第1回ユースオリンピック(新体操)報告

報告者:

日程:
8月12日(木) 成田空港発 シンガポール着
8月13日(金) トレーニング
8月14日(土) トレーニング・開会式
8月15日(日)~22日(日) トレーニング (21日監督会議)
8月23日(月) ポディウムトレーニング
8月24日(火) 団体総合予選
8月25日(水) 団体総合決勝
8月26日(木) 閉会式
8月27日(金) シンガポール発 成田空港着
■競技報告
①選手選考の経過と本大会への強化策(監督 曽我部美佳)
 第1回ユースオリンピックのアジア代表は、2010年2月にウズベキスタンで行われるアジアジュニア選手権大会が予選となることが決定した後、ユースオリンピックの出場権獲得を目標として強化を開始した。本大会の対象年齢は1995年生まれのみと非常に幅が狭く、団体競技においては1所属でチームを構成することが困難であると判断し、選抜チーム制で臨むことを前提に、2009年6月に全国オーディションを行い、個人・団体あわせて13名の強化選手を選出した。団体選手については、短い期間で試合に臨まなくてはならないことから、プロポーションや身体能力ももちろんであるが、団体選手として交換難度の正確性や、ミスへの対処能力などを重視した。
 団体においては9月より月1回の合宿を行い、作品づくりを開始した。10月の全日本ジュニア選手権大会終了後、強化選手と全日本ジュニア選手権上位者による最終セレクションを行い、個人4名と団体5名のアジアジュニア選手権代表選手が決定した。
 メンバー決定後、個人は2回、団体は4回の強化合宿を経て、アジアジュニア選手権大会に臨んだ。個人は最高順位が7位と2名の枠には遠く及ばず、出場権を逃したが、団体におていは団体総合・種目別フープ・リボンと3つの金メダルを獲得し、ユースオリンピックへの出場権を獲得することが出来た。
 しかしながらヨーロッパの強豪国と戦うことを考えると、身体難度の不明確さや下半身の緩みは大きな課題であった。そこで更に美しく、身体能力の高い選手を選抜し、本大会に臨むべく、アジアジュニア団体代表選手に、個人代表選手とロンドン強化本部選抜選手を加えて、新たにスタートを切った。
 3月より数回の強化合宿を行い、5月にFIG技術委員、審判本部、ロンドン強化本部、新体操委員会のメンバーなど多くの新体操関係者の目で、最終メンバー4名と国内補欠選手1名を選出した。
②現地でのコンディショニング
 現地に入ってから13日目に試合を迎えるため選手のコンディションを整えることが困難であった。6月に行われたテストイベントに参加させて頂いたため、現地の気候・会場の状況はある程度予測が付いていたので選手達の様子は落ち着いていた。しかし、高温、多湿、日中の日差しはとても強く、移動時に外を歩く事が多く、思った以上に体力を消耗した。宿舎、食堂、バス停、全ての移動に時間を要し、日本での便利な生活とはかけ離れた生活であった。練習会場まではバス移動で片道1時間。移動だけで疲れが出ていたようだがどの国の選手も同じ条件で生活している事を考えると環境に早く順応し、プラス思考で物事に取り組める力が非常に大切である。環境に慣れるという意味では競技会が日程の最後であった事は決してマイナス要因ではなかったと思う。練習、選手村での様子を見る限り、他国の選手達は非常にタフであった。15日間の遠征はあらゆる意味での挑戦であり、日常生活でコミュニケーションがうまく取れないとその些細な1つ1つの出来事が演技に影響されると感じた。
③試合経過と戦評
●23日(月)ポディウムトレーニング
 朝からやや緊張した面持ちであったが選手間に流れている空気は落ち着いていた。練習会場で押さえの練習を行い、そのまま本会場へ移動した。テストイベントで会場の状況は把握していたので選手達は落ち着いた様子で準備を進めていけた。フープ、リボン共にミスはあったものの本番に向けての手ごたえを感じた。4人とも自分の動きがよく把握できていると感じた。課題である徒手の難度の部分はまだ甘さが見られるので本番に向けて精度を高める必要があった。本番は、審判、観客がいるのでまた違った緊張感に包まれることも想定し選手達は本番に向けてリハーサルが出来た。
●24日(火)団体総合予選
 練習会場に向かう。緊張から落ち着きがない選手もいたが、練習で確認していくうちに感覚が取り戻せた。練習会場ではどの選手に心の揺れは見られず、緊張はしているが1つ1つを慎重にこなしていた。まずはフープ。選手達はとてもいい表情でフロアに立った。手具の操作や投げ受けにやや固さが見られたが伸び伸びと演技を。しかし中盤の交換ファーメーションが乱れた以外は上出来であった。得点23.000点。フープ終了後、リボン演技までの時間が20分弱しかなかったのでここの切り替えは大変であった。しかし、どのチームも同じ条件であるので気持ちを落ち着かせ、サブ会場で数ヶ所部分的に演技を確認し、本会場に向かった。選手達がお互いにかけている言葉を聞いてチームとして成長した姿が見受けられた。リボンも落ち着いて演技が出来、途中交換でリボンが接触したが大きなミスには繋がらず、見せ場の4本投げも成功し得点22.900点。フープ・リボン合計45.900点で予選2位通過であった。
●25日(水) 団体決勝
 試合前の練習会場の練習は予選での演技よりもいい演技を目指したいという選手達の気持ちが伝わる練習であった。しかし、4人の心が1つになっていない場面を度々感じた。フープの演技。スタートは成功したがフープのキャッチに硬さが見られた。はじめの交換でフープが場外に飛び出しポディウムから落下。予備手具を手にした選手の顔が真っ青であった。その後も選手達が動揺し、連係が不成立、落下ミス、交換が成立しないなどミスを連発した。ここが私達の弱さであった。どんなミスを犯しても1回で抑えなければならなかった。演技中必死で取り戻そうとする選手と、ミスが怖くなり固まる選手とのギャップを感じた。得点21.100点。15分しかない時間の中でリボンに向かわなければならないのはとても辛い挑戦であった。着替えを済ませた選手達は確認する時間はなく本番へ向かった。選手達はしっかり気持ちを切り替えようとしていたが心が揺れている様子がひしひしと伝わってきた。リボンの演技、序盤から体の動きが硬かった。交換で投げ損ねるという普段では考えられないミスから始まり、その後もミスが続く。フープと同様1回の過失から気持ちを切り替えて演技を行うことが出来なかった21.375点。予選、決勝と2日間を戦う選手達のメンタルをコントロールできなかったのはコーチの采配である。予選ではメダルに届く位置にいながら、実力を出し切ることが出来ず悔やんでも悔やみきれない。
④総評と反省
 選手達は最後まで諦めることなく戦った。短い強化期間の中でユースオリンピックという大舞台で立派に演技した。予選で2位、2種目とも大きなミスのない演技であったことは評価すべき点である。予選の演技は素晴らしい出来であった。しかし、メダルに手が届く位置にいながら選手達の実力を出し切ることが出来なかった。決勝でプレッシャーを感じた選手達がさらに素晴らしいパフォーマンスを行うために、コーチの試合運びはもちろんであるが、要因は多々考えられる。世界の舞台で戦ったことのない選手達に試合感覚を養うことは簡単なことではなかった。特に今回の試合は2種目を1時間で演技し、2日間2種目続けて行う試合展開であった。短い時間で2種目を纏めるにはチームを結成してから期間が浅かった。ここが選抜チームで組む難しさであると考える。試合を迎えるにあたり技術的には問題はなかったと思う。決勝でメダル獲得に向けて究極の緊張に達したときに不安な気持ちが出てしまった。また、今回2週間という長い期間選手達は生活を共にしなければならなかったため、日常生活でお互いが気を使っている姿も目にした。些細な積み重ねが試合の1回の演技に集約されたと感じている。代表選手として全てをクリアにしていかなければならなかったのであろうが、多感な年代の選手達を纏め上げることは容易ではなかった。
 今回経験を通して学んだことは、選手個々のセルフコントロール能力を高めていくこと、他人とのコミュニケーション能力を養う事である。また、どんな困難も乗り越えるタフな精神力を養わなければならないと強く感じた。また、これと並行し技術面を鍛えることも必要不可欠である。そして、団体に関しては試合のプレッシャーを乗り越えるために何を差し置いてもチームワークが重要である。試合終了後、FIG、他国の関係者からは「とても良いチームであり演技構成は素晴らしかったと」評価を受けた。日本の良さを世界にアピールすることは出来たが、今回の悔しい経験が必ず次へのステップとなるよう、今後の強化に繋げていきたい。
 新体操からは引率役員が1人であったために、本部役員の方々、他競技の監督、コーチの支えがあって乗り越えられた試合であった。特に体操コーチのサポートがなければ試合を乗り越えることは出来なかった。試合をチームジャパンで乗り切れた事に心より感謝したい。
 最後に、短い期間でチームを作り上げ力の限り演技を行った選手達に感謝と敬意を表するとともに、ご支援いただいた多くの方々に御礼を申し上げたい。