第35回世界新体操選手権大会レポート3

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【大会3日目】
第35回世界新体操選手権ペサロ大会3日目は、個人総合予選に出場した90名の選手から、上位24名で戦う個人総合決勝が行われた。
《個人総合決勝》
日本から出場している皆川夏穂と喜田純鈴はともに決勝に残り、1位から12位はAグループ、13位から24位はBグループと12名ずつのふたつのグループに分かれての試技である。予選9位の皆川はAグループ、21位の喜田はBグループとなったが、まずはBグループの演技から。
Bグループの試技順1番はジョージアのSalome。独特の世界観を持つ彼女は世界中にファンがいて、今大会でも高い人気を誇った。
Salomeはフープの演技からであったが、故障から復帰したばかりでまだ多くの試合をこなしていないため、試合勘が戻っていないような感じであった。
フープ、ボールそれぞれにもたつきがあり、クラブではなんとかまとめたが16.300。リボンではリボンの足投げで投げすぎてしまい、R(リスク=手具を投げ上げ、2回転以上の回転を行う)で落下。13.900
最後に痛いミスが出てしまった。
アジア選手権を戦ったウズベキスタンのSERDYUKOVAやカザフスタンのASHIRBAYEVAらも、落下などがあり、本来の動きではない。
ウクライナのDIACHENKOは、リボンの種目からであったが、Rで落下して13.450と厳しいスタートとなった。ボールでもラストのRで、足キャッチができずにボールは場外に転がっていき、手具なしでポーズを終えることになった。
同じくウクライナのMAZURも、フープでは15.800、ボールでは15.700、クラブでは15.350と、コンスタントに点数を重ねていたが、最終種目のリボンで脚の下から投げる技でリボンにスティックがからみ、落下。ラストのAD(加点の可能性のある手具操作)でも落下し、13.800。
ルーマニアのFILIORIANUはとても動きがはっきりした選手で、BD(身体難度=ジャンプ、バランス、ローテーション)もカウントしやすい(加算しやすい)。
リボンはRで投げすぎてしまい、やっとのことでキャッチしたこともあって14.800であったが、クラブやフープはともに16.150を出し、Bグループの1位になりそうな状況であった。
そんな中、先に演技を終えたのは日本の喜田。
最初の種目ボールは、予選で、ラストのADで落下ミスし、手具なしで終わった種目。
しかし、この日の喜田は状況判断がよくできており、中盤の回転をしながら腰でボールを挟むADでは、ボールがななめにあがってしまったために、回転自体を行わず、そのままキャッチした。
ラストのADは、今日は決まり、順調なすべりだし。D難度点が7.100でもっとほしいところであったが、E実施点は8.200で15.300。
クラブの種目も、予選では出だしと中盤のADでミスをしているが、今日はそのすべてを修正した。Rの投げが大きくなったが、執着心をもってキャッチ。エカルテやスケールのバランスのFIXが足りなかったがD7.700 E7.850 15.550。
リボンも、予選のミスを修正して落下ミスなしで演技し、D7.400 E8.150 15.550。
そして最終種目はフープ。予選ではすばらしい演技で17.000を出し、種目別決勝7位入賞した種目であるだけに期待が持てる。
その期待どおり、のびやかに演技し、途中スケールバランスの際、フープのまわしにもたつきが出たことで、上体を90度まで倒すことができなかったが、最後のRやADを決め、4種目を落下ミスなく演技した。フープはD8.400 E7.900 16.300
4種目総合62.700でSalomeを抜いてトップに立った。
ASHIRBAYEVAやウクライナ勢も演技を終えてもトップに立っていた喜田であるが、残すはルーマニアのFILIORIANU。最終種目のボールで15.600を越える点数を出せば、FILIORIANUがトップに立つ。
しかしボールは15.525。総合点62.625で0.075足らず、喜田を越えることはできなかった。
喜田はBグループ1位となったことで、13位以内が確定した。
次はAグループ。
ロシアのAVERINA姉妹は金メダル銀メダルを獲得する可能性が高く、残る銅メダルを誰がとるのかが非常に興味深かった。4種目の総合力から判断すると、イスラエルのASHRAM、ブルガリアのVLADINOVA、ベラルーシのHALKINAがメダルに近く、3人とも種目別でメダルを獲得している選手である。
フープで42年ぶりのメダル(銅メダル)を獲得した皆川は、フープ、ボールに比べ、クラブ、リボンの完成度が低いことから、入賞ライン(8位)を目標とした。
銅メダル争いから最初に離脱したのはブルガリアのVLADINOVA。得意のボールで、投げが乱れて視野外、手以外、座のキャッチがやれず。16.400と苦しいスタート。クラブでもADのクラブを脚で打ち上げる技で落下。ラストのRも投げが乱れて、回転をしてからキャッチまでに間ができてしまう。16.500。
リボンもADの足投げで落下。16.450
Bグループと比較すると点数は出ているが、良い演技のときには通常17点台後半を並べる選手なので、この点数ではメダルには手が届かない。
最終種目のフープで18.200を獲得したが、他の種目が悪すぎた。
総合点67.550
次に崩れたのはベラルーシのHALKINA。リボンを17.000、フープを17.700とまとめてきたが、ボールの種目でミスが出た。
足首のところでボールをはさみ、パンシェのローテーションを行って会場を沸かせたところで、ボールが足首から外れ、大きく転がってしまう。そこからはミスはなかったものの、D8.200 E7.900 16.100。
自国のD得点に納得がいかない場合のインクワイヤリーを提出したが、結果はくつがえらず、16.100のまま。クラブの種目で18.200を出し総合点69.000となったが、ひとつのミスが結果を左右した。
メダルを獲得したのはイスラエルのASHRAM。リボン、フープ、ボールと大きなミスはなく、最終種目のクラブのRで落下したが、70.025で銅メダルを獲得した。
1位はDina AVERINA。どの種目も不安定な箇所が多く、本来の力は出し切れていなかったが、対応力の良さと、もともと構成上入っている得点源の高さで金メダルを獲得した。
2位はArina AVERINA。
最終種目のフープではあぶない箇所も多くあったが、なんとかしのいだ。
地元イタリアのAGIURGIUCULESEはクラブで落下して16.700。リボンの種目も投げがまったく安定せず、Rのたびに、投げのコースが戻る形になり15.350。フープから息を吹き返し、大きなミスはなく17.600。最終種目のボールも17.800という高得点で、割れんばかりの歓声を受け、総合点67.450。8位入賞となった。
そして日本の皆川は、最終演技者。
皆川はあまり得意ではないリボンの種目からであるが、なんとかまとめた。
途中リボンを引き戻してキャッチする際、スティックが床を這うようにしてキャッチしたため、落下とみなされたと思われる。
D7.600 E8.425 16.025
これまでの大会と比べれば16点台が出たのは良い方である。
次はフープ。
ミスなくやれれば高得点が期待できる種目である。
軸回転をともなった足投げが乱れ、もぐり回転でのキャッチとはならなかったが、ていねいに美しく演技して17.500(D8.800 E8.700)。
ボールは首の後ろでキャッチした後、ポトリと落下するミスはあったが、ワンバウンドですばやく対処し、その後に影響させなかった。16.950(D8.600 E8.350)。
最終種目はクラブ。予選で落下ミスが出た種目であるが、皆川は大技小技織り交ぜ、軽快に演技した。最後までよくふんばり、17.950という高得点(D9.300 E8.650)。
総合点68.425。
皆川はなんと5位入賞を果たした。
1位Dina AVERINA(ロシア)
2位Arina AVERINA(ロシア)
3位ASHRAM(イスラエル)
4位HALKINA(ベラルーシ)
5位皆川夏穂
6位ZENG(USA)
7位VLADINOVA(ブルガリア)
8位AGIURGIUCULESE(イタリア)
・・・・・
12位喜田純鈴
皆川は少々ミスは出てしまったが、作品がこわれるほどのミスではなく、最小限にとどめた。膝や足の故障があったが、優雅に舞い、新体操のすばらしさを見せてくれた。
フープの銅メダルといい、個人総合での5位入賞といい、予想をうわまわる結果で、そのがんばりに敬意を表したい。
また喜田は、AグループのHARNASKO(ベラルーシ)がミスを重ねてしまい、ひとつランクを上げて12位に。世界選手権初出場で12位という、こちらもすばらしい結果を残してくれた。
しかし、戦いはまだ始まったばかりである。やっと戦えるスタートラインに立てたとも言える。常に入賞ラインに、そしてメダル争いができるようにするために、まずはコンディションを整え、努力を重ねていってほしい。
明日は、団体総合が行われ、日本からはフェアリージャパンPOLAが出場する。