2015年版採点規則に関する審判レポート

第67回全日本インカレ大会は2015年版採点規則を採用した初めての大会であり、今後の採点の目安ともなる大会となった。ルール変更に伴う競技上の傾向と審判業務に関する変化、今後現場に伝えていくべき採点上の注意点をまとめた。
1 競技上の変化と傾向
(1)団体競技
新ルールの影響なのか、以前よりさらに難しい技を行うチームが増えている。また、組運動や交差に工夫がみられ、組み合わせ価値の高いものも増えている。ただ転回系に時間がかかるのか、徒手系の動きが減少しているように感じられた。
(2)個人競技
投げ技の数と難度数が増えた結果、演技内容が濃くなったように感じた。上位の選手はそれらをバランスよく配分し、見ごたえのある作品を創り上げているが、中位以下の選手は過去の演技に付け足しただけの作品なのか、構成上ではまとまりを欠き、実施でも演技内容に追われてしまっている傾向があった。また、追加の難度を狙ってよりアグレッシブな演技が増えたが大きなミスも増えていた。
近年、より個性的で観客の目を楽しませる選手が増えているが、表現やダンスといったパフォーマンスに演技内容が偏っており、本来の流れの中での「手具を使った運動」「極限まで動く運動」といった点で、疑問を抱かせる選手が増えてきている。
2 審判業務に関する変化と採点上の注意
(1)採点業務
今大会は5時間以上かけて審判研修を実施した。基本的なルール研修から映像を使った採点実務まで行ったが、それでも実際の採点中に確認しなければならなくなることが何度もあった。
団体は特に変化はないが、個人では各審判がすべての演技を採点するため、そのインターバルが3分弱、一日90名の採点は今までの男子の採点からすると忙しくなっている。しかし慣れてくると、ある一定のレベルを超えた選手であれば採点はしやすくスムーズに行えると感じた。
(2)採点の実際について
<団体>
団体は実質的に大きなルール変更はないが、実施の減点を厳しくし得点に差をつける方向で動いている。今回の傾向は以下のとおりである。
○構成(D)
・減点項目を明示されたためか、旧規則より少し低い点数になった。
・難度の数や“単独で行う”難しい技の有無はあまり得点に影響していない。
・組み合わせ価値の高い技の有無は得点に影響している。
○実施(E)
・転回系の着地減点が厳しくなった結果、特に宙返り転の着地減点が得点に大きく影響した。
・倒立の失敗は以前より大きな得点差となる。
・単独で実施する転回系は減点されやすい。
<個人競技>
旧ルールの10点満点では、構成点と実施点を別々に公表することはなかったため単純に比較することはできないが、旧得点の2倍した点と比べると低い得点になっている。これは実施点が大きく影響している。
○構成(D)
減点項目を明確にしたこと、確認しなければならない難度の数が増えことで、そこに目を奪われがちになる傾向がある。難度と要素だけでなく、その演技全体のバランスやまとまりを見落とさないように心掛けなければ、技の羅列だけの選手に高い点を出すといった間違いに陥ってしまう可能性がある。
・追加の難度による得点への影響は大きい。
・技の組み合わせや、動きと技の流れが優れている選手に高い得点が出た。
・難度以外の部分では実施に影響される部分がある。
・落下による難度の不認定で、追加の難度が少なくなる選手が多かった。
・B難度を取るための技は一瞬で終わることがあるので要注意である。
・技数を増やすために全体の流れが悪くなっている演技は減点をした。
○実施(E)
小さな欠点を見逃さずに減点することで得点に差をつけることが大切である。しかし、減点箇所を探すことに終始し本来一番大切であるはずの「動きの完成度」の採点を見落としそうになることがある。ただ失敗やミスをしないだけの選手に高い得点をつけるのではなく、動きの本質を見極めることが必要である。
・転回中の足割れ、投げ受けの際の一歩の移動は、その都度厳しく減点している。
・ロープのたわみや緩みをしっかりと減点したため、他の種目よりも実施点が低くなった。
・リングのかけっぱなし、ロープの巻き付けっぱなしなど手具の止まる時間が長い選手と動き続ける選手には差がついた。
・・クラブの胴を長時間保持している選手の減点についても行うようにする。
・さまざまな手具操作をしているが、手具の回し、ロープの跳びなどその手具の基本操作が少ない選手には高い得点が出なかった。
・動きの良い選手には小さなミスが多々あり、ミスのない選手は動きに難があるなどで、全体としては高得点を出すことができなかった。
全日本インカレ本当にお疲れ様でした。今後ともよろしくお願いします。
男子新体操委員会審判担当 安福 康夫