2013フランス国際報告

報告者:

2013フランス国際報告
(FIG種目別ワールドカップ・フランス大会)
■期日2013年3月13~19日
■場所フランス・ラロッシュ・シュール・ヨン
■選手団
 コーチ:原田睦巳(大学生強化部長・順天堂大学)、中島啓(アンチドーピング医科学委員会委員)
 選手:加藤凌平(順天堂大学)
 審判:倉島貴司(審判委員会男子体操競技部員)
■会場:Vandespace
■報告
<現地での調整>
 3月13日に成田を出発する予定であったが、使用する機材がパリ空港の大雪の影響で到着が2時間遅れとの情報。その後、成田空港付近の強い風の影響で航空機が成田空港に着陸することができず中部国際空港に着陸、その機材が成田空港にいつ移動できるか不明のまま、約1時間強待ち、結局、欠航となった。次のパリまでの移動はどれだけ早くても翌日の午前6時以降でないと移動できない状況となり、前日練習のみで試合を行うという強行スケジュールになる事態となった。この件について、協会事務局に連絡し、国際担当の方をはじめとする協会関係者の方の迅速できめ細かい対応のおかげ深夜1:10羽田空港発の航空機に変更し、何とか前々日の練習に間に合うことができた。このような事態に対して、慌てることなく迅速で丁寧な対応いただいた協会関係者の皆様、とりわけ、渋沢様には羽田空港にまで来てサポートいただき、この場を借りして心より感謝を申し上げたい。ただ最終到着地であるナント空港で最後に待っていたのは、私のロストバゲッジであった。重ね重ね辛い移動であった。
 ホテル到着後、1時間ほどの休息を取り、15:30頃から練習を開始した。長旅の疲れと時差の影響により、思うような練習ができないと考えていたが、加藤は入念なストレッチとトレーニングを行い、鉄棒を除く5種目を1つ1つ丁寧に確認しながら積極的に練習に励み、明日の本会場練習に万全を期す準備を整えていた。若干、ゆかフロアの跳ね具合、あん馬の動きに違和感を感じていたが、明日で修正が可能な範囲であるように思える。
 翌3月15日は本会場練習を行った。本会場は練習会場と同一の施設にあり、移動もスムーズに行えるように工夫されていた。この地域のメインアリーナのようで大きなアリーナであった。練習自体は本番の予行練習の意味合いも含めながら、近隣の小学生の社会見学も含め、満員の観客の中、練習が行われていた。詳細に練習時間が設定されていたが、後半は自由な雰囲気で練習がなされていた。加藤も実際に競技を行う器械・器具に慣れるために積極的に練習を行った。
【競技初日(予選)】
<あん馬>
 馬背、鞍部馬背の部分が非常に滑りやすく、本会場練習時でも苦労していたが、何とか乗り切ることができた。途中、ウ・グゥオニャンで詰まった動きとなり、姿勢欠点が見られたがその後は演技を丁寧にまとめた良い実施であった。
 しかし、残念ながら14.866で5位となり、リザーブ1となった。
 D得点6.4E得点8.466決定点14.866
<ゆか>
 実施自体は非常に良い実施であった。しかし、所々着地で細かな動きがみられ、結果この細かな着地減点の影響で15.000、5位となり、あん馬同様リザーブ1となった。4名のみの決勝進出の難しさを改めて知る結果となった。
 D得点6.4E得点8.600決定点15.000
<平行棒>
 現地入りして以来、バーの状態に非常に苦労し、今回は演技価値点を下げての実施を決断していた。試合では演技をしっかりまとめ、全体的に非常良い実施で、着地も決めた。
 結果、15.600で2位となり無事予選を通過することができた。
 D得点6.4E得点9.200決定点15.600
【決勝競技】
 練習を行っていたため、他の選手を見ることができなかったためここでは出場種目の平行棒のみの報告とする。
<平行棒>
 予選時では実施しなかった屈身ベーレを行い、価値点上げての演技を行った。ティッペルトを行う前に、手ずらしが目立った点とティッペルト時の足スリ以外はほぼ完ぺきな実施であった。他の選手との緊張感あふれる神経戦を制し、終始落ち着いた演技を行った加藤が見事優勝を飾った。
 D得点6.5E得点9.000決定点15.500
■総評
 5月の開催される全日本選手権を控え、仕上がりが不十分な部分もあったが、次年度を見据えたうえでの有意義な競技会を行うことができた。
 今大会ではロンドンオリンピックのファイナリスト8名とワールドカップポイントを有している選手によって競技会が行われる、非常にハイレベルな競技会であった。実際は今大会に参加していない選手も散見されたが、レベルの高い大会であったことは間違いないだろう。特に4名のみの決勝進出は非常に厳しい条件であり、加藤のように日本選手のオールラウンダースタイルの選手には厳しい戦いであった。そのような中で確実に自分の持てる力を発揮し、周りの環境に左右されることなく冷静沈着に演技を行い切り、優勝という結果を残したことに価値を見いだせる競技会であったと考えられる。
 ロンドンオリンピックが終了し、すべての国が次回のリオ・オリンピックに向けて新たな強化に着手しており、今大会も今後の成長が見込まれる若手選手が数多く存在している印象を受けた。特にロシアの復活は目覚ましく、リオ・オリンピックでは頭角を現してくるであろう。
 新ルールとなっての競技会であり、大幅な変更がなかったとはいえ、すでに高いDスコアを有した選手も多く存在し、日本選手に関しても積極的なDスコア向上が今後の大きな課題の一つであろう。