第36回世界新体操選手権レポート5

報告者:山﨑浩子

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第36回世界新体操選手権ソフィア大会5日目は、4日間にわたって行われた個人総合予選の結果から、上位24名(各国最大2名)による個人総合決勝が行われた。
日本からは皆川夏穂、大岩千未来が決勝に進出。

<個人総合決勝>
個人総合予選1位~12位はAグループ、13位から24位はBグループとなり、まずBグループから行われた。
試技順1番の選手から順に、フープ、ボール、クラブ、リボンの順番で演技が行われ、試技順5番の大岩はフープの演技から。

緊張からか、出だしから動きが硬く、フープの扱いに手間取っている。アチチュードのローテーションもうまくはまらず、なんとなくリズムに乗り切れない。
すると後方支持ありのローテーションではまったく体軸がとれず、転倒。
1種目目で大きなミスが出てしまった。
14.200(D難度点7.300 E実施点6.900)

予選は1日に1種目ずつ行われてきたが、決勝は短時間で4種目をこなさなければならない。
ミスが出てもすぐに気持ちを切り替えられるかどうかで4種目の戦い方が変わってくる。

2種目目はボール。
大岩は先ほどとは人が変わったように伸びやかに演技し、持ち味のローテーションも回転数を稼いだ。
硬さがすっかりととれ、集中力を取り戻した。
17.200(D9.300 E7.900)

3種目目はクラブ。
ボールでと同様、落ち着いた演技を見せる。
予選でミスが出たリスクも決め、ローテーションも決める。
クラブでクラブを押さえてキャッチする場面で、クラブがこぼれたが、全体的には安定した演技であった。
17.250(D9.400 E7.850)

最終種目はリボン。
前半のリボンを投げて引き寄せる技でスティックを触りながら落下。完成度の低い技であるが、ここは決めたいところであった。
ラストの投げ技でも予定通りにはいかず、14.800(D7.800 E7.000)
4種目合計63.450で大岩は23位。
2種目でミスが出たため、順位を落としてしまったが、今春特別強化選手に選ばれたばかりの大岩は、今大会で大きく飛躍し、また課題も多く見つかった。
BD(身体難度=ジャンプ、バランス、ローテーション)のうち、特にローテーションは武器になるので、安定感を持ちたいところ。
そして、AD(加点対象となる手具操作)の数を増やし、持ち点(構成上の得点)を上げていくこと。
動きのつなぎを良くしていくこと。
あとは何よりしっかりとした体を作り、何日間試合があっても戦える力を蓄えていくことが重要であろう。

Aグループで演技した皆川は、ボールの演技から。
今季はボールの演技は比較的安定しており、予選ではやらなかったADも入れ込んだ。
美しい演技で18.300(D9.700 E8.600)。まずまずのスタートを切った。

2種目目はクラブ。
前半のADの投げが乱れたが、移動してなんとかキャッチ。全体的には落下ミスを回避してこらえたが、BDの後方支持ありのローテーションが1回転となり、BDの得点が稼げず、17.250(D9.000 E8.250)。

3種目目はリボン。
昨日の予選でのリボンはすばらしく18.100。しかし種目別決勝ではミスに次ぐミスで10.600と、浮き沈みが激しかったが、さて今日はどんな演技を見せるのか。
遠い日本から応援団がかけつけ、精一杯の声援を送る中、今日はしっかりと踏ん張った。
が、後方支持ありのローテーションが1回転となり、スケールのバランスもキープが甘くなるなどBDが伸びず16.950(D8.700 E8.250)。

最終種目はフープ。
パンシェのバランスがぐらつきそうになると、連続してバックルのパンシェバランスをやる予定であったが、いったん足を下ろしてバックルパンシェバランスに入り、冷静な対応をした。
Rのキャッチが不正確になったが18.450(D9.800 E8.650)。
合計70.950で予選順位と変わらず12位。

皆川は、今日の決勝においては4種目とも落下ミスなしで演技を終えた。決して悪い出来ではなく、E得点は高い点数を獲得している。しかし、上位陣と比較すると、D得点において戦えるところまでいっていない。
皆川は現在のところローテーションの回転数では得点が稼げないため、フェッテバランスなど確実に点数をとれる、かつ実施減点が少ない難度にチェンジするべきであると考える。
またさほど難しくないADを入れ込み、持ち点を上げていかなければ、上位に食い込むのは難しいだろう。
皆川の良さは美しく深みのある動きである。
しかし、それにとらわれすぎると、現行ルールでは点数が稼げない。
芸術よりになっているところを少しだけスポーツよりにして、得点を稼ぐ手段を考えていくことで、突破口が見いだせるに違いない。

個人総合1位に輝いたのはロシアのDina AVERINA。
リボンのみステップ中の落下があったが、残りの3種目は多少投げが乱れても動じず、D得点も11点台後半。
危なげなく金メダルを手にした。
81.450

2位はイスラエルのASHRAM。
予選は珍しいミスを重ねて精彩を欠いていたが、きっちりと決勝に照準を合わせてきて、4種目とも落下ミスなし。
パワフルな演技で銀メダル。
79.700

3位争いは前半を終えるまでまったくわからなかった。
まずDinaと金メダル争いをすると思われていたロシアのSOLDATOVAは1種目目のリボンで2度の落下ミス。
17.050で1種目目を終えた時点ではAグループ12人中11位と最悪の滑り出しであった。

1種目目では1位Dina、2位は地元ブルガリアのVLADINOVA。フープで気迫あふれる演技を見せて19.350という高得点をたたき出した。

2種目目を終えると1位はDina、2位にASHRAMが入ってきて、3位にはVLADINOVAに代わり、同じくブルガリアのTASEVA。
ブルガリア勢は今季のW杯などではメダルを獲得していただけに、この個人総合でもメダルを狙いたいところ。
SOLDATOVAの2種目目フープはすばらしい出来で21.275。 他の種目を20点超えでいけば、まだまだメダルからは見放されていない位置にいる。

そして3種目目はブルガリア勢が崩れた。
2種目目まで好調だったVLADINOVAは、3種目目のクラブのADで落下すると、続くR(リスク=手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う)でも落下。ほかのRでも落下し、14.900(D8.200 E6.700 )。メダル争いから離脱した。

TASEVAも3種目目のクラブで、最後のRでキャッチしたと思ったらクラブがこぼれ、落下ミス。17.600
少しメダルが遠ざかった。

その代わりに上がってきたのがSOLDATOVA。
3種目目のボールでは、腰でボールをキャッチしてからMGキックのローテーションに入るところが、うまくボールをはさめず、再度やり直すというミスは出たが、難易度の高い技を決めて20.400。
3種目終了時点で1位Dina、2位ASHRAM、3位SOLDATOVAと、メダル争いの本命が顔をそろえた。

SOLDATOVAは4種目目のクラブも多少慎重になりつつも落下ミスなく終えて20.450。合計79.175で3位となり、最悪のスタートからメダルまで上りつめた。

4位はウクライナのNIKOLCHENKO。彼女も1種目目のリボンはRで落下して16.900。12人中最下位の滑り出しであったが、他の種目をすべて19点台に乗せ、4位まで浮上した。

5位ベラルーシのHALKINA
6位ブルガリアのTASEVA
7位イタリアのBALDASSARRI
8位USAのZENG
9位イタリアのAGIURGIUCULESE
10位ベラルーシのSALOS
SALOSはBグループであったが、4種目とも大きなミスなく終え、Aグループの選手の中に食い込んだ。

11位イスラエルのZELIKMAN
12位皆川
途中まで3位であったブルガリアのVLADINOVAは2種目のミスで15位に落ちてしまった。
BグループのジョージアのSalomeも、ボールとリボンで落下ミスが出て、21位にまで順位を落とした。

1か所のミスで2点や3点を簡単に失う場合があり、その日の出来により順位は大幅に変動する。
そしてロシア、イスラエル、ウクライナ、ベラルーシ、ブルガリア、イタリア、USA、スロベニアと、力のある選手が多いため、8位に入賞することも容易ではなくなってきた。

本年はオリンピック予選ではなかったが、来年は予選となる。
計算高く持ち点を上げることと、タフな試合をタフに戦える体力・精神力を身につけなければ、戦いの舞台に上がることはできないだろう。

明日は大会6日目。
団体総合が行われ、日本からはフェアリージャパンPOLAが出場する。