イオンカップ2017世界新体操クラブ選手権レポート

報告者:藤野朱美

イオンカップ2017世界新体操クラブ選手権が9月28日(木)~10月2日(日)まで東京体育館で開催された。
10月1日(土)と2日(日)に決勝が行われた。
クラブ対抗戦は2名のシニア選手と1名のジュニア選手の4種目合計得点で勝敗が決まる。
第1ローテーションにジュニアの選手が登場、その後第2ローテーション、第3ローテーションでシニアの選手が登場した。
クラブ対抗戦、見事優勝の座に輝いたのはGazprom (RUS)。
2位に大差をつけての優勝であった。
2017年世界選手権大会覇者のDina AVERINA選手は女王の貫録ある演技を魅せた。個人選手唯一4種目全て18点を超える高得点を獲得。息つく暇もなく次々と演技が展開するが、手具も身体もコントロールする力が群を抜いており演技にぶれが見えない。スピード感ある演技にもかかわらず、丁寧な技のこなしや動きのスムースな繋がりなど余裕と熟練度を感じた。クラブの演技のみ落下ミスが生じたが、他の3種目は会心の出来栄えであった。ボールではDスコア10点を叩き出した。
Yulia BRAVIKOVA選手はエネルギッシュで存在感のある演技を観客に披露した。柔軟性に優れており、特に肩関節の柔らかさには会場からため息が聞こえた。間髪入れずに次々と手具の要素を演技に組み込み、ミスなく行う集中力に脱帽する。柔軟性に優れていながらも、スピード感とメリハリのある演技をこなすBRAVIKOVA選手。長い時間をかけて、絶え間ぬ努力を積み重ねた証であることは間違いない。4種目大きなミスなく纏め上げた。
ジュニアのAnastasia SERGEEVA選手はシニア選手に引けを取らない表現力で彼女の存在感を十分にアピールした。演技構成にジュニア選手には必須でないAD(手具の加点要素)を数多く取り入れ難易度の高い技を次々とこなす。残念ながら2日目は少しミスが目立った。
3名の個性豊かな選手達はそれぞれの作品のテーマに沿ってフロア上で華やかに舞った。
難度要素の実施が非常に明確で、申告書がなくとも1つ1つの技がはっきりと評価できるのであろう。次々と世界チャンピオンを輩出するロシアの層の厚さを改めて感じた。
2位はGarmonia Elit (UZB)。
3選手共にピボット難度の高速回転に会場が沸いた。日本が今後もアジアで戦っていかなければならない選手達である。
ジュニア選手のTakhmina IKROMOVA選手は非常にチャーミングで、身体能力の高い選手である。柔軟性にも優れており動きに品格を感じた。動きの繋ぎで少し間が感じられる場面もあったが丁寧に手具を扱い基本に忠実な演技であった。
Sabina TASHKENBAEVE選手はどの種目も音楽と振付がマッチしていた。演技の随所にAD(手具の加点要素)を組み込み表現力豊かに演じた。とにかく演技中の身体難度が明確でぶれない。動きの繋ぎが更にスムースになると更に得点が伸びるのであろう。
Nurinisso USMANOVA選手は回転難度やリスク(手具を投げ上げ2回転以上の回転要素を行う)の実施にブレがない。バックルのバランスピボットなどはまさに高速回転であり、彼女が回転難度を披露するたびに会場が沸いた。
9月28日の予選から10月2日の決勝までの4日間、集中力を切らすことなく演じ切ったのは素晴らしい。特に決勝では3名の選手が大きなミスなく演技を終え、総合力で獲得した2位を称えたい。
3位はAEON (JPN)。
日本チーム初の表彰台に会場が歓喜にあふれた。
ジュニア選手の小池夏鈴選手。1種目目のボールから非常に落ち着いた面持ちでプログラム通りの演技をこなす。身体難度も明確に見え非常にクリアな演技であった。 フープも会心の出来映えで決勝1日目を終える。リボンでは演技序盤に小さい結び目が出来てしまったものの、リボンの軌跡をしっかりと描き続け大きな減点に繋げる事無く最後まで耐えた。リボンの先の小さい結び目は演技に影響しなければ大きな減点には繋がらない。最終種目クラブの演技をミスなく纏める。小池選手の安定した4種目の総合得点が大きくチーム対抗3位獲得に貢献した。大健闘であった。
立澤孝菜選手はリボンからのスタート。リスクの手具の軌道が曲がったがそこは大きなミスに繋がらず処理。しかし次のブーメランで落下、リズムを崩してしまったのか演技中盤の背面受けでも落下。緊張からなのか体の動きとリボンの動きがずれていた。得点12.600と少し出遅れてしまった。しかし、次のクラブではリボンのミスを挽回する。ヒヤッとする場面はあったがよく耐えた。立澤選手の可動域を存分にアピールしたパンシェのローテーション難度は見事であった。実施を8点台にのせ得点15.550。
ボールは、流れるような動きの中で次々と技を成功させる。ローテーション難度も軸がぶれる事無く完璧であった。演技終末のリスクもぴたりと決めて会場が沸く。立澤選手の長所がさらに強調される出来栄えであった。
フープでは演技中盤のリスクで落下ミスが生じた。惜しいミスであった。落下ミスが生じるとそれぞれの審判団から減点が生じてしまうので減点が大きくなる。Dパネルでは難度要素の加点がなくなり、Eパネルでは芸術と技術のそれぞれの審判から減点となる。ミスの度合いにもよるが1点程度はすぐに左右される。落下ミス以外はいい出来栄えであっただけに悔やまれる。
2日間の演技を通して着実に力をつけている立澤選手を感じた。試合後の会見で、自身の長所をしなやかな動きと、手先、足先が美しく使えるところと言っていたようにそれは十分今大会でアピール出来た。動きの繋ぎがスムースになり、身体で音楽を表現し、更に手先足先の美しさが強調されていた。また回転難度の精度は今春の大会よりも格段に上がっている。
今年最後の試合である全日本選手権ではどのような演技を魅せてくれるのか楽しみである。
そして、今大会一番大きな声援を受けていた、世界選手権42年ぶりのメダリスト皆川夏穂選手。1種目目のボール。しなやかに、美しく音楽に乗って演技が始まる。演技前半、リスクの背面足受けでボールが跳ね返りボールは場外へ、会場がざわめいた。その後、バランス難度でもポロリと落下があり得点13.600と大きく出遅れた。しかし、フープは大きなミスなく纏め、1種目目のミスを引きずらず短時間で気持ちを立て直した。バランスで多少のぐらつきがあったものの、最後まで演技をやりきる気迫が伝わる演技であった。Eスコアは8.700と高得点をマーク。得点16.800。
2日目のリボンでは17.150と高得点を―マーク。ピアノの繊細な旋律にのせてエレガントに舞う。プログラム通りの演技をこなし大きなミスなく纏め上げた。
クラブではヴォーカル入りの音楽に乗せて表現力豊かに演じた。演技終盤のクラブをジョイントさせて背面で転がしながら受け取るADで落下。Eスコアは8点に乗ったが、Dスコアが伸びず得点15.600。ボールでの大きなミスがあったが3種目で安定した得点を出しチームとして見事3位入賞を果たした。皆川選手のダイナミックで美しい演技が世界で高い評価を得ている事を再確認できた大会であった。
そして、今大会日本のチームが大健闘であった。
5位にはエンジェルカガワ日中丸亀が見事入賞。ジュニアの植松智子選手、シニアの桜井華子選手、喜田純鈴選手、諸外国の選手に負けない存在感で堂々と演じ切った。
また、決勝ラウンドには駒を進めることはできなかったが、予選ラウンドで見事5位につけた、安達新体操クラブ(田村選手、石井選手、堂園選手)の健闘も称えたい