第31回オリンピック競技大会・新体操団体決勝

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団体総合決勝
波乱の決勝となった。
個人総合決勝と同様に持ち点はなく今日の得点で順位が決定する。
現地リオデジャネイロは雨。リボンには大敵の湿度が影響したのか1種目目のリボン5ではミスが続出した。
1番目に登場したのは予選1位通過のスペイン。
アトランタオリンピック以来のメダル獲得に向けて2分30秒が始まる。サンバのリズムに乗って次々と予定されているプログラムを確実にこなす。ダンスステップコンビネーションで会場が更に盛り上がる。大きなミスなく纏め得点17.800。
2番目はイスラエル。身体難度の実施がやや甘くリボンに張りがないように感じた。演技中盤にリボンを受け損ねるが大きなミスには繋がらなかった。得点17.166。
3番目にはロシアが登場。昨日のミスをどのように立て直すのか、オリンピック5連覇を賭けて選手達には想像を超える重圧がかかっているのであろう。演技冒頭の4本投げを見事に成功させ演技は波に乗ったかのよう思えた。しかし1つ目の交換で落下ミス、その後連係でリボンの跳ね返しが成立せずミスが連発した。MGバランスも流れて形が明確に見えない実施となった。得点17.600。
4番目はイタリア。リボンを額縁にみたて絵画から選手たちが飛び出るような振付からスタート。交換、連係共に移動なく次々と演技が繋がる。しかし、後半の連係で落下ミスが起こってしまった。得点17.516。
5番目はウクライナ。サンバの音楽で会場が沸く。交換は移動がほぼなく成立し、身体難度も5名の選手が確実に行っていたが、後半の連係で落下ミス。ウクライナの演技終了後にコーチがDスコアに対して抗議を行った。6番目のベラルーシはそのまま演技が行われたがベラルーシの演技終了後に競技が一時中断してしまった。抗議の結果D得点に見直しがはいり得点を下げ16.866。
6番目はベラルーシ。身体を芯から動かし身体に張りのある演技に見えたがダンスステップコンビネーションで結び目が出来る。すぐにほどくがその後また結び目ができ、演技終了時まで結ばれたままであった。落下ミスはなかったが結び目が影響し得点17.283。
7番目に日本が登場。ウクライナチームの得点に対して見直しがあったため、競技が一時中断し、なかなかコールがかからず出番を待つ。選手たちは体が固まらないように動き続けていた。この待ち時間が演技に影響しないことを切に願った。
演技冒頭の連係を成功させ続いての交換も移動なくキャッチ。ローテーション難度の際のリボンも良く動いていた。しかし、連係で受け損ねてもたつき、DERの受けも乱れた。湿度の影響でリボンが体にまとわりつく。続いて1名の選手が交換で大きく移動してキャッチし、見せ場であるラストの4本投げが大きく開いて選手達は必至で追いかけた。最後まで諦める事無く最善を尽くした選手達の演技であった。得点は伸びず16.550。
リボン最終演技はブルガリア。リボンを結んで長さを生かした連係からスタート。ライバル国がミスを連発させる中着実に予定されているプログラムをこなし得点を重ねた。予選では引っかかってしまったラストの連係もきちんと形を見せて演技を終了。得点17.700。
リボンが終了した時点でメダル争いの行方がますますわからなくなった。各国のレベルが均衡しているが故に1つのミスで順位が大きく変動する。フープ&クラブの演技はリボン終了後間もなく始まる。ミスが生じたチームはどのように立て直してくるのかハラハラする試合展開となった。
次のローテーションも試技順は変わらず
1、スペイン
2、イスラエル
3、ロシア
4、イタリア
5、ウクライナ
6、ベラルーシ
7、日本
8、ブルガリア
の順で競技が進行された。
スペインは予選から全ての演技をミスすることなく演技を纏めた。工夫された連係を次々とこなしリスキーな技が決まる度に会場が沸く。安定した演技でスパニッシュを演じ切った。素晴らしい演技で得点17.966。
3番目に登場したロシア。選手からは緊張感が漂う。しかし予選の時とは違い割り切った強さを感じた。演技冒頭の連係を成功させ緊張感たっぷりの演技が繰り広げられた。とにかく良く投げる。1つ1つを確認しながらこなしているかのようにも見えた。予定されているプログラムを確実にこなした。凄い精神力である。演技終了時に涙している選手達、コーチ達の様子を見て、重圧がどれほどのものであったのか目頭が熱くなった。圧巻の得点18.633。ロシアの意地を見せこの時点でスペインを上回り首位に立った。
イタリアも手具が手に入っている時間が非常に短い。とにかく良く投げる。最後の瞬間まで連係の投げを行いリスキーな演技構成で18点台にのせる。得点18.033。
続いてベラルーシはフープ&クラブは本来の力を出し切り得点も18点台にのせてきた。イタリアには及ばず得点18.016。
日本はリボンのミスから短時間で見事に立て直した。演技序盤のクラブ4本投げを成功させ演技は波に乗った。少々危ない場面もあったが5人が力を合わせてミスにならないようにこらえた演技であった。得点17.650とこの種目だけでは6位の得点であった。残念であるがこの時点で日本のメダル獲得はなくなった。
メダル争いは最終演技のブルガリアチームまでもつれ込んだ。予選ではミスにより17点台に終わっているチームが18点台を叩き出している。ブルガリアチームもその1つである。予選よりも動きにキレがあり同時性も感じた。予選でミスの出た連係も見事にキャッチし大きなミスなく纏めた。得点18.066。
この時点で順位が確定した。
金メダル ロシア(5連覇)
銀メダル スペイン(20年ぶりのメダル獲得)
銅メダル ブルガリア
非常に見応えのある団体総合決勝であり、5位までは僅差で順位が決定した。日本は8位入賞。
個人競技、団体競技を振り返りオリンピックの素晴らしさを改めて感じた。そして諦めずに最後までベストを尽くす選手達の姿に多くを学んだ。そして、ヨーロッパの国々の層の厚さも実感した。
フェアリージャパンについては今回演技した5名の選手達とフロアには立てなかったが同じ気持ちで最後まで戦った4名の選手達は数々の苦難を共に乗り越えリオデジャネイロオリンピックを終えた。感動をありがとう。
また、特別強化選手として3年間のロシア留学で苦楽を共にした皆川選手、早川選手の頑張りが今後の日本の糧となることは言うまでもない。
そしてこの瞬間、東京オリンピックへの道がスタートした。今大会でメダル獲得は実現できなかったが団体、個人ともに選手達が東京への道を繋いでくれたと確信する。