第72回全日本新体操男子レポート②

報告者:男子新体操委員会

【個人予選2日目】
予選2日目のロープ、クラブの2種目はミスも出やすい種目のため順位が大きく入れ替わることもある。選手たちは昨日以上の集中力と精度を求められる日となった。

午前中に登場したのは初日2位につけた川東選手であった。
1種目目のロープはたるみや手具の停止などが得点に大きな影響を与える。そのため高得点が出づらい種目として位置づけられているが、この日の川東選手は素晴らしい精度を見せてくれた。序盤からスピード感あふれる演技に加え、多彩な手具捌きを淀みなくこなし、完成度の高い完璧な演技を見せてくれた。その結果18.400の高得点をたたき出し最終種目につなげることに成功した。
最終種目はクラブである。ここでも川東選手の最も得意とする動きを惜しみなく取り入れた構成を、迫力ある動きではあるがどこか透明感も感じるような美しい表現で演じきり18.300の得点を獲得した。その結果73.100で安藤選手の結果を待つこととなった。

午後に登場した安藤選手はこの後半種目を得意としている。
タンブリングのオリジナリティーは元よりスピード感のある手具操作、毎試合ごとに進化する表現力を武器に川東選手の得点を上回る挑戦が始まった。まず、1種目目のロープでは冒頭の投げ技をきっちりと決め得意とする3連続のタンブリングにつなげた。ほぼ完璧に演技をしていたが中盤以降の投げの処理に少し手間取る瞬間があった。ノーミスで演じきったように感じたが、それらの一瞬の戸惑いが得点に影響し18.125の得点にとどまった。その結果最終のクラブで18.550以上の得点を獲得しない限り川東選手を逆転することができなくなってしまった。しかし、安藤選手は全日本インカレの際にこのクラブの演技で18.700得点を獲得しその演技は高い評価を得ている。
完璧に演じ切れば逆転の可能性はある。最後まで目の離せない展開となったフロアに安藤選手が登場した。切ないメロディーに合わせてここまで磨いてきた表現力を最大限に発揮し演技がスタートした。冒頭の4動作を難なくこなし、安藤選手のオリジナルである第一タンブリングに入った。このタンブリングはロンダードからテンポ、バク転をはさみ最後の宙返りの途中で空中にクラブを片方投げるオリジナルな技である。練習でも幾度と無く完璧にこなしていたがこの時は少し離すタイミングが遅れたように感じた。そのため最後のキャッチングの際に手具を取りこぼし痛恨の落下をしてしまった。この時点で川東選手の点数をに追いつくことは難しくなってしまった。ここで集中力が途切れミスが続くこともあるが、安藤選手は最後までハイレベルな内容をやり切り前半のミスを忘れさせるような素晴らしい演技を披露してくれた。その結果、落下はしたものの17.900の得点を出し個人総合2位の座についた。

結果、川東選手が4年生にして初の全国タイトルを獲得し嬉しい初優勝を勝ち取った。

川東選手、安藤選手に続いて 3位になったのは初日から4種目ノーミスの演技で堀孝輔選手が嬉しい初メダルを獲得した。堀選手は高校時代から安藤選手のライバルとして常に大会で上位争いをしてきた。しかし、今大会では3位に入賞したが安藤選手とは4種目合計で約1点の差をつけられた。安藤選手がミスをしたことを考えるとメダルは獲得したものの少し悔しさが残る結果になったのではないかと想像する。ただ、堀選手は毎試合ごとに進化し周囲を驚かせることも多々ある。最終学年となる来年はまた強くなり安藤選手との名勝負を期待したい。

今大会では黄金世代である大学3年生がほぼ上位を占めたが(15位までに大学3年生の世代が11名いる)、その中で5位入賞した向山蒼斗選手(国士舘大学1年: 2018年度インターハイ優勝)、7位田中啓介選手(国士舘大学2年: 2016年度高校選抜優勝、2017年度ユース優勝)の2名は若手ながら大健闘したと言えるのではないだろうか。

また、8位入賞の臼井優華選手は言わずと知れた名選手がある。 2014年から2018年までの5年間個人総合でメダルを逃した事は無い(2016年度は個人総合優勝)。今大会ではスティックで少し足首を故障し後半の種目のパフォーマンスに影響与えた。その結果、ロープでミスが出て8位にとどまったが、社会人3年目でも全日本上位クラスの実力を持つ脅威の選手であることを十分に証明してくれた。

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