第16回アジアシニア新体操選手権大会レポート①

報告者:清水花菜(新体操強化本部)

5月2日〜4日、シンガポールにてアジアシニア新体操選手権大会が開催された。今大会には、個人シニア45名、団体10カ国が出場。日本からは、団体に日本女子体育大学、個人に松坂玲奈選手と喜田未来乃選手が出場した。本大会は、個人競技において8月にブラジルで開催される世界選手権の出場枠を懸けた重要な大会であり、予選4種目(フープ・ボール・クラブ・リボン)の計8演技の合計得点で出場枠が決定される。

5月2日 個人予選・前半種目(フープ・ボール)
【喜田未来乃】 1日目 8位
●フープ DB 8.000 DA 3.400 A 7.650 E 7.600 合計26.650
試技順2番目という緊張感の中での演技となったが、一つひとつの要素を丁寧に実施し、落ち着いてミスなく演技をまとめ上げた。喜田選手の持ち味であるダイナミックな動きが音楽を引き立て、作品としての完成度を高める演技であった。
今年度はソフィアWC・バクーWCの2大会に出場し、演技構成の見直しや表現面の強化に取り組んできたが、その成果が随所に表れていた。DAは今一歩伸びなかったものの、基準に対する実施の甘さが影響しており、今後は確実に評価される実施精度をさらに高めていくことが課題となる。
●ボール DB 6.700 DA 3.200 A 7.450 E 6.650 P 0.300 合計23.700
冒頭の打ち返しによるDAを力強く決め、良いスタートを切った。しかし中盤のリスクで投げがやや大きくなり、足キャッチを試みたもののボールがフロア外へ。場外ミスが大きく得点に響いたが、最後まで集中して演技をまとめた。フープがうまくまとめられたことで気持ちが先行してしまい、身体の動きと手具操作のスピード、力のバランスがうまく噛み合わなかった印象も受けた。明日の後半種目では気持ちを新たに、喜田選手らしい演技を披露してくれることを期待したい。

【松坂玲奈】 1日目 4位
●フープ DB 7.500 DA 3.600 A 7.750 E 7.300 合計26.100
松坂選手は4番目に登場。ウズベキスタンWC終了後、高得点を目指してリスクすべてを見直し、ステップも審判からのアドバイスをもとに音楽との調和を意識した表現へと強化して本大会に臨んだ。
演技は冒頭から力強く、スピード感があり、身体難度も非常にクリアに実施されていた。しかし、最後のリスク(価値1.0)でフープを足で蹴り上げた際に軌道が乱れ、キャッチミスによる落下が発生。これが大きな実施減点となり、得点は26.100にとどまった。ミスがなければ27点台も十分に狙える手応えのある内容であった。

●ボール DB 7.400 DA 3.600 A 7.750 E 7.550 合計26.300
気持ちを切り替えて臨んだ2種目目。冒頭から安定した実施を見せ、ハサミジャンプから背中打ちのDAでは会場から大きな拍手が送られ、勢いに乗ってパワフルな演技を披露した。中盤の足蹴りによるリスクではややブレが見られたものの、落下は回避。最後のリスクでは投げが予定より短くなったため、とっさに「3回前転」から「2回前転+後転」へと変更する判断で、ミスを最小限に抑えた。経験に裏打ちされた対応力であった。明日の後半種目では、さらに落ち着いて、より高精度な演技へのチャレンジが期待される。

個人予選・前半種目 上位選手
1位:SARANTSEVA Anastasiya(UZB)
2位:IKROMOVA Takhmina(UZB)
3位:MEEZHANOVA Aiym(KAZ)
1位のSARANTSEVA選手は高校生ながら、スタイル・身体能力ともに優れ、高得点のリスクにも果敢に挑戦するダイナミックな演技が印象的であった。2位のIKROMOVA選手は、4月末のタシケントWCで個人総合優勝を果たしており、音楽に対する表現力や実施度がさらに向上している。軸の安定感もあり、ローテーションも確実に決めていた。パリ五輪7位入賞者のWANG Zilu選手(CHN)は、ミスが響き10位と出遅れたものの、その動きの洗練された美しさは健在であった。

【団体】 1日目 4位(1位 KOR 2位 KAZ 3位 UZB)
●リボン5 DB 3.90 DA 5.00 A 6.600 E 6.000 P 0.050 合計21.450
出場選手:二木乃愛、木村美結、村国野乃花、中村林伽、東愛梨
日本からは、日本女子体育大学が代表として出場。3月の国際大会派遣選手選考会で1位となり、今大会に臨んだ。後半Bグループの1番目に登場。国際大会が初となる選手が多く、緊張感も大いにあったが、音楽が流れると5人の息を合わせて演技を開始。マダム・バタフライの曲に合わせて美しく演じた。中盤のリボンを腹部に巻き付けながらのCCにおいて落下(0.7)があったものの、演技全体への影響は最小限にとどまり、後半も落ち着いて実施することができた。リボン種目は今大会でも多くの国が苦戦していたが、日本は丁寧な動きと美しさを武器に、現時点での力をしっかりと発揮。精度の高い実施を通じて、日本らしい魅力を鮮やかに印象づけた。

明日は、個人競技の後半種目(クラブ・リボン)、団体のアンサンブル種目(ボール3・フープ2)が行われ、個人・団体の総合順位が決定する。選手たちのさらなる健闘が期待される。

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