第1回世界ジュニア新体操選手権3日目報告3

報告者:山﨑浩子

現地7月21日、第1回世界ジュニア選手権最終日は個人と団体の種目別決勝が行われた。

<個人ロープ>
ロープの1位はロシアのSIMAKOVA Anastasia
D難度点11.400(D1 5.0 / D3 6.4)E実施点 9.200(EA -0.3 / ET -0.500)計 20.600
*D1はBD(身体難度)とS(ステップ)
*D3はAD(加点対象となる手具操作)とRリスク(手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う)
*EA(実施の中の芸術点の減点)
*ET(実施の中の技術点の減点)
ロープに張りがあり、まったくといっていいほどたるみが見えなかった。投げに対する反応も良かった。

2位はイタリアのRAFFAELI Sofia
D 10.700( 4.2 / 6.5)E 8.350( -0.6 / -1.050) 計19.050
身体や手具のさばきがうまく、一度は10.000で表示されたDは、インクワイヤリーが出された結果、10.700まで上がった。

3位はアゼルバイジャンのJALILOVA Arzu
D  9.000 ( 3.9 / 5.1)E 8.400( -0.6 / -1.000)計 17.400
BDやADをふんだんに行いながらも表現力が豊かで、観ていて非常に面白い。
久しぶりに新体操を観ていて表現力を感じた選手である。

<ボール>
ボールの1位はロシアのKRAMARENKO Lala
得意のパンシェのローテーションはかかとをつけてのものであったが、全体的に安定感を感じさせた。
D 12.400( 5.7 / 6.7)E 9.125( -0.4 / -0.475) 計 21.525

2位はアゼルバイジャンの JALILOVA Arzu
D 10.800( 3.9 / 6.9 )E 8.400 (-0.7 / -0.900) 計19.200
この種目もすばらしい表現力を見せ、その上にBD、AD、Rを乗せてくるので、観ていて引き込まれていくようだ。

3位のイスラエル BLOCK Nogaも表現にも力を入れている。
D 10.800( 4.0 / 6.8)E 8.150( -1.0 / -0.850) 計18.950
イスラエルの選手は技は巧みでも、動きが機械的な選手が多いが、彼女の場合は動きもしなやかであり、非常に良い選手である。

<クラブ>
クラブの1位はKRAMARENKO Lala
Rの投げが戻ってしまい、何もしないでキャッチする場面はあったが、ドゥミポワントでのパンシェローテーションを6~7回転、バックルでのパンシェローテーションも5回を数えた。
D 11.800( 6.3 / 5.5)E 8.950( -0.4 / -0.650) 計20.750
シニアより2個少ないBDで6.3を獲得しているが、シニアになれば7点を超えることになる。

2位はイタリアのRAFFAELI Sofia
脚の下でのキャッチで落下があったものの豊富なAD数で2位に食い込んだ。
D 11.300( 4.3 / 7.0)E 8.150( -0.5 / -1.350) 計19.450

3位はイスラエルの KATZ Adi Asya
D 11.000( 5.0 / 6.0) E 8.250( -0.8 / -0.950) 計19.250

<リボン>
リボンには日本から喜田未来乃が出場したが、どの投げも不安定となり、幾度もキャッチをこらえていたが、我慢できずに落下。
総合の時のような出来とはいかずに8位。
D 7.700 (3.9 / 3.8)E 6.750( -1.0 / -2.250) 計14.450

リボンはどの選手もミスが続出。
総合の時にミスが出てしまったロシアのSERGAEVA Dariiaは、総合時のミスの箇所は回避したが、別のRで投げが大きくなる。
不正確なキャッチをしたあと、体勢を崩して膝から崩れ落ちる。
他の箇所はうまく乗り切ったが、
D 9.200( 4.5 / 4.7) E8.450( -0.4 / -1.150) 計17.650

総合では、イタリアが同じような点数をとっているだけに優勝が危ぶまれた。
だが、イタリアのRAFFAELI Sofiaは後半に結び目ができて予備手具に差し替え。ラストのADでは連続で落下があり7位に沈んだ。

2位にはイスラエルの KATZ Adi Asyaが、3位にはスペインのSOLAUN Salmaが入った。

<団体種目別決勝フープ5>
1位はロシア。
D 17.600( 5.8 / 11.8)E 8.650( -0.4 / -0.950)計 26.250
投げに対する体のこなしがうまく、多少の投げの乱れはうまく対処していて、がたつきが見えない。

2位はイタリア
D 17.200( 5.4 / 11.8)E 7.900 ( -0.6 / -1.500) 計25.100
テーマがしっかりとしていて構成も見やすい(連係の数、加算点をカウントしやすい)。

3位はベラルーシ
D 16.800( 5.4 / 11.4)E 7.850( -0.6 / -1.550)計 24.650
大きなミスなく、美しく演技。

<団体種目別決勝リボン5>
ここまでミスなく演技してきたロシアであるが、最終演技でフェッテバランスの前にリボンに結び目ができてしまう。
団体の場合、結び目ができるとBDとSがカウントされないため、フェッテバランスをあきらめ、すばやくほどく。
かしこい対応で、被害を拡大させず、
D 13.400 (5.4 / 8.0)E 8.050( -0.4 / -1.550) 計21.450

2位はベラルーシ
D 12.400( 5.1 / 7.3)E 7.150( -0.8 / -2.050) 計19.550
後半、落下気味の箇所あり。

3位はイスラエル
D  11.600( 4.0 / 7.6)E 7.400( -0.7 / -1.900) 計19.000
大きなミスはなかった。

終わってみればロシアの完全優勝で幕を閉じた第1回世界ジュニア選手権。
難度点をしっかりと獲得しながらも、大きさやしなやかさなどもあり、やはり圧倒的な力があると言えよう。
また演技の合間に、小学生ぐらいの少女たちが短い時間の演技をするのであるが、どの子をとっても美しく身体難度もすばらしい。
人材の宝庫で、その中から選りすぐられたわずかな選手が大きな舞台で演技できるのであるから、その強さは今後も続くであろう。

一方、他の国も個人にしろ団体にしろシニア選手よりも良いと感じられる選手が多かった。
来年はシニアに上がる選手も多く、オリンピック出場を果たすのはいまここにいる選手ではないかという予想が膨らむほどであった。
日本は、シニアの強化は行っているが、ジュニア団体は強化体制を敷き始めたばかり。ジュニア個人にいたっては何も行っていない現状。
プレ
ジュニア、ジュニア選手の段階的な育成を行っていかなければと強く感じた大会であった。

今大会に使用された会場は、華美な装飾が施され、廊下の壁面にはロシア新体操のメダリストたちの写真が飾られ、タッチパネルでは映像や新体操クラブの案内が表示され、まさに新体操仕様。
第1回の世界ジュニア選手権を行うのにふさわしい場所であった。

世界ジュニア選手権は2年に一度行われることが発表されたが、そこをめざしつつも、ジュニアに力が入りすぎて、心と体が壊れてしまわないよう、シニアでの活躍を見据えた育成・強化が重要であると考える。

終わりに、現地まで応援に駆けつけてくださった方、日本で応援してくださった方、常日頃からサポートしていただいている方々に、この場を借りて御礼申し上げたい。

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