新体操W杯イタリア大会レポート2

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【大会2日目】
《個人総合後半》
 新体操W杯ペサロ大会2日目は、個人総合後半と団体総合後半が行われた。昨日7位につけていた皆川夏穂は、後半種目のクラブとリボンは作品のこなしがまだうまくいっていないのか、全体的に弱気に見えた。クラブではキャッチの不正確さが随所に見え、難易度の高い投げのR(リスク)では落下。連続ジャンプの2回目もうまく跳べず、昨日と比べて安定感を欠く演技となった。
D7.100、E7.900 15.000
リボンは出だしのAD(D得点に値する手具操作)のキャッチで身体にリボンが絡まり、Rの投げも真上に上がったためにRが成立しないなど、いくつかのミスが出た。またラストのジャンプでも着地で大きく体勢を崩し、D4.700、E7.250 11.950で順位を22位まで落とした。
立澤孝菜は今日も比較的落ち着いていた。クラブでは出だしのADで、クラブでクラブを押さえることができなかったが、ほかは躊躇なく投げ受けをし、D7.500、E7.600 Timeペナルティー0.05 計15.050
リボンはBD(身体難度)ではエカルテの上体が少し高かったが、全体的にはスムースな演技だった。D6.600 E8.100 14.700
総合順位は皆川のひとつ上で21位。
皆川は3種目を新たな作品としているが、特にクラブなどはこなしが非常に難しい作品ではある。が、躊躇するとその難しさがアピールしきれない。今後ミスを恐れず豪快に演技することに期待したい。
個人総合1位はロシアのSOLDATOVA。2種目とも大きなミスはなかったが、前半種目よりつなぎの悪さがあり、またリボンはADを入れづらいのか、点数は若干低めであった。
クラブD9.200 E8.900 18.100 リボンD8.800、E9.000 17.800
2位は同じくロシアのDina AVERINA。
クラブではD10.000、E9.250 19.250の高得点をたたき出した。
3位にはベラルーシのHalkinaが入った。
リボンはとても流れが良く、BDも明確であったが、ラストのADで惜しいミスが出た。
4位はアメリカのZENG。
この選手の良いところは、どの大会でもほぼミスをしないということである。
すべてをきっちりと行う意思が見え、それゆえに得点が安定していき、じりじりと順位を上げている。
5位はブルガリアのTASEVA。6位は同じくブルガリアのVLADINOVA。
ふたりとも手具操作に長けているので、D得点が伸びやすい。
ルール変更後の個人の演技は、全体的に「忙しい」「回ってばかりいる」という印象である。
D得点のうちBD(身体難度)の数には上限があるが、AD(得点に値する手具操作)の数には上限がない。そのため、BDであまり点数が稼げない選手は、次々とADを入れることになる。BDやADの羅列ではいけないといいながら、結局羅列にしてでも数多く作品に入れ込んだ方が、Dの得点が稼げるので、演技が忙しくなってしまうのである。
またADでも回転することが多く、ジャンプでも回転を入れた方がレベルは上がり、片足軸のローテーションも回転数が増えれば増えるほど得点が上がり、R(リスク)でも回転数を増やした方が得点を稼げるわけであるから、常に回っている印象となるのは当然であろう。
また、リボンでADを入れづらいため、ADがみな似通ってしまっている。足で投げて引き戻す、スティックを転がすなど、誰もが同じような手具操作を行うので、面白みに欠けてしまう。
今後、ルールが浸透し、整理されてくれば解決できる点もあるだろうが、ADを入れ続けることに拍車がかかっていくと、新体操の優雅さが消えてしまうという懸念がある。
《団体総合後半》
日本(フェアリージャパンPOLA)は、けがのため離脱した熨斗谷に替えて、今日も竹中が出場した。
大会前のロシア合宿から演技の各所を変更し、また選手交代があったことで若干演技を変更。出場する直前まで演技に手を加えたことで、演技が身についていない印象であった。そのせいだけではあるまいが、ロープとボールにその場での落下があり、15.750。順位を9位まで落とした。
今回はアクシデントによる選手交代ではあったが、国際大会初出場の竹中が問題なく演技できたことは収穫であった。
今後も演技や選手をいろいろと試しながらやっていくことであろうが、東京オリンピックまでにはそれほどの時間はない。気を引き締めて戦わなければならない。
1位はブルガリア。
本日のロープ&ボールの作品も非常に難しく、工夫がある。18.650でこの種目も1位となり、総合も制した。
選手は新しい選手であるが、能力も高く、現状ではロシアより上であろう。
総合2位はイタリア。
イタリアはラストが若干曲に合わず、ブルガリアにわずかに届かなかった。
総合3位はウクライナ。
大きなミスはなく、リズム変化もある作品で、17.900。
2種目合計で銅メダルを獲得した。
総合4位はベラルーシ。
キャッチに移動があり、中盤に動きのバラツキがあった。
落下ミスはなかったがEの得点が伸びず16.850。
総合5位はロシア。昨日手具なしで終了するというミスで10位という結果であったロシアは、今日も完璧とはいいがたい演技であった。ED(手具の交換)が乱れ、キャッチに移動があった。連係でも落下があったが、それでもDは10.000、Eは8.200 18.200。
この種目は3位と追い上げはしたが、総合では5位で表彰台は逃した。
総合6位は中国。
今日の種目も大きなミスはなかったが、得点が伸びず15.950。
昨日は3位で折り返したが、6位となった。
リオオリンピック2位のスペインは、昨日のフープでは連係で2度落下すると、中盤から後半が大きく乱れ、作品がわからなくなった。今日のロープ&ボールでもEDで場外。連係で場外し、予備手具に差し替え、EDで落下、R(リスク)で落下と大きなミスを繰り返して8.600。総合では最下位の18位となった。しかし、若い選手たちだけに、すぐにチーム力を上げていくことだろう。
現地4月9日は種目別決勝が行われ、皆川夏穂がフープに、団体がフープ5に出場する。
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