北京オリンピック男子団体決勝レポ

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 男子団体決勝が終了。中国強し!今回の戦いぶりにおいて、敵ながらその優勝をたたえたい。そして最後まであきらめない姿勢をみせて銀メダルを獲得した日本チームに感謝したい。
<第1ローテ>
 中国の陳がゆか最初の演技者として登場。安定した演技を続けていたが、最後の月面宙返りでライン減点。6-3-3制の団体決勝における最初の演技者にかかる精神的な負荷は計り知れない。その中でまずは最低限の仕事を果たした。最後の演技者鄒も大きな過失なく実施。完璧な演技で日本にプレッシャーをかけたかったところだが、そこまでには至らなかった。ゆかは日本のセールス種目。ここでしっかり点差を広げておきたいところ。
 今大会好調をキープして頼もしい存在に成長した中瀬がトップ。最後の月面宙返りで前に倒れそうになるが踏みとどまる。得意種目ではあるが4月の2次予選で転倒するなど失敗していたことを思えばミスを最小限に食い止めたといえる。次の沖口は万全の体調ではない中、落ち着いた演技を披露。2007年世界選手権では頭が真っ白になったというが、予選の時よりも動きはしまっていた。残念ながら最後の月面でライン減点。そして内村は、2コース目の後方宙2回半ひねりの着地でバランスを崩しかけ、次の前方宙返り1回ひねりをかかえ込みに対応し、その後の前方宙返り1回半ひねりを成功させた。内村選手は最後の後方宙3回ひねりの着地を決めたが、それ以上に彼の若さと能力の高さを示したところであった。
 結果、日本45.975、中国45.925でわずかにリード。金メダルのためにはここで1点近い差を広げておきたかった。
<第2ローテ>
 あん馬では、ゆかを演技しなかった冨田、坂本、鹿島が登場。予選2位になるとゆかからあん馬への時間的な余裕がない。ゆかは持久力の必要な種目のため次の種目までに時間的な余裕がないことは疲労の回復時間がなく、ゆか、あん馬と演技する選手にとって大きな負担となる。その意味で、今回の代表はいい形であん馬を迎えることができた。
 1番手の冨田はウゴニアンでバランスを崩しかけるが持ちこたえる。また、2番手坂本もウゴニアン後の転向技で落下しそうになるが持ちこたえた。そして予選で落下している鹿島。今日の演技構成はその落下した一腕上上向き全転向(E難度)を除いたものにし、A6.3に抑えた。上記E難度技を入れるとカウントされたB難度(0.2)がE難度(0.5)にかわるため0.3アップ。つまり本来、鹿島のA得点は6.6である。失敗がそのままチーム得点につながる団体決勝では安定性が重視される。1種目めにあん馬から入ったロシア(予選3位)、韓国(予選4位)が失敗していることを考えても、日本が安定性で中国にプレッシャーをかける戦略は正しい選択といえるだろう。
 その成果はすぐに現れる。中国トップの黄は、あん馬を得意にしているベテランだが最後の終末技「倒立移動ひねり」を行うが、途中でバランスを崩し、馬体を乗り越えられず、転向倒立下りとしてC難度に判定された。これによりA得点は予選よりも0.3マイナス。この1番手のミスは2番手の楊の演技にも影響を与え、最高の実施はできなかった。しかしあん馬の世界チャンピオン肖は危なげない演技で16点台を出し、悪い流れを払しょくした。
 結果、日本91.550、中国91.950で中国に0.40逆転を許す。
<第3ローテ>
 輪を握ったままで演技できるつり輪は、大きな失敗が出にくい種目である。そんな中、黄、楊、陳がその強さを発揮して日本を大きく引き離す。日本1番手の中瀬は、見どころである難しいグチョギー連続からのほん転倒立を決めてアピールしたが着地を決めきれず。坂本も表現の素晴らしいホンマ十字を決めたが着地でわずかに動く。冨田は予選で評価されなかったホンマ中水平を除き、A得点6.9を6.8にして着地をまとめる。
 結果、日本138.450、中国140.825で中国リードを広げる。
<第4ローテ>
 ロペス(A得点7.0)を跳べる沖口は負傷部分の回復具合から、鹿島のトップ起用に変更。しかし、鹿島は踏切から着手においてミスし、本来行う予定の2回半ひねるドリッグス(A得点6.6)が2回ひねりになってしまった。さらに空中で膝を曲げるシーンもあり、A審判員がかかえ込みに判定するとA得点5.4にまで下がってしまう危機的状態に。しかし伸身の評価でA得点6.2、さらに実施点も9.000。何とか最悪の状況は免れた。次の坂本は大きくライン減点。内村はシューフェルト(ユルチェンコとび2回半ひねり)を無難にまとめたが、この後に演技する中国に大きな余裕を与える状況となった。
 予想通り、余裕を持った中国は陳(ドリッグス:ライン減点あるもまとめる)、楊(ロペス:着地を止める)、李(リシャオペン;A得点7.2)が持ち味を出し、結果、日本185.200、中国190.150で中国リードをさらに広げる。
<第5ローテ>
 中国がここでも持ち味を発揮。今大会、平行棒もA得点上で差をつけられていた種目であり、残念ながら16点台を3選手全員に出され、勢いづいた。
 1番手坂本はチッペルトでミスし15.000。全選手が16点台の中国にあっては非常に厳しい状況に。しかし内村は美しさとスピード感を、冨田は美しさとシャープさを表現し、最後まであきらめない姿勢を示した。結果、この段階で日本のメダルの色が問題に。5種目終了時点で1位中国239.175、2位アメリカ233.975、3位日本232.275。
<最終ローテ>
 1番手中瀬。予選よりも落ち着いた内容で演技をしめる。着地で大きく動くが持ち味を発揮。2番手内村も3つの手放し技を豪快に決めて最終演技者冨田につなげる。そして冨田。予選ではコールマンが近づきけ上がりで対処する状況だったが今度はうまく捌き、アドラー1回ひねりからヤマワキも安定して成功。伸身新月面の着地もまとめ、日本チームの最後の演技を締めくくった。
 大きな点差を持った中国は、時折慎重になりすぎて演技に力の入る部分もあったが肖、李がまとめ、ゆかで演技して以来の演技となる鄒が最後の伸身新月面の着地を決め、会場の大歓声を誘った。
 なお、2位争いをしていたアメリカは、苦手としているあん馬1番手タンが失敗し、2番手バブザーも実力を出し切れず、最終演技者のアルチモフが本日最初で最後の演技をしめくくったが日本に及ばず銅メダルとなった。
 日本はいいチームだった。アテネの時と同じように、各選手がオリンピックという舞台でまた大きく成長した。誇れる銀メダル。これから男子は個人の戦いへと移る。チームとして成長した色を合わせて自身の個性を発しながら納得の演技を個人総合、種目別で期待したい。引き続き応援をお願いします。
男子団体銀メダル
(撮影 竹内里摩子)