第65回全日本新体操選手権 男子レポート

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■個人種目
松田陽樹(青森大学)が豊富な技数を多彩に詰め込んだ構成を高い精度でこなす。
武器である膝の可動域を十二分に活かした動きで4種目を乗り切り個人総合を制覇。
2009年の春日克己 選手以来3年ぶりに全日本の王座奪還を果たす。
名門 青森山田高校出身だが卒業生が個人総合を獲った事は前代未聞の快挙である。
社会人チャンプの木村功(清風RG)が熟年選手だからこそ魅せられる演技と曲を最大限にシンクロさせた演技を披露
スティックではピアノの静かな曲にあわせて 一つ一つの音を動きで紡ぐ
呼吸すら躊躇われるほどの静寂の中、演技最終局面においてスティックを視野外にてキャッチ
その瞬間、張り詰めた空気が解けるように会場から歓声が沸いた。
個人総合では惜しくも2位だったが種目別では3種目制覇と社会人チャンプの力を魅せつけた。
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昨年、斉藤剛大(国士舘大学)は、とにかくミスをしない演技で1年生ながら種目別に駒を進めた。
今年もその演技は健在で2年生にして一気に総合3位まで食い込んできた。
特に彼の持ち味はシェネの回転速度とその精度。
他の全日本レベルの選手と比べても素人目にわかるほど格段に早く そしてこれを落とさない。
種目別でもその実力をいかんなく発揮した。
■団体
2008年 インターハイ完全優勝を達成した宮城県 小林秀峰高校出身の日高祐樹が
チームリーダーとして率いる青森大学が全日本団体4連覇を達成。
振り子時計のようなイントロから始まる演技は選手を演者、そして演技のストーリーを想像させる。
体操の世界には「すごい技を簡単にこなし 簡単な技をすごく魅せる」という言葉があるが
青森大学の演技はまさにこれそのものであり、
第一タンブリングの技はタイミングや力配分を間違えると着地時に大きな音を立てて背中からバウンドしてしまう
「宙返り転」系の技を6人全員が「ただの前転」だったかのような完璧な着地を決める。
徒手においては、その腕の一振りが その跳躍の一歩が どの瞬間を切り取って見ても絵になる。
演技の成功を憂うような心理よりも、何かのショーを見ていたかのように演技が終わる。
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昨年、決勝の演技中に選手の負傷により涙を飲んだ国士舘大学が気迫の演技で準優勝。
本番前の練習ではかなり危なげに見える部分もあり予選では少し出遅れた感があったが
それらをきっちり決勝の本番でこなしきるチーム力が国士舘大学の強さの秘密である。
倒立なども伸びのタイミングを3段にバラすという
成功した時と失敗した時の点数も審判の印象も落差が大きいハイリスクな技を
決勝の大舞台で完璧にこなすとその後も団体同時性の高い演技で予選の得点を遥かに上回る高得点を叩きだした。
井原高校が大学チームを抑えて3位の快挙を達成。
2009年全日本ジュニア優勝チームである「井原ジュニア」の選手がチームに入っている
一挙一動 すべての動きが計算しつくされた演技が特徴の井原高校
6人全員で大きな「渦」を思わせるような動きが随所に見られた。
鋭くそして柔らかい動きはこれに近しい動きの難しさを知る女子側からの歓声が大きく
また、荘厳な曲と演技とのシンクロは何度見ても飽きの来ない気持ちの良い演技である。
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今回の全日本では男子側から二組のエキシビション演技が披露された。
宮城県出身のキューブ新体操クラブ
6人の団体メンバーが「三つ子×2組」という天文学的な確率で構成されたチーム。
同時に彼らは「千年に一度」という 2011年東北大震災の被災者でもある。
生活は一変し、練習場も避難所とに姿を変えてしまった。
そういった震災の混乱の中にあっても全日本ジュニア優勝への目標を彼らは諦めなかった。
そんな彼らのひたむきな姿勢は暗く沈んだ被災地の人たちの心にどれだけ励みになったことであろうか
熊本県立水俣高等学校OBらを中心とした一千会
日本一を目指し大学で選手生活を送っていたある日、不慮の事故により現役選手から一転して
夢半ばのまま車椅子での生活を送る事を余儀なくされた杉迫一樹さん
彼の「もう一度 フロアで男子新体操をしたい」という想いに賛同した仲間とともに挑んだ今年の社会人大会
参加こそ二部であったが想いのこもった演技は、会場にいた関係者の心に伝わり
彼の夢見た全日本にエキシビションという形ではあるが演技をする事が叶った。
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■大会を終えて
・一年の集大成として捉える全日本
・選手の集大成として捉える全日本
・競技の集大成として捉える全日本
立場や見方によって全日本にはいろいろな意義や捉え方ができるが
無論、一年の集大成の大会としてはこれ以上ないハイレベルな大会となった。
選手の集大成として見ると2008年、インターハイで別々のチームとして激闘を繰り広げた
日高選手と松田選手が同じ青森大学のチームメイトとして団体のトロフィーと個人総合のトロフィーを掲げている姿や
2009年のエキシビションとして会場を沸かせた井原ジュニアのメンバーが、その後も新体操を続けて今度はエキシビションではなく高校生チームとして大学生と対等に勝負している姿を見ると感慨深い
競技の集大成として考えると、今回の観客動員数は事前にメディアへの露出があった事も影響し異例の大入りとなった。
マイナー競技として国体休止問題に揺れていた10年以上前から今日にいたるまで、海外展開や新ルールなど様々な紆余曲折を経たが
その歩みは決して悪い方向へは進んでいない。
むしろCM化・ドラマ化などのメディアへの露出を経て いよいよこれから本当に「マイナースポーツ」の枕詞を捨て
競技本来の真価が問われるところまで、いよいよ来たのではないだろうか。
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