2020新体操モスクワ・グランプリレポート1

報告者:山﨑浩子

2020東京オリンピックシーズンの幕開けは、ロシアで行われたモスクワグランプリとなった。
日本からは個人競技のグランプリに皆川夏穂、インターナショナル部門に大岩千未来が出場。参加する予定であった団体は、コンディション調整に重きを置くため、今回は出場を見合わせた。

<グランプリ>
皆川はフープの種目から。
前半のフープのくぐり抜けのあとに、フープが足に引っかかり、落下のような形になる。
後半のリスクでのキャッチもその場での落下となった。
投げの移動もあり、出だしの種目は少々不安定となった。
D1(BD身体難度、Sステップ)4.20
D3(AD加点対象となる手具操作、Rリスク=手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う)8.10
E(実施点)7.05 計19.30

ボールはフープと比較して落ち着きを取り戻し、増やしたADにも果敢に挑んだ。
1箇所ADキャッチが行えないところがあったのと、フェッテバランスでボールがこぼれそうになったがこらえて実施。
D1 4.20
D3 9.20
E  8.30 計21.70  2種目合計41.00
昨年と比べて、D3のポイントが格段に上がっており、またBDの実施にも張りがある。
重心の高さが見えてきて、実施力はとても良くなっていると言える。
脚の血行障害との戦いでもあるが、自分の体と相談しつつ、しっかりとした練習もできるようになっているため、今後少しずつ階段を昇って行ってほしい。

現在の1位はロシアのDina AVERINA。
フープ、ボールともに大きなミスはなく世界選手権さながらの演技を見せた。
後方支持ありのローテーションが少しほどけ気味であったが、なんとか暫定1位を確保。
フープ
D1 5.20
D3 9.00
E  8.85 計23.05
ボール
D1 4.90
D3 10.80
E  8.95 計24.65  2種目合計47.70

しかし、すぐ下には新星が粒ぞろい。
2位はロシアのTRUBNIKOVA。
長身で美しくローテーション力もある。加えてADなどの手具操作も巧みであり、なんといっても動きが美しい。
フープ
D1 5.50
D3 9.50 
E  8.60 計23.60
ボール
D1 5.40
D3 9.60
E  9.00 計24.00  2種目合計47.60
わずか0.1の差でDinaを追っている。

3位から6位もロシア。
基本的には各国1名ずつのグランプリ参加であるが、ホスト国であるロシアからは新旧6名が参加。これでもかと新人が気を吐いている。
特に昨年初開催された世界ジュニア選手権でその名が知られたKRAMARENKOは、フープでは落下ミスが出てしまって21.10であったが、
ボールでは24.20。
かかとを上げた形でのパンシェローテーションからエカルテのローテーションに移行するという抜群の身体能力を見せ、BD7.50という驚異的なポイントをたたき出した。
ボール
D1 7.50
D3 8.00
E  8.70 計24.20  2種目合計45.30で現在5位。

4位にボールで落下ミスが出たArina AVERINAがいるが、その差は0.10。
今後もう少しD3をあげていくことができれば、オリンピック候補に名乗りを上げることになるかもしれない。
7位にウクライナのPOHRANYCHNA、8位にベラルーシのSALOS、9位にジョージアのPAZHAVA、10位スロベニアのVEDENEEVA、11位に皆川となっている。

昨年の世界選手権で東京オリンピックへの出場枠、2枠を獲得したのは、ロシア、イスラエル、ブルガリア、ウクライナ、イタリア、USA、ベラルーシの7か国。1枠を獲得したのは日本とアゼルバイジャンであるが、もう1枠を獲得するために、まだ1枠も獲得していないジョージア、スロベニア、ウズベキスタン、ハンガリー、スペイン、フランス、ルーマニアなどと4月のワールドカップシリーズで戦うことになる。
1枠を獲得した皆川は、もう1枠を獲得するための戦いには参加できないため、大岩千未来・喜田純鈴がジョージアのPAZHAVAやスロベニアのVEDENEEVAらと戦うことになり、今大会での彼女らの出来を見守りたい。

<インターナショナル>
インターナショナルには大岩が参加。
腰痛から思うような練習ができておらず、また4種目とも作品を変更したため、不安が多いという状況。出場するかしないかも検討されたが、結局は出場することとなった。
1種目目のフープは出だしのローテーションも決まり、丁寧な演技をした。
コンディション調整不足で若干重い感じがあるが、前日のポディウムトレーニングでの出来を考えると上々であった。
D1 4.80
D3 8.00
E  8.10 計20.90
ボールはバウンドでのキャッチが不明確になり、落下ととられた可能性もある。
フープと同様に丁寧な演技であったが、ローテーションが入り切らないところもあった。
D1 4.50
D3 7.00
E  7.60 計19.10 2種目合計40.00

インターナショナル部門も、現在5位のHARNASKO(ベラルーシ)を除いてロシア勢が1位から8位を独占。
1位のSERGEEVAはフープで25.45と、インターナショナル、グランプリを通じて最高点をたたき出した。
フープ
D1 5.10
D3 11.50
E 8.85 計25.45

9位がウズベキスタンのTASHKENBAEVAで10位に大岩がつけている。

<団体総合>
日本は不参加であるが、各国どんな内容で攻めてくるのか楽しみであった。
参加国は7か国。
本日のボール5の種目はブラジル、ウズベキスタン、トルコ、イスラエル、ベラルーシ、ロシア、フィンランドという試技順である。
ブラジルは落下もあり、26.40。

続いてウズベキスタンは大きなミスなく演技を終えた。
連係の数が非常に多く、
D1(BD身体難度、ED交換、Sステップ)5.70
D3(C連係、Rリスク=手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う)17.90
E(実施) 7.25
計30.85
いきなり、昨年の世界選手権でロシアが獲得した点数を上回った。

イスラエルも大きなミスはなかったが連係の数は少なく29.45

ベラルーシはウズベキスタンよりは連係の数は少ないと思われるが、ひとつひとつの連係の価値が高いのか、
D1 6.40
D3 17.90
E  8.15
計32.45
32点台に突入。

ロシアも前半はこまごまとした連係を数多く入れ、連係の数で言えばウズベキスタンと同じぐらいか。
ラスト近くの連係で落下があり、そのあとの連係を実施せずにラストポーズとなったが、それでも
D1 6.80
D3 18.50
E 7.10
計32.40
わずかにベラルーシに届かなかったが、落下ミスがあってこの点数であることを考えるとまだまだ得点は伸びるであろう。

どの国もざっと連係の数を数えても25個以上は入っている。
日本もこれと同等の内容で練習しているので、戦えないレベルではないが、あとはどれだけ実施力を上げられるかであろう。

初戦であるため、連係における投げのタイミングや、転回時に人や手具を越えているかどうかなど、連係の条件については甘かったように思うが、それでも各国D3のポイントアップに焦点を絞って作品を作り上げていることには間違いない。

今回、イタリアやブルガリアは参加していないが、メダル獲得に向けて、どの国も相当に厳しい戦いとなることが予想される。

明日は個人総合後半と団体総合後半が行われる。
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