第34回世界新体操選手権大会レポート6

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現地9月12日、世界新体操選手権シュトゥットガルト大会は、団体総合が行われた。昨年の世界選手権で24カ国に絞られ、今大会の8位までがストレートにオリンピックへの切符を手にすることができる。しかし、どの国の力も接近してきており、狭き門であることは確か。最後まで気の抜けない戦いが幕を開けた。
24チームを抽選でふたつの班に分け、まずはAグループから。このグループには、ロシア、ベラルーシ、スペイン、イスラエル、中国などが登場する。
試技順2番で上位クラスのスペインが登場。フープ&クラブからの演技であったが、全体を通じて大きなミスはなく、17.450。まずまずのスタートを切った。
そして金メダルを狙うロシアは、リボンの種目から。出だしの連係で移動キャッチがあり、リボンが止まってしまう箇所もあった。落下させたくないという思いから、通常片手で取るべきスティックに、もう片方の手が添えられるようなところもあった。足でリボンを蹴り上げる連係でも、投げすぎて大きく移動。落下ミスはなかったが、どうにかキャッチをしたという状況だった。それでも18.016を得て、金メダルに向けてまずはひとつ乗り越えた。
中国は、リボン同士が空中で当たってしまい、移動があった。いくつか移動キャッチもあったが、落下ミスはなく16.566
続いてイスラエルはフープ&クラブから。日本の最大のライバルであるが、交換で落下すると、イスラエルの売りである”安定感”に欠け、16.950
そしてメダルを狙うベラルーシは、リボンが空中で接触し、落下。連係でも大きく移動し、交換でも移動キャッチ。ラストの2本投げも移動、不正確なキャッチとなり、16.383。最悪のスタートとなった。
Aグループの2種目目。スペインはリボンの種目もほぼミスなく決め、17.450。2種目合計で34.900
ロシアはリボンより落ち着いた演技で18.250。18点を超えるチームはそうそうないため、この時点で金メダルをほぼ確定させた。
あとはメダル争いであるが、イスラエルはリボンの種目で、若干のキャッチ移動はあったがこらえて、17.333 合計34.283。まだBグループにも強豪、中堅が残っているため、メダルは厳しくなった。
ベラルーシは、実力を出してフープ&クラブをミスなく終え、17.633。しかしリボンの点が悪すぎたため、34.016。Aグループを終えて、ロシア、スペイン、イスラエル、ベラルーシの順位。ベラルーシはメダルを逃してしまう。
続いてBグループ。Bグループには強豪イタリア、ブルガリア、中堅のウズベキスタン、フランス、アゼルバイジャン、ウクライナなど、そして日本が登場する。
まずはウズベキスタンのリボン。このところグイグイと力をつけているウズベキスタンであるが、交換で隣の選手同士が近くなり、相手のリボンの裾を巻き込む形になってしまった。交換の投げも低く直球になり、どうにかキャッチしたが、リボンの裾が場外に出た。連係でも落下があり、15.700。苦しいスタートとなった。
フランスのリボンは、交換の移動が多く、ラストの連係でも落下。16.133。
アゼルバイジャンのフープ&クラブは大きなミスはなく16.866。
ブルガリアのリボンは、 わずかな移動キャッチはあったが大きなミスはなく、17.783。メダル獲得に向け、好発進した。
そして日本が登場。真新しいレオタードに身を包み、明るいオーラを放ちながら登場した。フープ&クラブでは連係のころがしのキャッチが不正確になったが、全体を通じてクリアな演技を見せた。エネルギーもあり、17.316
イタリアのフープ&クラブは、大きなミスはなく17.716。メダル争いはイタリアとブルガリアに絞られた感がある。
ウクライナのリボンは、出だしのジャンプをしながらの投げで、リボンの裾が足にからまり、うまく飛ばずに落下。16.400。ウクライナも苦しいスタートとなった。
Bグループの2種目目。ウズベキスタンのフープ&クラブは交換で2人が大きく移動。ほかの部分はミスはなく、16.866。合計32.566
フランスのフープ&クラブは前半は順調な滑り出しを見せたが、中盤の連係で落下すると、後半の連係でも落下。一度崩れると止まらなくなる傾向がある。15.183
アゼルバイジャンのリボンは、連係でリボンを投げられずに落下。結び目もできて15.666。合計32.532
ブルガリアのフープ&クラブは、ライオンキングの曲に乗せ、重量感のある演技を見せた。イタリアンスキーでの跳ねはあったが大きなミスはなく、17.800。合計35.583でスペインを抜いて2位に躍り出た。
そして日本のリボン。わずかな移動キャッチはあったが、動きで対処しながらキャッチしているので、ざわつくことはない。フープ&クラブと同様、終始落ち着いており、手具もよく見えていた。ラストの4本投げは少し寄ったが、無事にキャッチ。美しく可憐に舞って、17.366。合計34.682でスペインには及ばなかったがイスラエルを抜き、その時点で4位。あとはイタリアの結果を待つばかりとなった。
そのイタリアのリボンは、出だしからうまく噛み合っていない印象があった。連係での移動や、不正確な体勢でのキャッチがあり、ついには連係で落下。17.116。合計34.832で、34.682の日本は抜いたものの、34.900のスペインにわずかに届かず、4位に。しかしここでイタリアからinquiryが提出された。inquiryとは、自国の難度点に不満がある場合に提出するものであるが、提出された場合、FIG技術委員がビデオを見ながら検証。その後難度点を確定させる。たいていはそのままの点数であるが、ときには0.1上がる場合もあるし、下げられる場合もある。
ビデオ検証が続く間、それぞれの国は国旗を振りながら、結果を待った。そして「ブロンズメダル、スペイン!」というアナウンスが流れ、2種目をミスなく演技したスペインが銅メダルを獲得した。
結局イタリアの難度点は0.05下げられ、リボンの得点は17.066に。合計34.782で4位が確定した。
結果
1位ロシア
2位ブルガリア
3位スペイン
4位イタリア
5位日本
6位イスラエル
7位ベラルーシ
8位中国
ここまでがオリンピックの切符を獲得した。あと2枠が今大会で決まるが、大陸枠などの条件を考慮して決定される。あとは来年4月にリオで開催されるテストイベントが次のオリンピック予選となる。
3位のスペインが34.900
4位のイタリアが34.782
5位の日本が34.682
日本は4位のイタリアまで0.1、表彰台までも0.218という僅差だった。
5位入賞でのオリンピック枠獲得を目標にしてきたが、それを達成できた。選手は非常に良い練習を積み重ねてきており、それが形として現れたといえよう。またアテネ、北京、ロンドンと、個人、団体両方の出場は果たせてこなかったが、リオでは個人、団体ともに出場枠を獲得できた。支援していただいた多くの方々に御礼申し上げたい。そしてやはり選手の頑張りに拍手を送りたい。
明日は大会最終日の団体種目別決勝。気持ちをリセットし、やってきたことを信じて演技してほしいものである。
リボン出場選手
杉本早裕吏/松原梨恵/畠山愛理/国井麻緒/横田葵子
フープ&クラブ出場選手
杉本早裕吏/松原梨恵/畠山愛理/熨斗谷さくら/横田葵子
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