新体操WCソフィア大会2025レポート①
4月4日〜6日、ブルガリア/ソフィアにてワールドカップが開催され、初日を迎えた。
今大会は、個人シニア85名、団体12カ国が出場予定であり、日本からは、フェアリージャパンPOLA 団体チーム、個人 喜田未来乃選手、鶴田芽生選手が出場する。新ルールとなり迎えた今回のワールドカップは各国から多くの選手が参戦し、競技時程は9時から23時という長丁場が予定されており、選手にも審判にも過酷な試合となることが予想される。この過酷な状況をいかにタフなメンタルを維持して乗り切れるかが勝負である。
4月4日 個人予選 前半種目(フープ・ボール)
【喜田未来乃】 1日目 39位
ボール D9.800 A7.750 E7.600 合計 25.150
Aグループの競技開始は9時。早朝からのコンディション作りは大変な面もあったが、今シーズンの初戦となる国際大会での最初の種目は表情も良く、音楽を味方につけた演技を展開した。新ルールに合わせた新しいプログラムでは、日本を意識した「陰陽師」の曲を使用し、特徴と個性を重視した内容になっている。Rの受けの基準で予定通りの実施ができなかった部分はあったものの、難度の大きさと強さが見られ、全体的には演技をまとめることができた。芸術の得点も7点台後半まで評価が出たが、さらにエネルギーの伝わる表現を追求し、個性を強調していくことが重要だと感じた。
フープ D9.500 A7.200 E7.050 合計23.750
2種目のフープは序盤からやや固い動きであった。座での足から蹴り返すDAでキャッチしたものの、バランスの入りの前に小さく落下。惜しいミスであった。その後大きく崩れることはなかったが、ボールに比べ全体的には小さくまとまった演技となった。喜田選手の持つフープ演技の大きさや緩急のある表現には不足が見られた。また、手元でのチェックではあるが、身体難度における手具操作の繰り返しによりノーカウントになった難度があると思われる。事前に演技をチェックしたにも関わらず、見逃しがあった可能性がある。改めて国際大会の派遣選手に対するチェックをしっかりと行うことの重要性を痛感し、今後に向けてどの選手に対しても現場と審判の連携を今以上に強化する必要性を感じた。
【鶴田芽生】 1日目 44位
ボール DB7.00 DA3.80 A7.550 E7.400 合計25.750
Dグループの競技開始は17:50。身体的にもメンタル的にもコンディションの調整が難しい試技順であったが、ボールはスタートからエネルギーに満ちた力強さと表現が見られた。中盤のRで投げの軌道が外れ、ヒヤッとしたが冷静に判断し、ミスなくキャッチすることができた。周囲も良く見えており、落ち着きの中にも勢いがあり、最後まで集中力を保った演技ができた。2回目のダンスステップからはダイナミック変化も明確に見え、課題である芸術的表現の向上も手応えのある演技であった。今後は動きの強さとスピードを含めた多様性と緩急を出していくことが課題だと感じた。
フープ DB5.90 DA4.40 A6.200 E6.750 減点0.60 合計22.650
フープはボール以上に力強くエネルギーの伝わる演技を展開した。序盤から手具操作もクリアであり、1つ1つのDAも明確に実施していることが見えた。動きの大きさやスピードの緩急もあり、身体難度、Rも予定通りの内容を決めることができたが、終盤のDAの高い投げからの受けと転がしでミスがあり、フープはそのまま場外へ。近くの予備手具を取る判断も早く、最後の身体難度の実施にも間に合ったが、場外したフープが演技面に戻り、そのまま演技の終了を迎えたため、線審の減点と演技面に手具が残る0.30点の減点が発生し、結果的には実施のミスと合わせて大きな減点となった。Dはかなりクリアに実施できており、DAの評価も高かっただけに、一瞬のミスが悔やまれる結果となった。この経験を次に生かすことが重要である。
新ルールでの今回の試合は、芸術における作品の評価についての方向性を確認する意味で、大変重要な機会となった。作品の内容や音楽と動きの調和が多様性を伴って存在するかどうか、という点に注目し出場者全員の演技を見ることができ、大変有意義だった。ブルガリア、イタリア、ベラルーシの選手達は個性をはっきりと打ち出し、独自の世界観を持った演技を展開していた。特にベラルーシの2選手は動きと手具の関係性にこだわるつなぎを展開しており目を引いた。ウクライナの選手は美しさを伴った強さを前面に出し、Dで高得点を重ねたことが特徴であった。イスラエルは若手選手を押し出し、ロスオリンピックを見据えた強化が見える形で行われていた。ここに挙げた国、選手以外でも個性と共に、本番でのエネルギーが強い選手の評価が高いことは明らかであり、構成内容に加えた完成度、熟練度、そしてフロアに立つときに自信が重要であると感じた。明日は後半種目であるが、喜田選手、鶴田選手ともに、今ある力を全力で出し切った演技を期待する。
【団体】 3位(1位BUL 2位ESP 4位USA)
リボン5 21.800(DB 4.50 DA 5.80 A 6.30 E 6.30 減点0.30)
出場選手:鈴木歩佳、稲木李菜子、田口久乃、西本愛実、田中友菜
日本は出場国12チーム中10番目に登場。各国ともリボン5の実施に苦しみミスの多い展開であった。日本チームも3月中盤まではミスを連発する状態であったが、出発前にはだいぶまとまった演技ができるようになって今回の初戦を迎えた。前半は落ち着いて交換と連係を実施できていたが、中盤から少しずつ乱れが生じた。イリュージョンの足投げでのCR、前方足投げお尻回りのCRで1名が実施できず移動と接触によりリズムが狂った。背面からの視野外投げの交換、側転足投げの連係で落下が続き、終盤の3本投げを手での投げに変更したが、Rにうまく繋げることができず全員のRが乱れた投げで終末のポーズを行うという結果となった。しかし、はっきりとしたミスや交換、連係時の移動はあったものの、身体難度の大きさや美しさなどは向上しており、明確に決まった連係も多く、今後に繋がる1本であった。他国もリボン5には苦戦しており、大きな減点となっている国も多かった。決勝では、修正できる部分を修正し、予選での経験を生かした実施を目指したい。地元のブルガリアは明確なミスもあったが、まとまりのある演技で首位をキープした。スペインはポディウムのミスの多い演技から一転、挑戦しつつミスを最小限に抑えた。また、アメリカはこれまでの団体の印象を大きく覆す選手起用と芸術性を重視した構成に挑戦しており、ロスオリンピックを確実に意識した変化が見られた。今回は、イスラエル、イタリアが不参加となっており、作品の比較ができなかったが、日本は日本の個性を強く打ち出し、自信にあふれる演技を積み重ねていくことが重要だと感じた。
明日は、ボール3+フープ2の予選が行われる。