全日本新体操ユース男子レポート

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 今大会は、男子新体操(個人種目)が初めて導入される歴史的なものとなり、全国から35人の選手がエントリーして競いあった。いずれにしても、念願であったユースチャンピオンシップ(SASAKI CUP)への男子参加は関係者一同、感慨深いものがある。
 さて、外では大雨の降る日もあったが、上位6位までが全日本選手権へのキップを得ることができることから代々木第一体育館では熱戦が繰り広げられた。第一日目は、前半種目としてリング・ロープの2種目が行われ、予選を勝ち抜いた選手31人が駒をすすめ、最終日第二日目はスティック・クラブの2種目が行われた。
 全体的な印象としては、やはり中学生・高校生という一番成長の著しい時期の選手の大会というだけあって想像もつかない技への挑戦、あるいは一生懸命に動きを工夫した選手が何人もいたのには驚いた。
 タンブリングでも、成長中のパワーを活かそうと、さらに上のランクの技への挑戦には目を見張るものがあった。そんな中、足が割れたり、尻餅をついてしまったりと苦戦していた選手もいた。失敗を恐れず難しい技に挑戦しようとする気持ちは見ていて気持ちがいい。しかしながら基本の身体作りを忘れたり、技への挑戦ばかりにこだわると大きな怪我につながる。是非、監督・コーチの指導のもと、正しい練習計画を立ててほしい。そして今まで出来た基本技の質を極限まで高めた上で、さらに難度の高い技に挑戦して欲しい。全国級の大会上位者の技や表現を真似することは大事であるが、現在 活躍してる選手は中学・高校時代に積み重ねた基礎的な練習があったからこそ今の表現力・技術力があるという事を忘れてはいけない。
 その点、今回の入賞した選手はしっかりと練習を積んだ者が上位に入ってきている。12月の全日本選手権(千葉ポートアリーナ)までの約半年でどのような成長をするか非常に楽しみである。
 そして、次回のユースチャンピオンシップには、今回参加した選手がレベルを上げ、新しい選手が集まり、今大会以上の大きな大会となることを期待したい。
■優勝した青森山田高校 小林翔選手へのインタビュー■
<優勝した感想は?>
優勝するということは滅多にできないことなので優勝が決まった瞬間はとても喜びがこみ上げてきました。SASAKIカップは今年からの大会だったので初代チャンピオンという名誉な証も同時に手に入れることができて逆に自分自身も驚きました。
次の目標
まずはこの大会をステップにインターハイでどれだけ上位にくい込めるかが鍵になると思います。やるからには優勝という二文字の言葉を狙っていきます。ここまでくると、もう周りを気にする必要はないです。敵は自分自身なので、どう自分と戦っていくかが次なる目標です。
<新体操の次に得意・好きなものは?>
何かを作ったりするのが好きです。地元ではよくお菓子を作ったりしていました。その他には映画鑑賞や、やっぱり新体操をしているので新体操のビデオ鑑賞が好きです。
■監督の荒川栄先生にインタビュー■
男子にとって初となるこの大会での優勝は、男子新体操界の軌跡としてその名を歴史に刻めたことに大変うれしく思うとともに、感慨深いものとなりました。初代男子優勝者として小林は今後その責任も感じながら、自らの技術・質向上を目指していかなければなりません。その向上心こそが、今後もこの大会を維持するために課せられた責任として、我々指導者も自覚しなければならないとも感じております。
 
 今回の大会を全体的に分析すると「ミス」が多かったと感じております。それは年度初めの大会だから仕上がりが遅い?という見方もあるかと思いますが、私はもう一つあったと考えております。代々木第一体育館の特徴は天井が高く、手具を投げると見えづらいという独特な会場です。今回その会場対策として「青空練習」と称し外で何本も投げ上げの練習をさせ代々木対策を行いました。このような、対選手の指導のほかに会場との戦いも考えて取り組めたことも小林の勝因の一つといえます。
今回小林は前半2種目(リング・ロープ)の善し悪しにかかっていました。高校総体の今年度の種目でもあるこのリング・ロープで小林は、練習からもミスを連発していました。彼の課題は手具操作。ロープであればまだまだ特性を活かせていないのが彼の弱点でもあります。逆に彼の長所でアピールポイントでもあるのが「柔軟性」。元々柔軟性に優れていた小林を入学当初から青森山田コーチ荒川直美氏が女子の観点も含め徹底して基礎から叩き込み、その基礎に加え我がチーム独自の表現力を高めるトレーニングを日夜積んできたことで弱点をカバーしてきました。現在2年生ということでプランどおりに成長していますが、これからのプランとして引き続き手具操作と、もう一つは下半身強化が課題にあげられます。
本番は前半のリング・ロープでやはり手具操作ミスが目立ち思い通りの力が出せませんでしたが、決勝のスティック・クラブでは柔軟性をいかした大きな動きが思い通りに出せたと思います。
小林はトレーニングを積んでいくと通常の人より筋繊維の破壊が多く進む体質に加え、5つのアレルギーを抱えており、育成に大変難しい選手でもあります。今回もこの大会で4種目を仕上げるほかに、団体レギュラーでもあるため新構成の練習に追われ幾度も体調を崩しかけました。しかし厳しいこの状況を強い気持ち、耐える心で乗り越え、そして見事結果につなげたことは見事な「成長」だと思います。
◇大会記録は別紙(HP)の通り
(財)日本体操協会 新体操委員会副委員長
男子入賞者
写真提供 竹内里摩子