新体操WCバクー大会2025レポート②
4月19日、ワールドカップ・バクー大会2日目の競技が行われ、個人はクラブ/リボン、団体はボール3+フープ2の種目が実施された。
個人予選・後半種目(クラブ・リボン)
【喜田未来乃】 総合22位 合計得点 99.700
●リボン DB 7.000 DA 3.900 A 7.200 E 6.700 合計24.500
Aグループの競技は朝10時から始まり、喜田選手は4番目に登場。朝早くからコンディションを整え、落ち着いた雰囲気で登場した。静寂な会場の中で、線の美しさが際立つ洗練された動きが印象的で、世界の選手と並んでも存在感を放っていた。序盤から中盤にかけてのリスクは移動なく正確に実施されたが、終盤のリスク(3回前転シリーズ)で投げが大きくなり、手具が場外に。これが実施減点に大きく響いた。それまでの内容が良かっただけに、非常に惜しいミスとなった。
●クラブ DB 6.700 DA 3.300 A 7.450 E 7.550 合計25.000
リボンでのミスの影響もあり、予定していたリスクの受けを控えるなどやや慎重な様子も見られたが、最終種目を粘り強く、ノーミスでまとめ切った。カルメンの音楽に合わせた演技は、喜田選手の個性や雰囲気にマッチしており、表現力も発揮されていた。一方で、技術にとらわれず、より自由に踊る余裕が加われば、芸術点・実施点ともにさらに向上が期待できる。最後の滝状のリスクについては、2個目の投げのタイミングが遅れたことにより、1個目の投げの際に実施した回転の価値が認められなかった可能性があるため、これらの精度を高め、小さな価値点を着実に積み重ねていくことが鍵となる。
【鶴田芽生】 総合32位 合計得点96.350
●クラブ DB 6.9 DA 2.7 A 7.250 E 6.100 合計22.950
最終グループの競技は17時開始。観客も増え、会場の雰囲気が賑やかになる中、鶴田選手は17名中15番目に登場した。直前に運営の都合で待機時間が発生し、コンディション調整が難しい状況で出番を迎えた。序盤のエカルテターンを決めて良い流れに乗ったものの、続く大反りジャンプ2回目で足が滑り、ジャンプが不発に。さらにDAやラストのリスクでもキャッチミスが続き、心理的な焦りも影響したのか、キャッチ可能な場面でも落下が見られた。本来の力を発揮しきれず悔しい内容となったが、ノーミスでまとめた際のポテンシャルを十分に感じさせる演技であった。
●リボン DB 6.400 DA 3.900 A 7.200 E 7.300 合計24.800
3種目でのミスを経て迎えた最終種目。プレッシャーのかかる場面ではあったが、大きなミスなく演技をまとめ上げ、鶴田選手の粘り強さが発揮された。冒頭のエカルテターンでは踵がつき、価値が認められなかった可能性はあるものの、一つひとつを冷静に判断しながら演技を繋ぎ、スピード感のある演技で鶴田選手らしさを最後にしっかりと表現した。今大会は悔しい結果となったが、この経験が次の成長につながることを期待したい。今後は、演技の安定性と“鶴田選手らしさ”を同時に発揮できるような表現力の向上が課題となる。
今大会の個人総合優勝はRaffaeli Sofia(ITA)。2位はOnofriichuk Taisiia (UKR)、3位はNikolova Stiliana(BUL)。いずれの選手も小さなミスはあったものの、4種目を通じて高い完成度と明確な個性を持ち、総合的に高く評価された。また、後半種目ではイスラエルやトルコの若手選手が、難易度の高い技への挑戦と勢いある演技で観客の目を引いた。今後の成長が楽しみな選手たちである。日本選手は、基礎に裏打ちされた線の美しさや丁寧な演技が特徴ではあるが、個性や印象の強さという点では、さらなる向上が求められる。今後はノーミスを前提とした演技の安定化に加え、D得点の底上げと、価値点を確実に積み重ねるための高精度な実施力が不可欠である。
【団体】 総合 7位 43.550(1位 BUL 2位 CHN 3位 UKR)
●ボール3+フープ2 DB 5.100 DA 7.600 A 7.200 E 5.050 合計24.950
出場選手:鈴木歩佳、稲木李菜子、田口久乃、西本愛実、花村夏実
日本は14チーム中8番目に登場。前日のリボン5では大きなミスが続いたが、この日は予定通りのメンバー編成で、より落ち着いた様子で演技に臨んだ。冒頭から息の合った動きで丁寧に技をこなしていたが、中盤の交換で手具同士が衝突し、3名が落下。これにより大きな実施減点が生じた。それでも演技の後半はテンポを保ち、最後まで粘り強くまとめた。結果は総合7位。同一メンバーで2種目を行うというイレギュラーな編成の中で、ソフィア大会の経験や合宿での成果を必ずしも十分に発揮できたとは言いがたいが、2大会を通して得た学びは新チームにとって大きな財産となった。
各国ともにソフィア大会から修正を加え、アンサンブル種目の完成度が全体的に向上していた。中でもブルガリアは、極めて高度な技を次々と実施し、ミスのない圧巻の演技を披露した。全体を通じて、芸術性(ダイナミックチェンジや身体表現)の面では、5名全員のエネルギーを完全に揃えていくことは難しく、「作品」としての一体感やテーマ性の伝達には今後のさらなる強化が必要だと感じられた。
明日は、アンサンブル種目の種目別決勝に出場する。この機会を大切に、現時点でのベストを尽くしたい。