第35回世界新体操選手権大会レポート1

報告者:

【大会初日】大会情報・結果へ
第35回世界新体操選手権大会は、イタリア・ペサロにて8月30日に開幕した。
日本からは団体競技にフェアリージャパンPOLA、個人競技に特別強化選手の皆川夏穂と喜田純鈴が出場。
初日の今日は個人総合予選前半と種目別決勝フープ、ボールが行われた。
《個人総合予選、種目別予選》
90人が出場している個人総合予選で、日本から先に登場したのは喜田純鈴。
ボールでは、非常に精度の高い演技を繰り広げ、ローテーションの回転力も問題なかった。
中盤、足蹴りのボールがコースを逸れたが、あわてずにキャッチ。落ち着いて対処していたが、ラストのAD(加点の可能性のある手具操作)の投げがななめになり、そのまま回転に入って脚でバウンドさせたため、ボールがななめに上がってしまい、キャッチできず。
最後の最後でミスが出てしまい、手具なしで演技を終えることになってしまった。14.600(D7.400 E7.200)
次のフープではどう立て直してくるかが注目されたが、喜田は気持ちを切り替え、これまでの大会より動きがしなやかでよどみなく演技した。
MGキックでのキャッチが、フープの片側が床に着いたように見えたが、ラストまで集中力を切らさず演技。
17.000(D8.700 E8.300)という高い点数を得た。
一方の皆川夏穂はフープから。R(リスク=手具を投げ上げ、2回転以上の回転を行う)の終末がプログラムどおりでなかったり、ローテーションがはまりきらなかったりしたが、大きなミスはなく17.100(D8.600 E8.500)。
ボールもローテーションがはまらないが、伸びやかに演技し、16.900(D8.500 E8.400)。
まずまずのスタートを切った。
前半を終えて1位はロシアのDina AVERINA。両種目ともあぶなげない演技でフープ18.950、ボール18.850。
2位は同じくロシアのArina AVERINA(Dinaとは双子の姉妹)。
3位にはイスラエルのASHRAMがつけている。Rのキャッチには、少し間ができてしまったりするのであるが、この選手は回転をしてからキャッチまでの間が短く、2種目ともほぼ完璧な演技を見せた。
同点4位にベラルーシのHALKINA、ブルガリアのVLADINOVAがつけ、皆川は6位に。
喜田も大きなミスがありながら14位と好位置につけている。
そしてこの日は2種目を終えたのちに種目別決勝が行われた。
A~Fグループまで演技を終えて、フープの順位は皆川が7位、喜田が8位。ボールは皆川が8位で、あとはGグループの14人の演技を残すのみ。
しかし、このグループにはベラルーシのHARNASKOやウクライナのMAZUR、DIACHENKOなどが顔を揃えており、最後まで残れるか否かギリギリのところであった(種目別決勝進出は各種目8名ずつ)。
が、HARNASKOやウクライナ勢も16点台中盤どまりで、結果、フープでは皆川と喜田がそろって決勝進出を決め、皆川はボールにも出場することになった。種目別に2名ともが出場できたのは、ロシアと日本のみであり、日本の層が徐々に厚くなってきたと言えよう。
《種目別決勝フープ》
試技順1番は皆川夏穂。
皆川は個人総合予選のときと比較するとBD(身体難度=ジャンプ、バランス、ローテーション)の精度が上がり、Rの終末もプログラムどおりに行えて、非常に伸びやか、かつダイナミックな演技であった。実施減点も少なく、17.700(D8.900 E8.800)。
2番はベラルーシのHALKINA。大きなミスはなかったが、エカルテや上体を反らせるジャンプなどの精度を欠き、17.600。
3番はDina AVERINA。大きなミスはなく19.100と19点台に乗せてきた。
4番はUSAのGRISKENAS。予選では皆川を上回る17.300を出していたが、Rで落下して15.750。
5番はイスラエルのASHRAM。予選では18.600という高得点を出していたが、ジャンプターンでのキャッチで落下。その際に13m四方のラインを越えてしまい、0.3の場外ペナルティ。16.900
6番は喜田純鈴。大きなミスはなく、実施点は予選より上げたが、キャッチに不正確なところがあり、16.650(D8.200 E8.450)。
7番はブルガリアのVLADINOVA。
全体的に予選より出来は悪く、不正確なキャッチや操作が見られた。
17.550(D8.800 E8.750)。
この時点で皆川は2位のため、メダルが確定・・・と思っていたら、ブルガリアのVLADINOVAがインクワイヤリーを提出。これは自国のD得点に納得がいかない場合に提出が許されているのであるが、今大会は予選でも多くの国がインクワイヤリーを提出していた。そしてそのたびに得点が0.5から0.7も上がっていたため(ビデオチェックが行われた結果)、皆川とVLADINOVAの差が0.15しかないことを考えると、ひっくり返される可能性は大きかった。
しかし、結局VLADINOVAの得点は変わらずということになり、皆川のメダルが確定した。
ラストはロシアのArina AVERINA。
Dinaには一歩及ばず、19.000。
皆川はロシアのDina AVERINA、Arina AVERINAに次いで、銅メダルを獲得した。
《種目別決勝ボール》
皆川は、フープと比較するとプログラムどおりではない箇所がいくつか見られ、16.300。
この種目を制したのはArina AVERINA。2位にDina AVERINA。3位にはブルガリアのVLADINOVAが入った。17.950
イスラエルのASHRAMはわずかに及ばず17.925。
ベラルーシのHALKINAは17.800。インクワイヤリーを提出したものの得点は変わらずで、メダルを手にできなかった。
旧ソ連が崩壊して、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタンなど、国が分かれてからの大会で、日本選手が入賞、あるいはこうしてメダルを獲得することなど至難の業である。
それでも皆川、喜田の活躍により、日本人でもやれるということを証明してくれた。
しかし、試合はまだ始まったばかり。明日は個人総合後半が行われるし、その後は個人総合決勝が待っている。
気持ちを一に戻し、戦っていってほしい。