平成25年度男子体操ジュニア海外強化合宿

報告者:

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1 期日:平成26年1月29日(水)~2月9日(日)
2 場所:CAR Gymnastics Cancun(メキシコ/カンクン)
3 宿舎:Grand Oasis Palm Beach
4 選手団:監督・コーチ 9名、マルチサポート 2名、選手13名
【監督・コーチ】水鳥寿思(監督/男子強化本部長)田野辺満(鯖江高校)藤原佳市(関西高校)森川勝俊(埼玉栄高校)梅本英貴(清風高校)水口晴雄(鶴見ジュニア体操クラブ)山崎隆之(Victory Gymnastics Club)木下紘一郎(健伸スポーツクラブ)立松佳通(池谷幸雄体操倶楽部)
【マルチサポート】村上拓(情報・分析)小林直行(トレーナー)
【選手】早坂尚人(市立船橋高校)田浦誠也(大成大高校)南瑛斗(鯖江高校)萱和磨(習志野高校)千葉健太(清風高校)谷川航(市立船橋高校)荒屋敷響(鯖江高校)田中樹(清風高校)加藤裕斗(埼玉栄高校)北村郁弥(池谷幸雄体操倶楽部)湯浅賢也(鶴見ジュニア体操クラブ)谷川翔(健伸スポーツクラブ)白井健三(鶴見ジュニア体操クラブ)
5 日程
1月29日(水)成田空港出発→ダラス経由→カンクン到着
1月30日(木)~2月7日 強化練習
2月8日(土)カンクン出発→ダラス経由 2月9日(日)成田空港到着
6 イギリスチーム視察報告
イギリスチームは日本チームより1日早くメキシコでの練習を始めていた。チームとしてはナショナル選手6名、来年度からナショナルに上がるジュニア選手が2名の計8名。スタッフは協会責任者1名、コーチ4名、コレオグラファー1名、トレーナー1名の計7名の参加となった。
練習1部目は9:30~13:00でトレーニング、基本練習、続行練習がメインとなり、2部目は16:30~19:00で新しい技への挑戦とつり輪の補強などの練習を行っていた。
また、コレオグラファーが帯同しており、ゆかのタンブリング以外の動きやポーズ、足の締めや体線の出し方など徹底した指導が行われていた。このコレオグラファーの活躍によりイギリスの体操の美しさが培われていることが非常に目立っていた。イギリスのナショナルチームは国内の合宿を1週間行い2週間空けてまた1週間のサイクルで合宿を行っている。その際にメディカルチェックを行い、その情報をもとにパーソナルメニューを組み立て、コンディショニングを行っている。その結果、イギリスチームの中に障害をかかえている選手は非常に少ないことも順調に強化が進んでいる要因だと強く感じた。
7 ブラジルチーム視察報告
ブラジルチームは日本チームの4日前からメキシコでの練習を行っていた。ブラジルのナショナルセンターがまだ出来上がっていないため合同合宿を長めに計画したものと思われる。(ブラジルのナショナルセンターの建設予定は未定)スタッフはコーチが7名、ドクター1名、トレーナー2名、選手16名の計26名の参加であった。練習時間は練習1部目が8:00~10:00(練習後にトレーナーによるケアを1時間程度実施)、2部目が14:00~17:00で行われていた。
昨年から継続してブラジルチームの視察を行ってきたが、非常にレベルが上がっている印象を受けた。高難度技に加え、美しさやスピード感など実施の面でも向上がみられた。おそらくそれを支えているのは、ブラジルのチームとしての組織力のように感じた。バスが体操場に到着すると、すぐさま荷物をまとめ整列を行い、1日のスケジュールと練習メニューや目的を確認し、すぐにアップ、障害予防トレーニング、フィジカルトレーニング、柔軟、タンブリング、基本練習を行い、選手は皆大量の汗を掻いて流して2時間の練習を無駄なくきっちりと行っていた。また障害予防トレーニングをサーキット形式で行っていることが印象的であった。内容は16種目を各40秒で行い20秒のインターバルの間に移動する方式を取り短時間で全身のトレーニングを行っていた。またその後に20分ほど個人的に必要なトレーニングを行い、非常に効率のよい時間の使い方をしている印象を受けた。前年度から比べるとブラジルチームも障害をかかえた選手が減少し、組織的な成果があらわれていることを感じた。トレーニングのメニューはドクターとトレーナーで細かく組み立てられ、技術的な練習はコーチングスタッフにより計画されていて、それぞれの役割分担がしっかりとなされていた。
8 日本選手のレポート
練習環境に関しては、2年前と変わらない環境であった。器具はGYMNOV製の器具でゆかフロアーが2面、パワータンブリング、タンブリングトランポリン、トランポリン、あん馬4台(うち2台は馬体のみの低いあん馬)、つり輪2台(うち1台はピット)、跳馬2台(うち1台はピット)、平行棒4台(うち1台はピット)、鉄棒3台(うち2台はピット)と充実した施設であった。
本合宿では、各自の目標や目的を明確にして練習に取り組むように改めてミーティングを行った。
練習内容に関しては、3カ国合同合宿のため、体操場内の練習人数が多くなることを考慮し、練習1部目に1本通し、ショートプログラム、基本練習のサイクルで行った。午後は各自課題練習を行った。練習1部目については、3月から競技会に出場する選手が大多数を占めているため、細かい部分まで注意して続行練習を行っていた。また、合宿時のメキシコの気候が温度28℃、日本の夏より湿度も低いため、選手たちの動きもよく、充実した合宿となったことがメキシコでの合宿での成果のひとつといえるだろう。練習2部目については、各自の課題を意欲的に取り組む選手が多く、多数の選手が新たに取り組んでいた技を習得していた。
今回初めてマルチサポートも合宿に参加し、イギリスとブラジルとの合同合宿であったため、他国の情報・分析において多くの情報を得ることができた。また、練習現場でのビデオでのフィードバックにより選手たちはさらに意欲的に練習に取り組んでいた。また、選手のトレーニング内容やコンディショニングについても成長期であるジュニアの選手たちにとって、スキルアップに大きく貢献したと感じる。
合宿期間中に体調不良になる選手もいたが、合宿期間中に回復し、チームに合流した。また、大きなケガなく合宿を終えることができた。
3カ国合同合宿であることで、イギリスとブラジルの世界トップクラスの体操を身近に体感し、選手達は刺激を受けて練習に取り組むことができたと強く感じる。
9 総評
ジュニア期に海外で他国のトップ選手と練習を行うことは、その後の選手の成長に大きく貢献するだろう。器具や時差などの環境や、練習方法の違いは、全てが学びである。選手はそのような環境の違いに少しずつ順応し、それぞれの課題に対し練習を行っていた。本合宿ではそのような貴重な経験ができたことが一番の成果であると感じている。
他国の練習に目を向けると、イギリス・ブラジルチームはシニアのトップ選手であってもウォーミングアップからトレーニング、練習メニューまでが組織化されていて、比較的フリー練習の多い日本チームとは対照的であった。これは、ナショナル選手が合同で練習を行う機会が多く、組織化しやすいという要因もあると考えられるが、日本も学ぶべき部分があると感じた。昨年の世界選手権では日本が大きな成果を挙げることができたが、リオオリンピックに向けて彼らが日本のライバルにも成りえると感じた。
日本のジュニアにおいても、フィジカル、生涯予防などのトレーニングや、基礎技術を徹底することで、強靭な身体と、変化に対応できる幅を身につけておきたい。そのためには、定期的な合宿や、ジュニアからシニアまでの一体的な強化を行っていく必要があるだろう。
そして、今後もこのような合宿を継続していけたらと考えている。
また、合宿中にインフルエンザ1名を含む3名の選手・スタッフが体調不良で練習を休んだ。手洗い、うがいや睡眠などの基本的なことや、コンディショニングについての指導や意識も高める必要があると感じた。
終わりに海外合宿を行うためにご尽力いただきました関係者の皆様に感謝の意を表し、報告とする。

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