第13回アジアジュニア新体操選手権大会レポート④

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◆個人種目別

<HOOP>
*1位 LYSSOGOR Veronika (KAZ)    14.600
身体難度の崩れもなく、ノーミスの演技で今大会最高得点を叩き出した。
ローテーション(ピボット)が得意な選手だが、ただ回転数が多いだけではなく、回転の終末に形をもう一度ハッキリアピールして終わっているのが目に焼きつき、同じ回転数であったとしても残る印象は他選手と全く異なるように感じる。そして、見ている者が目が離せなくなるほどに魅力的な彼女の視線は、採点競技の新体操においてとても大切な武器である。

*2位 SHOMURADOVA Nilufar (UZB)    14.250
ジャンプの開脚度が甘く、DERの受けがいつも途切れる印象を受けた。しかし、難しい手具操作に挑戦している演技内容は面白く、今後安定していけば間違いなく点数を伸ばしてくるだろう。

*3位 MAINOVSKAYA Yelizaveta (KAZ)    13.950
ジャンプ中のフォームの大きさにやや欠けるものの、予選の時よりも確実な身体難度を実施し3位につけた。

*4位 五十嵐 遥菜    13.350
予選の時よりもやや小さくまとまった印象はあったが、最後の種目をノーミスでやりきった。彼女は他選手に比べ柔軟性に富んでいるわけではない。しかし、試合で自分の力を発揮する本番強さや軸の強さを兼ね備えている。そして、彼女がハツラツと踊る姿はとても華があるように感じる。今後彼女が自分の良さに磨きをかけていったとき、今以上のレベルアップが期待出来るだろう。

*7位 立澤 孝菜    12.650
体の動きもよく、やりきるという強い意志も感じられる演技であったが、その思いとは裏腹に、体と手具とのタイミングがうまく合っていないように感じた。
アチチュードターンでの手具の乱れ、DERでの受けそこねが点数に響き7位に終わった。

<BALL>
*1位 SHOMURADOVA Nilufar (UZB)    14.600
身体難度のフォームの美しさが際立っていた。
今後投げの受けがスムーズになれば、作品としての流れも良くなりE得点も上がることが期待出来るだろう。

*2位 DAVLYATOVA Anora(UZB)    14.200
スタートから難しいDER(おしり回り3回転目、回りながらキャッチ)を決め、流れを掴んだ。曲の使い方やアクセントのつけ方が上手く、彼女独特の間の取り方はもはやジュニアのレベルを超えているように感じるほど、心揺さぶられるものがあった。

*3位 MAINOVSKAYA Yelizaveta (KAZ)    14.100
大きなミスはなかったものの、難度に乱れがあった。また、不安が見え隠れするような流れの悪い演技は、壮大な曲のボリュームに合わない印象を受けた。

*5位 立澤 孝菜    13.550
ジャンプ中のつきのキャッチで移動、DERが真上に上がってしまうなど完璧な演技ではなかった。しかし、1日~3日の試合では見せきれなかったパンシェピボットをしっかり回りきる意地を見せた。このように試合の中で確実に実施できる難度を増やしていくことは、選手にとってとても自信になることであり、上を目指していく上で重要なことであるように思う。

*6位 鈴木 歩佳    13.200
終末動作が弱くなってしまう彼女の身体難度は正確さを欠き、D、E共に点数を伸ばすことが出来なかった。しかし、予選の時には出来なかったM(マステリー:難しく、オリジナリティーな手具操作)を全てやりきる強さを見せ、会場を沸かせた。

<CLUB>
*1位 TAI Olivia(MAS)    14.500
地元マレーシアの歓声を味方に付け、身体難度を確実にこなしていくノーミスの演技で、個人総合に続き2つ目のメダルを手にした。

*2位 MAINOVSKAYA Yelizaveta (KAZ)    14.350
ミスのない勝負強さを3種目目においても見せつけた。また、彼女のキレのあるステップは毎回手拍子が沸くほど魅力的であり、一つのアピールポイントでもある。

*3位 DAVLYATOVA Anora(UZB)    14.300
2つ目のDERで乱れがあったものの、最後まで力が衰えることのない迫力あるある演技で3位に入った。

*3位 立澤 孝菜    14.300
最高潮に疲れを感じるであろう3種目目のクラブにおいて、国別対抗に続く2つ目の銅メダルを獲得。アチチュードピボットがやや不十分に思えたが、とても力を感じる演技であった。

<RIBBON>
*1位 立澤 孝菜    14.300
他選手がミスをし点数を伸ばせないでいる中、立澤選手は最終種目とは思えないほど力強く、今大会最高の演技を披露し初の金メダルを手にした。
今後この強さを確実なものにし、全体のスピード感やメリハリをつけていけば、このメダルの色を狙い、自分の力で取りにいけるようになるだろう。

*2位 TAI Olivia(MAS)    14.150
終始リボンが近く、動きや難度の終末にリボンを踏む場面が何度も見られ、サンバのリズムに乗り切れなかったのが残念である。

*3位 DAVLYATOVA Anora(UZB)    13.900
スタートの持ち替えでミスをした後も、不確実な操作が続くなど実施減点を重ねた。今後演技のつなぎがスムーズになれば、流れも見栄えも良くなるだろう。

*7位 鈴木 歩佳    13.400
DERの受けで少し体に触れる場面があったものの、今大会の最終演技者にふさわしい晴れ晴れとしたノーミスの演技でラストを締めくくった。
試合全体を通し大きく崩れることのなかった鈴木選手の“こらえる力、まとめる強さ”は、世界と戦う上でとても重要である。
これから基礎の徹底に力を注ぐと共に、今の鈴木選手だからこそ似合う、鈴木選手にしか出来ない演技を作り上げてほしい。

今大会が公式海外戦デビューとなった日本の選手たちだが、緊張感やプレッシャーと戦いながらよく頑張り抜いたと思う。そして、前回のアジアジュニア大会よりも多くのメダルを獲得できた事は嬉しい事実である。
しかし、試合全体を通しパーフェクトに踊りきった選手がいないのも事実である。オリンピックや世界選手権ともなれば、何度も試合を勝ち抜いていかなければならない。その中で上位に入り込む為にはレベルアップは勿論のこと、自分の力をコンスタントに出し切れるだけの精神力、技術が必要となってくるだろう。
その為にも今大会の経験を生かしながら、今後どのような状況、環境においてもパーフェクトな演技を目指し、試合での戦い方を身につけていって欲しい。シニアになってからではなく、ジュニア期から身につけていくことで将来大きな意味を持つようになるだろう。

今回開催国であったマレーシアの成長は著しく、その活躍は誰もが驚くものであった。聞くところによると、マレーシアの個人選手はナショナル入りしてから6年目になるという。午前中しか授業を受けず、午後からは5人のロシア人コーチ(内2名がバレエのコーチ)の指導の下練習し、海外試合へも何度も足を運び失敗や成功の経験を積み重ねているという。
現在ウズベキスタン、カザフスタン、中国だけではなく、ほとんどの国でジュニアからシニアへの一貫した強化が進んでいる。そのような中で、長年日本の課題であるナショナル強化をどのように進めていくのかを本気で考えなければ、今後日本が大きな成長を遂げることは難しいだろう。
しかし、今大会で証明出来たように日本ジュニア選手の実力は確かなものである。この手応えを希望に変え、理想に近づけていけるよう強化に取り組んでいきたい。

報告:村田由香里
たかな表彰式2真ん中:種目別リボン優勝 立澤孝菜

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