イタリア国際(女子)大会報告

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 選手団は、3月24日成田空港に集合し、イタリアに向け出発した。選手団監督 菅原寛(女子体操競技委員会副委員長/戸田市スポーツセンター)コーチ、ビクトル・ラズモフスキー(女子体操競技委員会/OSTC大泉スワロー体育クラブ)大野和邦(池谷幸雄体操倶楽部)坂本周次(女子体操競技委員会/レジックスポーツ)審判 山田まゆみ(審判委員会女子競技部本部長)選手 谷口佳乃(戸田市スポーツセンター・中2)村上茉愛(池谷幸雄体操倶楽部・中1)笹田夏実(OSTC大泉スワロー体育クラブ・中2)寺本明日香(レジックスポーツ・中2)杉村美奈(レジックスポーツ・中3)。総勢11名は、ALITALIA航空にて13時間の飛行後、ローマに到着、国内便に乗り継ぎ1時間の飛行の後、ベニス(ヴェネチィア)に到着。宿舎に到着したのは、現地時間で午後11時をすぎていた。気温16度、時差日本時間マイナス8時間。思っていたより暖かい気候だった。
■3月25日(木) 練習日
 遅い朝食のあと皆で近くを散歩した、ホテルから5分程歩くと大きなビーチがあった。ホテルは、JESOLOという所にありここは、リゾート地として、夏は賑わう所らしく、まだシーズンには早いが、いろいろなお店が道の両サイドに立ち並んでいる。観光地ヴェネツィアまで車で1時間ほど離れている。昼食をとり、1時40分バスに乗り体育館に向かった。5分程の所に今回大会が開催されるPALATURISMO体育館があり、ホテルから徒歩でも15分程度の距離だった。器具は、GYMNOVA。会場は、3方が観客席となっていた。
 日本は、跳馬からの練習。ジュニアチームは、日本、ロシア、イギリス、そして地元のイタリアの4チーム、個人のMIXチームにアメリカ選手が二人いた。器具慣れも含め35分のローテー練習。皆、時差ぼけもあるがまずまずの動きだった。段違い平行棒は、寺本明日香選手のみ演技になったが他の選手は、演技にならなかった。平均台はまずまず、床は固くアクロバットについて問題が残った。審判の山田先生からも助言を頂き大変参考になった。シニアの練習が私達の後行われた。
 シニアチームは、アメリカ、ロシア、イギリスそして地元のイタリアの4チームだ。アメリカは、床からの練習だった。あまりのパワーに圧倒された。練習が数分あり、しばらくの静寂の後、全員の選手がフルで全習をしてくれたのには、びっくりしてしまった。監督のマルタ・カロリーさんが目を光らせ、男女数人のコーチングスタッフが見守る中、跳馬などは5人の内4人の選手がユルチェンコの2回ひねりという強さだった。段違い平行棒、平均台も最初からどんどん演技練習をする、又、選手が途切れる事なく器具に飛びついていく姿は圧巻で、さすが世界のトップエリート集団であると思わせた。ロシアチームも負けては、いなかった。充分アメリカを意識した選手構成である。段違い平行棒、平均台においては、ロシアチームの方が勝っているとも思えた。アメリカとロシアのロンドンオリンピックへの戦いは、もうこの当たりから始まっているようだった。
■3月26日(金) 練習 (試合前日)
 今日はジュニア、シニア共に午前、午後2回の練習が組まれていた。午前中20分ローテーション練習、日本チームは、序々に器具にも慣れて来ていたが、アジアジュニア大会で優勝した時の状態からいうと70点ぐらいの出来だった。
 イタリア、イギリス、ロシアチームの動きを見る。やはり体操の本場ヨーロッパだ。ロシア、イタリアは、強いチームだと思われた。特にロシアチームは、美しく特に二人の選手がつよかった。でも日本チームも粒揃いでいいチームだ、勝利の行方は、日本選手が自分達の力をいかに出し切るかにかかっているようだった。
 昼食、休憩のあと4時30分ホテルを出発し午後の練習でいよいよ仮オーダーによる最終練習を行った練習が2日間と少ない為選手達の状態を把握する事が難しかった。5時15分より30分ローテーション、跳馬ユルチェンコ2回ひねりが3人、谷口、笹田、杉村、1回半ひねり、寺本、1回ひねり、村上、アカピアン古西、日本チーム跳馬が強い。しかし完全にとべたのは、寺本、村上だけであとは、少し補助が入ったりして問題が残った。段違い平行棒、杉村、寺本、古西がまずまず、村上、谷口、笹田が途中で停止があった、ベスト4で考えると問題が残った。平均台、2回練習してチェック、床、15分アップして全習。全員がムーンサルトや3回ひねりなどのE難度を持っており強い印象である。特に村上選手の最初のアクロバットである2回宙返り2回ひねり(シリバス)は、各国の審判、コーチ、選手に注目されているようだった。
 夜9時30分よりテクニカルミーティング(リーダー会議)が開かれた。スタートリストは、あすの朝10時に提出。コーチは、大会中全員アリーナに入る事が出来る。ジュニアに関しては、6―5-4方式を採用せず6人全員が演技する事が許され、そのベスト4がチーム得点となる、ただし6番目に演技する選手の得点は、チーム得点から除外する。ゼッケンは、シール式でレオタードに直接貼る。チームは、演技前すべての種目で5分間の練習が許される。表彰は、チーム戦、個人戦とその他に特別表彰としてシニア、ジュニアの各試合のおいて、すべての演技中もっとも高い得点をマークした選手がハイスコアー賞として表彰される。又、試合の方法として①段違い平行棒と平均台の試技順1番の選手の演技、②跳馬と床の試技順1番の選手の演技①②が終了すると次に2番目の演技者が同じ方法で演技をおこない最終演技者までいくと第1ローテーションが終了となる。これは、観客によく見てもらう為の配慮であるという事であったが選手コーチにとっては、大変長い、又、合わせにくい試合になる事が予想された。
■3月27日 試合当日
 10時スタートリスト提出後、10時30分より会場練習が15分ローテーションで行われ、ホテルで昼食後、2時30分ホテルを出発し、オープニングセレモニー出席の後、3時から5時までのシニアの試合を見学した。アメリカとロシアの火花を散らす戦いに地元イタリアが加わった三つ巴の壮絶な戦いとなった。イギリスは、少し水を開けられた感があったが見る側からは、大変興味深い戦いとなった。結果、自力に勝るアメリカの勝利、2.55差でロシア2位、3位地元イタリア、4位イギリスとなった。個人総合では、1位アメリカ2位ロシアそして3位にかつての世界選手権個人総合チャンピオンである地元イタリアの星、フェラーリ・べネッサ選手がよく健闘し入賞!観客からの大きな歓声が体育館に響き渡った。
 5時より日本選手は、ウォーミングアップ開始、15分ローテーション練習の後、午後7時15分、跳馬より試合が始まった。日本、ロシア、イタリア、イギリス、MIX(アメリカ2、イタリア3)チームの5班編成。
 日本1種目目 跳馬、各種目5分アップというと跳馬は、4~5本跳べる事となり、アップとしては、楽な展開である、1番村上茉愛選手、2番寺本明日香選手とよく3番から3人続くユルチェンコの2回ひねりが決まるかどうかが日本チームこの試合の大きなポイントだった。3番笹田夏実選手あわや胴体着地かと思われるような失敗。4番杉村美奈選手、厳しい状況の中着地で大きく1歩動くが成功14.75。そして5番谷口佳乃選手見事成功同じく14.75を獲得。6番古西里咲選手、アカピアンを塚原伸身に変更しての実施でEスコアー9.1とすばらしく、結果的には、高得点となった。跳馬を終了した所で会場内のスクリーンを見ると、日本チームは、1位だった。しかし、2位との得点差が1点と少なく得点が取れる跳馬を終了してのこの状況は、他のチームがかなり手ごわく日本チームに黄色信号が点滅している事を示していた。
 2種目目 段違い平行棒。1番杉村美奈選手、2番村上茉愛選手までミスがなかったが、ポイントゲッター3番の寺本明日香選手に思いがけないミスが出た。演技半ばの閉脚シュタルダーから開脚シュタルダー1回ひねりに行く所で回転不足となり姿勢を崩しWスイングをしてしまい得点が伸びなかった。4番笹田夏実選手Wミス、後がない所で、5番古西里咲選手がミス無く演技し、チームを助けた、6番控えに回った谷口佳乃選手は、しっかり演技する事が出来た。
 3種目目 平均台。1番寺本明日香選手、2番杉村美奈選手、3番谷口佳乃選手までミス無く順調だったが4番のポイントゲッター村上茉愛選手にミスが出た。第一シリーズの後転とびー後転とびー後方伸身宙返りの所で落下、点を伸ばす事が出来なかった。5番笹田夏実選手ミス、チームは、益々苦しい状況となってしまった。6番古西里咲選手は、いい出来で終了した。
 最終種目 床。1番寺本明日香選手、2番谷口佳乃選手、3番村上茉愛選手までいい演技が続いたが、4番笹田夏実選手後方2回半宙返り―伸身前宙でミス。5番アジアジュニア大会床金メダリスト古西里咲選手まずまずの演技で終了。6番杉村美奈選手大分待たされた事もあり第1アクロバットの3回ひねりで勢い余って転倒、場外に飛び出てしまい-0.3のラインオーバーをしてしまうがそのあとは、うまくまとめこれで日本チームの演技は、すべて終了した。
 第5ローテーション、日本チームは、休憩だった、手元で計算した所、ロシアには、到底及ばず、イタリアが最終種目の跳馬で上位4人が13.3平均を獲得すれば日本チームをクリア出来る事となり、それは、イタリアチームにとって容易い事だった。日本チームは、その段階で3位である事が予想された。イタリアの跳馬は、強くやはり日本の上に行き結果チーム戦は、1位ロシア、2位地元イタリア、3位日本、4位イギリスという結果になった。
 個人総合6位にこの日ノーミスの谷口佳乃選手、8位に寺本明日香選手、同点11位に古西里咲選手と村上茉愛選手が入った。優勝したのは、ロシアのGRISHINA ANASTASIA選手で総合得点59.45というハイスコアーを記録した。特に段違い平行棒で残したDスコアー6.5 Eスコアー9.4 決定点15.900という得点は、すばらしく又、平均台、床においてもトップの成績であった。
<総評>
 今回の大会は、3月8日より17日までの間、幕張メッセで行われたアジアジュニア大会のメンバーに杉村美奈選手を加えたチーム編成で、アジアジュニア大会終了後わずか一週間での大会であった事で各選手大変調整が難しく、又、全員が中学生という若い彼女達にとって時差もある初めての土地での海外試合という事で緊張もあったと思う。到着後練習が2日間ですぐ試合という事もあり充分な調整ができなかった事は、演技に多少影響があったかもしれない。しかし、一番の反省は、彼女達の本来の演技が各選手もう一つ出し切れなかった点である。練習後、又、試合前に演技内容も含め、今、出来るベストの演技をしようと今回全員が取り組んでいれば、ロシアに勝っての優勝はないにしても2位のイタリアには、勝てるチームだったのでは、ないかと非常に悔しさと残念さが残る試合であった。
 今回、初めてのヨーロッパ遠征を組んでいただき、ヨーロッパのたくさんの人達に日本の女子体操を見ていただく事が出来た事、本当に嬉しくいます。この大会を通じてヨーロッパの体操選手又、アメリカの選手と技を競い合い交流出来た事本当にすばらしい体験でした。このような大会に出る機会を私達に与えていただいた皆さんに深く感謝いたします。
日本選手団
優勝したロシアチーム
オフショット