第7回アジア新体操選手権大会レポート4

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<個人総合>
6月13日、アジア選手権最終日は個人総合が行われた。最終日に個人総合のみが行われるのは珍しいことであるが、韓国のスター、Sonの金メダル獲得を狙い、メインイベントにしていると思われる。国別対抗が予選となり、各国最大2名の15名で競うこの個人総合。日本からは早川さくらと皆川夏穂が出場した。

その皆川はフープの種目から。ジャンプでのキャッチが、着地してからのキャッチとなったが、17.050。順調な滑り出しを見せた。

続いてボール。なめらかで伸びやかな転がし。クリアな難度。実施ミスがほとんどないすばらしい演技を続けていたにも関わらず、ラストのDERでキャッチミス。これは予選でも失敗した箇所で、視野外、手以外のキャッチのむずかしい技。予選ではボールが場外にまで転がっていき、手具なしで終えたが、今回はどうにか手近にボールが残り、取り戻してポーズ。16.750。惜しい。惜しすぎるミスであった。

クラブはDERで投げすぎ、キャッチしたが、次のMをやるにはスペースがなかった。冷静に判断し、Mをやらずに次に進めた。ラストのMでも不正確なキャッチとなってしまったが、試合運びとしては良く、17.150

最終種目はリボン。皆川は肩を痛めて、今大会が復帰戦であるが、フープやボールなど重みが感じられる手具より、リボンのように軽い手具のほうが投げ上げるのに肩に負担がかかる。そのせいか投げが定まらない。最初のDERは手元に来ていたが落下。座のブーメランではうまく飛ばずに、足にからまる格好に。ラストのDERでは大きく投げすぎて走ってキャッチ。最終種目で大きなミスが出て15.250。

最後は残念な結果となったが、技の豪快さは全選手中1番であった。また確実に技の精度は上がっているので、肩をしっかりと治し、再調整をしてもらいたい。問題があるとすれば、技をこなすのに精一杯で、まだ表現をするところまで行っていないところ。技をほんの少し抑えてでも、回転数を上げることと、顔の表現を豊かにすることで、点数は上がって行くであろう。

早川はボールの種目から。出だしのMの、ボールの弾みはいまひとつであったが、今日はなんとかキャッチ。しかし、Mの腰でボールを挟む技でワンバウンドの落下。ほかはきれいにおさめて17.350。ミスは出たが、最低ラインはキープした。

クラブはジャンプでの持ち替えが不正確であったが、大きなミスはなく17.550。

リボンでは出だしのDERが真上気味に上がり、中盤のDERは大きすぎたが、どれもうまく対処した。投げが決して良くないのに大きなミスにならなかったのは、評価に値する。こういった試合運びができれば、安定感も増して行くであろう。17.400。

最終種目のフープは、ジャンプの前に、足がフロアーにつっかかる状況になったが、あわてず、しなやかに気品あふれる演技をした。17.600。4種目を通じて落ち着いた演技で、疲労感もそれほど出ず、すばらしい戦いをしたと言えよう。

早川は3位で、種目別決勝に続いて、この個人総合でもメダルを獲得した。早川の作品は、皆川ほどリスキーなものはふんだんには入っていない。しかし、入っていないからこそ、その間を埋めるためには、繊細な動きや足運びが要求される。今大会はたとえローテーションの回転数が少なくなっても、終末は崩れないという姿勢が見え、そういった意味でもうまい戦いをした。

1位は地元韓国のSon。種目別決勝ではクラブ、リボンでミスが出て、全種目優勝はならなかったが、今日は尻上がりに調子を上げてきた。昨日ミスが出たクラブでは、ミスが出た箇所をやらずに(クラブではなく手でキャッチ)失敗を回避した。それほど大きな得点のところではないため、ミスが出るより、難度点が加算されない方を選んだことになるが、このあたりが試合巧者である。全種目18点台に乗せ、圧倒的な強さを見せた。

2位はウズベキスタンのNazarenkova。スタート種目のクラブでは、DERのクラブでのキャッチがうまく押さえられずにクラブがこぼれて17.150と苦しいスタートになったが、他の種目はダイナミックな演技を見せて、銀メダルを獲得した。

Nazarenkovaと早川の点差は0.5。早川がこの点差を埋めるには、ローテーションの回転数を上げていくことと、反り系のジャンプの精度を上げていくことが必要になってくる。

4位はウズベキスタンのSerdyukova。早川と表彰台争いをするライバルと思われていたが、ボール、クラブ、リボン、それぞれに落下があり、4位となった。しかし、ローテーションはすばらしく、難度も見やすいので、今後も早川と競っていく選手には間違いない。

5位はカザフスタンのAshirbayeva。フープとクラブではすばらしい演技を見せたが、後半のクラブ、リボンで落下が出てしまった。

皆川は6位入賞を果たした。

これでアジア選手権が終了。早川は7月にユニバーシアードを控え、皆川もW杯シリーズに出場するが、ハードな大会だっただけに、まずはコンディションを整えたいところである。そして今大会の結果を自信に、より一層、レベルアップをはかってほしい。

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