2012モスクワグランプリ新体操国際レポート3

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2月26日、個人・団体の種目別決勝が行われた。
<個人>
■フープ
 他者を寄せ付けない圧倒的な力で1位を手にしたのはカバエバ。昨日よりも軸のある正確な難度に加え、フープが手に吸い付くような手具さばきで29.000点。2位は、力強い演技で観客を魅せたドゥミトリエヴァが28.625点を獲得した。そして、おそらく旧ソ連を除けばアジア人初であろうグランプリでのメダル獲得を、韓国のソン・ヨンジェが果たした(3位 27.750点)。彼女の演技は難度がハッキリとしており見やすい上に、彼女にしか出来ない表現力がある。俗に言うスター性を感じるのである。これは、採点競技・芸術競技である以上とても大切なことだと言える。
■ボール
 強豪国ロシアであるが故に、カナエバ、コンダコバに隠れ、なかなか金メダルに手が届かないドゥミトリエヴァであるが、ボールでは完璧な演技で29.025点を叩き出し1位となった。彼女の演技はピボットまでもが表現の一つとなっており、同じ形をしていても他選手とは異なって見えるのが不思議である。2位は28.025点を獲得したガラエバ(アゼルバイジャン)。難しい難度や技に取り組んでいるだけに、今大会においてはまだ完成されていない印象が強かったが、一つ一つの精度は上がっているように感じた。コンダコバは、投げ技が狂ったことにより難度が一つ抜け、27.975点と点数を伸ばせず3位になった。
■クラブ
 1位を獲得したカナエバは、一カ所リスクが出来なかった部分があったものの、ラストまで目が離せない技の連続で28.900点。コンダコバは落下ミスがあり27.850点で2位。3位には、今までとは見違えるほど上半身の表現力が豊かになったイスラエルのリフキンが27.800点をマークし3位に入った。昨年と同じ作品であっても、表現力豊かに力強く演技するリフキンは、違う選手に見えるほどあか抜けて見えた。
■リボン
 リボンと体でメロディーを奏でているようなカナエバの演技は、曲が鳴った瞬間から空気を変える力がある。皆が注目する緊張感の中、研ぎ澄まされた彼女の集中力が更に繊細さを増し、上手く曲を表現しているように見えた(1位 29.100点)。
 カナエバとは違う空気で会場を沸かせたのは2位のコンダコバ。投げが真上に上がってしまう箇所もあったが、彼女にしか出来ないであろうスピード感の中で難度も正確にこなし28.600点。3位には、深みのある表現力でミスなくまとめ上げたブルガリアのミテバが28.200点で今大会初のメダルを手にした。
<団体>
■ボール
 昨日よりも落ち着いた印象で伸びやかに演技をこなした日本は、移動などの実施減点も少なく26.100点で2位。まだまだ両手受けが目立つこと、ロシアと比較し難度の精度が甘い点は否めないが、今後この課題がクリアになった時、高得点が狙えるのは間違いない。
 ロシアはチャンピオンにふさわしい演技で28.000点を獲得し1位となった。ロシアチームは演技中において、体の引っ張りが崩れることがない。これは難度に有効なだけではなく、あらゆる事にも対処出来る為に、またミスを最低限に抑える為に必要不可欠なことである。
■フープ2×リボン3
 日本は、連係中の投げ技で大きく場外、エシャッペの2本投げが不発、ラストもリボンの先が掴めず落下するなど、ミスが目立ち23.600点で2位。オリンピックでは、予選を通過し決勝で力を出し切らなければ到底上位には食い込めない。どんな状態でも安定した力が発揮出来るよう、熟練度を増さなければならない。
 ロシアは、総合の時に出来なかった難しい連係を次々と決め、最後まで力強い演技で観客を興奮させた(1位 27.350点)。最後まで集中力が切れないどころか、作品の精度を増してくるあたりはさすがロシアである。
 日本は最終種目においてミスが出たものの、試合を通じて成長を遂げていることは目に見えて分るほどである。今後も試合が続いていく中で、今以上のレベルアップが期待出来るであろう。その為にも今の日本チームにおいて、体調を整えていく術を身につけることも重要な課題の一つであるように思う。
 今回ソン選手が偉業を果たしたことは、同じアジア人である私達に大きな勇気を与えてくれた。しかしそれ以上に、同じアジア人なのに何故日本はこの中堅の壁を超えることが出来ないのか・・・と、悔しい気持ちが勝り頭から離れない。いや離してはならないのである。
 ロンドンオリンピックの権利を勝ち取ることが出来なかった個人においては、リオオリンピックを目指し既にスタートを切っている。他国よりも早いスピードで進化を遂げなければ先がない日本にとって、日本全体が一丸となること、また皆同じ目標を掲げ立ち向かわなければならないのは絶対である。その為にも、今後、最大限の努力をしていきたい。