第34回世界新体操選手権大会レポート5

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現地9月11日、世界新体操選手権シュトゥットガルト大会は、個人総合決勝が行われた。個人総合予選を勝ち抜いた24名。予選1位から12位はAグループ、13位から24位をBグループとし、予選16位の早川さくら、18位の皆川夏穂はともにBグループである。そして試合はBグループからのスタートとなった。
この大会でオリンピックの切符を獲得できるのは、上位15枠。Aグループが12名ということで、Bグループの3位までに入れば、Aグループ終了を待たずしてオリンピックの切符を獲得できることになる。
しかし、今年のBグループには、ベラルーシのHALKINA、イスラエルのFILANOVSKY、ウズベキスタンのNAZARENKOVA、ブルガリアのVLADINOVA、MATEVAなど、種目別ファイナルにも顔を出す選手がいる。早川や皆川も力の上では遜色ないが、2人はまだ安定感が乏しい。上位3位に入るのはなかなか難しいと思われた。
皆川はリボンの種目から。非常に落ち着いていて、ローテーションの終末もきれいであった。17.533で滑り出しは上々である。
早川はクラブの種目から。早川も冷静で、投げの精度は予選より良かった。ひとつひとつの技を丁寧に行い、17.550。早川も好スタートを切った。
そんな中、第1種目は、MATEVA、FILANOVSKYが崩れた。MATEVAはフープのDERで落下。16.500。FILANOVSKYは出だしのDERでリボンを大きく投げすぎて落下、場外。15.800。FILANOVSKYは、これまでの大会で、失敗しないことでいつも上位に位置していた。それがこんな大事な場面でいきなり大きなミスをするとは。試合は本当にわからないものである。
2種目目に入ると、日本勢がやや崩れた。皆川はフープの種目であったが、MGキックターンでの起きでバランスを崩し、ブリッジのように両手を床に着いてしまう。若干、フープの操作も硬くなっていたが、ローテーションは決めていて、なんとか持ちこたえた。16.900
早川はリボンの背中ころがしでポトリと落下。そこからやや消極的になった感じがした。16.766
上位3位になるには、もうミスはできない。
3種目目は、皆川はボール。このボールは素晴らしい出来であった。ころがしや投げの精度もよく、難しい技も次々にこなして17.700。世界選手権で自己最高得点を更新するとは大したものである。
早川はフープ。登場したときの顔から、まだ先ほどのミスを引きずっているように見える。案の定、出だしの軸回しで落下。あとはよくガマンして17.116だったが、なんとか最終種目は決めてほしい。
そして最終種目。皆川はクラブ。ロシアやベラルーシの選手に負けないほどの中身の濃さがあるが、予選で落下ミスをしている種目だけに、見ている方も気が気ではない。
いくつかプログラム通りではない箇所、移動してのキャッチはあったが、最後までこらえて17.266。踏ん張りをきかせた。
早川も、ボールでは美しく舞った。ほぼミスのない演技で17.583
早川まで演技を終えた時点で、1位が4種目をコンスタントにまとめたHALKINA。2位が皆川。3位が早川。
しかしそのあとの演技者VLADINOVAがBグループのトップに立ち、皆川が3位、早川が4位に。あとはNAZARENKOVAの出来を待つことになった。NAZARENKOVAがボールで17.367を出すと、皆川に並ぶ。そのNAZARENKOVAのボールの演技は、ころがしでの跳ね、バランスでのわずかなぐらつきはあったものの17.367は出せるかもしれないし、出ないかもしれないという微妙なもの。電光掲示板とのにらめっこが続き、その時間が異常に長く感じたが、出た得点は17.250。
NAZARENKOVAはB組4位で、この瞬間、日本はオリンピック出場枠1枠を確定させた。
あとはAグループから脱落者が出るかどうかで、2枠獲得できるかが決まるが、それは望みは薄いと言えよう。
そしてAグループの試合開始。よく、「オリンピックには魔物が住む」と言われるが、この個人総合決勝にも魔物が住んでいたらしい。
Aグループの試技順1番のMAMUNは、フープのDERで投げすぎ、大きく移動してなんとかキャッチ。金メダルを狙うには痛いスタートとなった。
ウクライナのRIZADINOVAは、ローテーションをばんばんと決め、これ以上ない素晴らしい演技をしていたのに、最後のMでクラブが大きくそれ、キャッチはしたが、そこは場外だった。17.033でメダル争いから外れた。
メダルを狙うベラルーシのSTANIOUTA、韓国のSONは伸び伸びと演技し、18点台に乗せる。
しかし、2種目目に入ると、今度はKUDRYAVTSEVAにミスが出る。クラブは安定した演技で19.000だったが、2種目目のリボンでは、途中足に絡まり、ラストのキャッチも、リボンはキャッチしていたがスティックの部分は落下となった。18.516
MAMUNの2種目のボールは大きなミスがなく、18.966を獲得したので、まだまだ頂点が誰になるかわからない。
そしてSTANIOUTAにも落下ミスが。ボールのMで落下し、17.783。これは韓国のSONに表彰台が見えてきたと思いきや、リボンの出だしで、リボンの引き戻しがうまくいかないと、気持ちの糸が切れたのか、次々とミスを犯した。ラストのDERも落下し、16.116。安定感が売りのSONにいったい何があったのか。きっとメダルが狙える位置にいるだけに、狙いすぎてしまったのではないだろうか。そこにミスが出てしまったせいで、プツッと糸が切れてしまったのだろう。SONも表彰台が遠のいた。
上位陣が揃いも揃ってミスをするのを見たことがない。あるものは金メダルを狙いすぎ、あるものは表彰台を狙いすぎてしまった結果なのであろう。
結局優勝したのはKUDRYAVTSEVA。リボン以外はほぼ完璧に決め、キエフ大会、イズミール大会に続いて3連覇を果たした。
2位にMAMUN。クラブは大きなミスはなく19.000を出したが、最終種目のリボンでは背中ころがしで落下。DERでも大きくステップを踏むなど、最後まで本調子とは言えなかった。
3位にはSTANIOUTAが入った。クラブを大きなミスなく、こらえると、リボンでは投げすぎたリボンを根性でキャッチした。
4位はジョージアのPAZAVA Salome。それほどプロポーションは良くないが、身体難度もしっかりと見え、ローテーションも素晴らしい。なんといっても彼女自身のカラーがあり、どの種目にもテーマがある。誰もやっていないステップや技、動きを取り入れていて、実に魅力的である。リボンの出だしでリボンの絡みはあったが、どの種目もエネルギー全開で演技し、フープとクラブで18点台に乗せた。KUDRYAVTSEVAと同じぐらい会場が湧いた選手である。
5位にRIZADINOVA。韓国のSONは、フープのDERキャッチが不正確となり、ボールのMでも落下。最後まで安定感は戻らず、10位に沈んだ。
USAのZENGは、4種目をミスなく終え、8位に食い込んだ。
Aグループからの脱落者はおらず、最終順位は皆川15位、早川17位。日本は、北京、ロンドンと逃していた個人でのオリンピック出場枠を確保できた。関係各位に御礼申し上げるとともに、選手の頑張りに敬意を表したい。
明日は団体総合。オリンピックの切符を得るだけでなく、なんとか上位に食い込みたいものである。
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