らしいレベル。

MELNIKOVA Angelina(RUS)
Tang選手の採点に時間がかかり、かなり待たされてからの演技開始。

交差ジャンプ上がり(D)、バク転スワン、片足伸身前宙+前後開脚ジャンプ+左右開脚ジャンプ(D+B+B)スムーズな実施。バク転3/4ひねり(D)はブレが入りながらもなんとか起き上がってくる。しゃがみ立ち2回ターン(D)、かかえ込み側宙(D)、横向き前後開脚ジャンプ1/2ひねり(D)屈身ダブル下りの着地はホップでまとめる。演技前だいぶ待たされたにも関わらず素晴らしい実施で通しきる。Eスコア8.6はこの日平均台トップのEスコア。(D5.4)

2組【ゆか】

DERWAEL Nina(BEL)
非常に高さのあるカデット1/2ひねり。演技初めのインパクト大。

かかえ込みダブル(D)高い着地、足持ち2回ターン(D)、しゃがみ立ち3回ターン(E)しゃがみ立ち2回ターン(D)、後方1回半ひねり+前方1回ひねり(C+C)、交差輪(C)~大ジャンプ 芸術的で素敵な作品。タンブリングは2本だけでシンプルにまとめ、さまざまな種類の正確なターンでDスコア、Eスコアを積み上げた。(D5.0 E8.0)

SARAIVA Flavia(BRA)
Saraiva選手得意種目。テンポ+伸身ダブル(A+F)の組み合わせは迫力満点。会場からも歓声と拍手が巻き起こる。ジョンソン1/2ひねり(C)は余分にひねって正確性をアピール。かかえ込みムーンサルト(E)、大ジャンプ輪(C)~カデット1回ひねり(D)、後方1回半ひねり+前方1回ひねり(C+C)はしっかりと高さのある実施。浮足水平2回ターン(D)、交差輪(C)とダンス系も盛り沢山。ラスト屈身ダブル(D)の着地もまとめて、彼女らしい曲と愛らしい振付で会場を盛り上げた。(D5.5 E8.433)

SEITZ Elisabeth(GER)
迫力のあるアラビアンダブル(E)後ろ1歩、後方1回半ひねり~ロンダートバク転~かかえ込みダブル(間接C+D)も力強い実施。カデット1/2ひねり(C)、前後開脚ジャンプ1回ひねり(C)、屈身ダブル(D)、最後のタンブリングの後に交差輪(C)~交差1/2ひねり(C)というおもしろい構成。曲も振付もコミカルかつ、パワフル。独特で面白い。(D4.9 E8.4)

BLACK Elisabeth(CAN)
ポパ(C)、伸身前宙1回ひねり~ロンダートバク転~3回ひねり(間接C+E)は非常にパワフルな実施。後方2回半ひねり~ロンダートバク転屈身ダブル(間接D+D)は今や彼女の代名詞となる組み合わせ。伸身ホップ1回ひねり(B)~ジョンソン1/2ひねり(C)、転回~伸身前宙2回ひねり(D)曲も振付も非常に力強くパワフルな印象。構成もオリジナリティ溢れるもの。カナダチームはそれぞれの個性を活かしたユニーク構成が多いのが特徴。(D5.2 E8.333)

3組【跳馬】

VOSS Sarah(GER)
ユルチェンコ2回ひねり横へ大きく1歩。ラインオーバーなし。(D5.4 E9.1)

STEINGRUBER Giulia(SUI)
寺本選手と同じチュソビチナ (前方転回~前方伸身宙返り1回半ひねり)、手を突き放してからの腰のスナップ(曲げ伸ばし)が少し強め。着地後ろへ1歩でまとめる。(D5.8 E9.133)

寺本明日香(JPN)
チュソビチナ 足首の心配がありながらも今日は勢い余って後ろへ大きく1歩。腰折れ、足のバラつき等、まだ課題はあるが、この日のコンディションを考えると上出来。笑顔がこぼれた。(D5.8 E8.8)

4組【段違い平行棒】

MOORS Brooklyn(CAN)
マロニー+パク(D+D)、フット倒立1回ひねり(D)、マロニー1/2ひねり(E)、翻転倒立(C)、車輪ツイスト(B)、ホルキナ(D)、フット飛び出し屈身前宙1/2ひねり下り(C)Dスコア4.1と非常にシンプルな構成だが、ホルキナやフット下りが個性を出している。(E8.366)

畠田瞳(JPN)
閉脚シュタルダー倒立(D)、閉脚シュタルダー倒立1回ひねり(E)、フット倒立(C)、マロニー1/2ひねり(E)ここまで倒立の角度も良く、非常にスムーズに繋げる。閉脚シュタルダー倒立1/2ひねり+屈身イエガー(D+E)しっかりキャッチ、高さのあるシュタルダートカチェフもキャッチ。1/2ひねり移動低棒倒立(D)、かかえ込みムーンサルト(D)の着地をピタリと高い姿勢で止める。

笑顔こぼれる素晴らしい出来。(D5.6 E8.266)

第4ローテーション

1組【ゆか】

LI Shijia(CHN)
3回ひねり(E)後ろへ大きく1歩。2回半ひねり+屈身前宙(D+A)はラインギリギリセーフ、ポパ(C)、大ジャンプ輪(C)~交差輪(C)。輪の姿勢の正確さはさすが。かかえ込みダブル(D)後ろ1歩、屈身ダブル(D)小さくホップ、交差1/2ひねりで演技を締めくくる。着地こそ決まり切らなかったが、クリーンで正確な実施が光る演技。(D5.0 E8.3)

TANG Xijing(CHN)
3回ひねり+かかえ込み前宙(E+A)前宙の着地が横を向いているのが気になるところ。2回半ひねり+屈身前宙(D+A)ピタリと決める。3回ターン(C)正確。かかえ込みダブル(D)着地1歩。交差輪(C)~大ジャンプ輪(C)、ラスト2回ひねり(C)はもう一声ほしいところだが、可愛らしい振付と笑顔で演じ切った。(D5.1 E8.5)

MELNIKOVA Angelina(RUS)
伸身ムーンサルト(H)空中での足の緩み等は気になるが、立てるだけでもすごい技。浮足水平ターン+2回ターン(D+B)の組み合わせは本当にターンが上手くないとできない組み合わせ。ロシア選手達が得意とするところ。伸身ダブル(F)は余裕。交差~交差輪(C)、かかえ込み前宙~ロンダートバク転2回ひねりで要求を満たす。正確なしゃがみ立ち3回ターン(E)、足持ち2回ターン(D)、最後の屈身ダブルは後ろへ大きく1歩でおさえる。大過失なくこつこつ点数を積み上げ、銅メダル獲得。

LEE Sunisa(USA)
非常に高さがあり、安定したシリバス(H)は予選、団体決勝、個人総合とコピーしたものを3回見ているよう。伸身ダブル(F)着地ピタリ。ポーズ一つだけ間に入れて実施されるしゃがみ立ち3回ターン(E)としゃがみ立ち2回ターン(D)も素晴らしい安定感。後方1回半ひねり+前方1回ひねり(C+C)、交差輪(C)~カデット1/2ひねり(C)、かかえ込みダブル(D)の着地もまとめて初めての世界選手権個人総合を締めくくった。段違い平行棒での失敗の影響で8位という結果だったが、まだまだ伸びしろの見える若い選手。来年が楽しみ。

BILES Simone(USA)
最終種目のこの時間は2013年のアントワープの世界選手権から2016年リオオリンピックを経て、出場しなかった2017年を除いて今大会まで毎回、彼女の優勝を決めるステージとなっている。ただ、今回は新たに「バイルズ2」を引っ提げてのステージである。

バイルズ2(かかえ込み2回宙返り3回ひねり:J難度)着地大きく後ろへ跳んでしまいラインオーバーしてしまうが、観客の盛り上がりは最高潮に。バイルズ(伸身ダブル1/2ひねり:G)で折り返し。こちらも大きく前へ1歩。高い!交差1回ひねり(D)、しゃがみ立ち2回ターン(D)をしっかり決め、伸身前宙~ロンダートバク転~ムーンサルト(E)で要求を満たす。交差ジャンプ~カデット1回ひねり(D)、ラストにシリバス(H)これもまた後ろへ大きく着地乱れ、ラインオーバーもあったが、そんなミスも忘れたと言わんばかりの大きな歓声に包まれる。(D6.6 E8.2 P-0.4)

2組【跳馬】

SEITZ Elisabeth(GER)
ユルチェンコ2回ひねり スピードと迫力のある素晴らしい跳躍。着地小さく後ろへホップ。地元ドイツの大歓声を浴びる。(D5.4 E9.2)Seitz選手、大健闘の6位。本人もインタビューで「こんなにすごい歓声、応援をもらって、6位になれた。25歳でもまだ点数を伸ばせる。まだやれる。こんな事を感じられるなんてなんてクレイジー!」と幸せそうな表情で応えていたのが印象的。

BLACK Elisabeth(CAN)
ずっと転回~伸身前宙1回ひねりだったが、今回チュソビチナに挑戦してきた。

少し腰が折れて落ちてきた形になり、前のめりな着地になってしまう。転倒せずにこらえたが。。。審判への挨拶を終えた後足を痛そうにしゃがみこんでしまう。その後コーチとトレーナーに肩を抱かれながらポディウムを去った。(D5.8 E8.766)

2017年の個人総合銀メダリスト(2018年は段違い平行棒の失敗が響き12位)今年は4位とメダルまであと1歩だった。

DERWAEL Nina(BEL)
フワリと空を飛ぶようなユルチェンコ1回ひねりだったが、少し着地を取り急ぎ、腰を折って足を入れすぎてしまい後ろへ大きく跳んでしまう。それでもEスコア9.0はその跳躍自体の素晴らしさが十分に評価されている。(D4.9 E9.0)
個人総合5位。メダル獲得には跳馬のDスコアを上げることが課題か。

3組【段違い平行棒】

寺本明日香(JPN)
閉脚シュタルダー倒立1/2ひねり+屈身イエガー(D+E)しっかりとキャッチ。閉脚シュタルダー倒立1回ひねりで少し身体がぶれ、足が割れるが問題なくギンガーへ繋げる(E+D)、閉脚シュタルダー倒立(D)少し肘曲がり、開脚イエガー(D)キャッチ。1/2ひねり低棒移動倒立(D)、終末技ムーンサルト(D)の着地はしっかりと狙って止める。着地姿勢も高く素晴らし実施での締めくくり。笑顔がこぼれ、ホッとした表情で岡崎コーチと手を合わせる。寺本選手、日本チームキャプテンとして心身共に色んなものを背負いながら、本当によく戦い抜いた。

4組【平均台】

畠田瞳(JPN)
交差ジャンプ上がり(D)、かかえ込み前宙+前後開脚ジャンプ(D+B)で組み合わせ加点をとる。片足伸身前宙+左右開脚ジャンプ~ウルフジャンプ(D+B~A)、側宙(D)かかえ込み側宙(D)非常に落ち着いて、安定した実施。交差ジャンプ(C)でふらつき、繋げずに交差1/2ひねり(D)、バク転スワン、1回ターン、屈身ダブル(E)は着地小さくホップでまとめる。ガッツポーズ!

畠田選手、今大会も本当に良く戦ってくれた。出発前に「私は日本チームの萱選手になりたい」と言っていたが、本当にその言葉通り、畠田選手も萱選手もその安定性はチームには欠かせない存在となっている。来年に向けて、さらなる発展を期待したい。

 

5回目の世界タイトルを手にしたBiles選手の強さは今年も圧巻であった。銅メダルのロシアのメルニコワ選手は昨年5位からのリベンジ。周りが崩れる中ロシアらしい体操でコツコツと点数を積み重ね、メダルをつかみ取った形になった。そしてなんと言っても中国のTang Xijing選手。予選5位通過だったLiu Tinting選手と入れ替えで出場し、銀メダル獲得。「各国上位2名」ルールはその都度議論されるところであるが、その国の戦略も垣間見ることもできる興味深いところでもある。

来年の東京オリンピックへ向け、また各国団体、個人総合共に色々な形での強化が見られるのが楽しみである。