第13回アジアジュニア選手権男子報告

報告者:

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期間 平成26年4月7日~15日

場所 ウズベギスタン/タシケント
競技会場 Gymnastics Sport Palace
選手団
監督:田野辺満、コーチ: 森川勝俊、梅本英貴、立松佳通
審判:千葉一正、大久保雄右、トレーナー:小林直行
選手:荒屋敷響貴、岩佐亮、加藤裕斗、田中樹、北村郁弥

スケジュール

4月 7日(月)PM成田空港発(アジアナ航空) ソウル経由、タシケント着
4月 8日(火)AMサブ会場練習 PM本会場練習
4月 9日(水)PMサブ会場練習 PMオープニングセレモニー
4月10日(木)男子競技 団体・個人(日本は第3ローテーション)
4月11日(金)女子競技 団体・個人 男子サブ会場練習
4月12日(度)PM男女種目別前半
4月13日(日)PM男女種目別後半 フェアウェルパーティー
4月14日(月)AM市内観光 PMタシケント発
4月15日(火)PM成田空港着 解団式

大会概要
今大会は、AGU(アジア体操連合)の50周年記念の大会として開催された。また、第2回ユースオリンピック大会の大陸間予選会も兼ね、アジア枠10カ国(開催地の中国に別途1枠)を争う重要な大会である。日本選手は、ジュニアナショナル選手より、当該年齢の上位5選手を派遣し、団体優勝・打倒中国を最大の目標に大会に挑んだ。
現地の生活・環境
タシケントの国際空港より30分程度の場所で開催された。ホテルは比較的快適な環境であり、時差も4時間程度であった。食事はホテルで3食用意されたが、長い遠征で選手の体調管理を行う面では不十分であり、日本食持ち込み、外食やスーパーでの買い出しが必要であった。
大会運営に関しては、全般的にしっかりと行われていた。バス移動、スタッフの対応、スケジュールの計画や連絡など非常に丁寧で、ほぼ予定通りに運営されたため、安心して競技を行うことができた。一部、練習時間等の変更が生じたが、参加国からのリクエストに対して柔軟に対応していた。
競技会場は、アリーナの約1/3がサブ体育館となり、メイン会場はポディウムが設置されていた。ヤンセンの最新の器具が使用された会場の雰囲気はすばらしく、世界選手権に参加している様な気分であった。この競技場は、通常は新体操・体操競技のナショナルチームの練習施設となっており、選手は、施設内の合宿施設にて生活しているため、サブ練習の空き時間には、ナショナル選手が練習を行っていた。

競技の報告
<団体・個人総合4/10>
団体:優勝 日本 248.90
2位 中国 245.30
3位 ウズベギスタン 236.50
4位 カザフスタン 236.05
5位 韓国 229.950
個人:優勝 TA Yinga中国 82.50
2位 KATO Yuto 日本 82.40
3位 ARAYASHIKI Hibiki 日本 82.35
男女とも3ローテーションで組まれ、日本は最終の3班であった。
中国は1班で演技を行った。つり輪、平行棒、鉄棒の3種目で各2名の大過失があり、点数を伸ばせなかった。メンバー的には、昨年の国際Jrに参加したHU Xuwei選手を中心にバランスの良いメンバーであったが、ユースルール対策で週末技をC難度にまとめる演技が多く、Dスコアは高めきれていない印象を受けた。平行棒では、車輪ディアミ、棒下倒立、チッペルト、ヒーリー、屈身ダブルという構成が基本的であり、上位の選手はバブサーや棒下ひねりを使っていた。ツイストなどのC難度以上の支持振動倒立技の実施はなかった。あん馬では、馬端下向き転向1080°(D)、Dコンバイン、バックセア倒立、前後移動が基本であり、フロップの実施はなかった。その他の種目でも、特に目立った演技構成は見られなかった他、各種目での基本技術や脚力、力強さに関しても日本選手との差は感じられなかった。また、ミスの原因としてメンタル面の弱さを感じる演技が見られた。
韓国は2班で、地元ウズベギスタンと同組であり、地元の大歓声の中での試合であった。結果の通り、選手の強化が進んでいない印象を受けたほか、演技構成にも問題があり、グループカットなどユースユールに対応しきれていない演技が幾つか見られた。
日本は、全体的に良い試合運びができた。前半の4種目(ゆかスタート)は、ほぼ完璧な出来であった。特に、あん馬では、トップ北村の完璧な演技をスタートに、全員が素晴らしい演技を実施し、団体優勝への大きなアドバンテージを得ることができた。跳馬でも全員がアカピアンを成功させ波に乗ったかと思われたが、次の平行棒で高得点が期待できる北村が落下、これまで好調であった加藤がチッペルトで停滞するミスを出してしまった。審判の採点が非常に早かったほか、平行棒の演技前の30秒の準備時間が厳しく計られていた。チームのW-UP後に直ぐに30秒のカウントダウンが始まり、第一演技者の荒屋敷は慌ただしい中での演技開始となった。2番手以降の選手も同様に、バーの準備をする時間が短く、演技に集中することが困難であった。今後の課題として、練習時から準備時間や演技前のルーテイーンに関して見直さなければならないと痛感した。5種目終了時には、中国に3点以上の差で勝っていた。最終種目の鉄棒では、北村が最後の伸身2回宙返り2回ひねりで転倒、加藤に中過失があったが、最終演技者の田中が今回大会で初めて実施したコールマンを成功、着地も決めて会場を沸かせた。同時に最大の目標であった団体優勝を手にすることができた。
採点に関しては、Dスコアでは、つり輪の力技の不認定、鉄棒の不十分な技の格下げや技カットなど国際ルールに基づいてしっかりと採点された。Eスコアでも甘い採点はなく、完璧な実施をしないと8点代後半は獲得できず、不安定な演技には6点代、7点代の得点が付けられていた。
FX

北村 13.35 5.3-8.15 -0.1 前2回半ラインオーバー、終末3回ひねり前に大きく1歩
加藤 14.20 5.8-8.5 -0.1 ダイブ屈身ダブル決める、ミスなく良い実施
荒屋敷 14.20 5.7-8.5 着地は決めきれないが、全体的に演技をまとめる
岩佐 13.80 5.4-8.7 -0.3 ダイブダブルでラーンオーバー、他は着地まで丁寧な実施
PH

北村 13.65 5.1-8.55 セア倒立、Eフロップ、完璧に近い演技で流れをつくる
加藤 14.30 5.4-8.9 セア倒立、Eフロ、Dコンバ、完璧に近い実施
荒屋敷 14.10 5.5-8.6 シュピンデル、Eフロ、Dコンバ、詰まりながらも最後まで通す
田中 14.30 5.3-9.0 Eフロ、Dコンバ、前後移動、E下り、完璧な実施を見せる
SR

荒屋敷 13.40 5.0-8.4 ホンマ十字は格下げ、終末ルドルフを決める
加藤 13.80 5.2-8.6 開上水平が高くカット、他はまとめ終末はルドルフを決める
田中 13.70 5.2-8.5 カトウ、振動倒立など丁寧な実施、終末はサルトハーフを決める
岩佐 13.90 5.3-8.6 アザリアン、ホンマ十字など力強い実施、終末ルドルフを決める
VT

北村 14.10 5.2-8.9 良い実施、小さく後ろに1歩
荒屋敷 13.85 5.2-8.75 -0.1 良い実施、小さく後ろに1歩、惜しいラインオーバー
加藤 14.05 5.2-8.85 雄大な実施、後ろに1歩
岩佐 14.15 5.2-8.95 まとまった実施,小さく1歩/12.05 3.2-8.85 前方屈身、種目別を狙い2本目を実施した
PB

荒屋敷 13.70 5.3-8.4 ホンマ、棒下、ヒーリー、Dツイスト、1番手の責任を果たす
加藤 12.95 5.2-7.75 ホンマ、棒下、ヒーリー、チッペルトで停滞したが認定される
北村 12.65 5.3-7.35 準備時間が不足して急がされた演技、チッペルト前に惜しくも落下
田中 13.55 5.1-8.45 ホンマ、棒下、Dツイスト、チッペルトで停滞して不認定、着地を決める
HB

加藤 13.10 5.1-8.0 ヤマワキ、ホップ、ホップひねり後に停滞、終末のルドルフを決める
荒屋敷 13.10 4.8-8.3 ヤマワキと伸トカを格下げの判定、微妙な判定に質問書提出したが却下
北村 12.90 5.3-7.6 伸トカ、アドラーひねり、良い実施であったが終末で転倒
田中 13.90 5.5-8.4 コールマン近づく、ひねり技は良い実施、終末の伸身サルトを決める
<種目別4/12-13>
種目別では、金メダル1,銀メダル2,銅メダル4個を獲得した。中国は、団体戦よりも気持ちの入った演技で2種目を制した。あん馬、鉄棒では、カザフスタンが優勝したが、かなり高いEスコアであった様に感じた。日本選手がさらに金メダルを獲得するためには、Dスコアのさらなる向上、着地の強化、各種目でのアピールのできる高難度技が必要ではないかと考える。また、今後に向けて跳馬の2本目をジュニア期に取り組む事も必要かもしれない。
FX

優勝 荒屋敷 14.50 5.7-8.8 ダイブダブル、終末3回ひねり着地決める、ほぼ完璧な実施
3位 加藤 14.00 5.8-8.5 -0.3 ダイブ屈身を決める、途中に惜しいラインオーバー
PH

2位 田中 14.175 5.3-8.875 雄大な旋回で完璧な実施、倒立下りで若干力を使う
3位 加藤 14.05 5.6-8.45 Dコンバインで馬体タッチ、それ以外は完璧な実施
SR

2位 岩佐 14.075 5.3-8.775 アザリアン・ホンマ十字など力強い演技、ルドルフも決める
3位 加藤 13.975 5.3-8.675 予選より良い実施、着地のルドルフもまとめる
VT

4位 岩佐 14.15 5.2-9.15
11.825 3.6-8.225 1本目 アカピアンをまとめる
2本目 前方屈身ハーフを実施したが惜しくも転倒
PB

3位 荒屋敷 14.05 5.3-8.75 ホンマ、ヒーリーなど、ほぼ完璧な実施、着地1歩
4位 田中 13.875 5.4-8.475 優勝を狙うが、演技全体にふらつく演技となった
HB

4位 荒屋敷 13.175 4.9-8.275 ほぼ完璧な実施、伸トカが格下げで開トカが繰り返しカット
6位 田中 13.100 5.5-7.60 コールマンで惜しくも落下、もう一度やり直し成功、着地止める

9 総評
最大の目標としていた団体優勝を達成できたことに大変満足している。また、この結果の達成には、次の2つの成果が大きかったと考えている。
一つ目は、選手、コーチ、トレーナー、審判、女子選手団がチームジャパンとして一丸となって戦えた事である。現地での選手・スタッフとのコミュニケーション、トレーナーによるケア、帯同審判に来て頂いた3月の事前合宿での試技会など、大会に向けた十分な準備が行えた事が良かったと考えている。
二つ目は、選手のメンタル面での成長である。今回は、団体戦までの日程がハードなスケジュールであった。ウズベギスタンの入国やADカード発行、ホテルのテェックイン等に時間がかかり、夜中の1時30分を過ぎてから部屋での夕食となった。翌日の午前中からサブ会場練習、午後から公式練習(ポディウム練習はこの1回のみ)という強行日程の中でも、公式練習では試合形式の1本通しを集中して行うことができた。また、ヤンセン製の器具、初めてのポディウムでの演技、慣れない生活環境の中でも、日本で練習しているかのように平然と試合に望み、自分の演技を次々に成功させる姿は頼もしくも感じた。
また、今回の成果の基になっているのが、これまでの男子ナショナル強化であることは言うまでもない。2月のカンクンでの海外合宿や各種国際大会への派遣、国内でのジュニア強化合宿、U-21・ナショナルとの合同合宿など、ジュニア選手の成長の機会を多く与えて頂いたことが、技術やメンタルの向上に繋がっている。今後は、第2回ユースオリンピックでの優勝をはじめ、リオオリンピック、東京オリンピックでの金メダル獲得に向けて、さらに精進していきたいと考えている。最後に、本遠征の参加に際し、日本体操協会をはじめ、多くの関係者の皆様に、心より感謝を申し上げ報告とする。
報告者 男子ジュニア強化部 田野辺満

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