第73回全日本新体操選手権(男子レポート)

報告者:日本体操協会 男子新体操委員会

新型コロナウイルスの影響により無観客での開催となり、感染症対策を徹底して開催された「第73回全日本新体操選手権大会」が終了した。例年の実施方法とは異なり11月19日、20日の2日間で個人総合兼個人種目別を、21日に団体競技がそれぞれ行われた。

【個人競技】

全日本学生選手権で総合優勝の安藤梨友選手(青森大学)が安定した演技を見せ完全優勝を果たした。
ジュニアの頃より定評のあった安藤選手も大学4年生となり今大会にかける想いがそのまま演技となって表現され、見る者に感動を与える素晴らい演技だった。4種目全てにおいて卓越した手具さばき、熟練された徒手体操とタンブリングを見せ18点後半を揃え、他の追随を許さないまさに完全優勝であった。

2位には堀孝輔選手(同志社大学)が入った。堀選手も同じ大学4年生。昨年の全日本選手権では3位、今年の学生選手権では2位、クラブ選手権では優勝しており安藤選手の最大のライバルと目されていたがスティックでのミスが悔やまれる。しかし残りの3種目では素晴らしい実施を見せ3種目とも種目別2位の成績で総合2位に入った。

3位は満仲進哉選手(青森大学)。クラブ選手権で堀選手に続き2位となり、勢いそのまま4種目ノーミスで揃え総合3位に食い込み嬉しい銅メダルとなった。満仲選手も4年生、特に最終種目のクラブはこれまでの新体操の集大成となり、想いのこもった演技で見る者を感動させてくれ 17.900点という高得点を叩き出した。

かねてよりゴールデンエイジと呼ばれていた今年の大学4年生にとっても、それ以外の学年の選手にとっても集大成となる全日本選手権において、想いのこもった演技ばかりで多くの感動を与えてくれた。表彰式後のインタビューで安藤選手から「直接見ていただくことが出来ず悔しいですが、想いが届けられるように演技しました」と答えてくれた通りの内容であった。

 

【団体競技】

例年とは違い決勝一発勝負の今回、激戦を制したのは国士舘大学。平成20年(2008年)以来の栄冠を手にした。「大会直前までの数日や会場入り前日もなかなか練習できず苦しかったですが、みんなの力があったから本番でいい1本が出たと思います。」と厳しい状況になっていたにも関わらず、やってきたことを信じ、仲間を信じ合うことで見せた、まさに会心の演技であった。洗練された徒手、スピードと高さのあるタンブリング、ハイリスクな交差技、迫力がある組み運動、全てがひとつとなり卓越した実施であり、演技終了後の選手たちの表情を見るからも「できることはやり切った」と納得の実施であったことが伝わってきた。D:9.425 E:8.800 得点18.225

2位の青森大学は前評判どおりに素晴らしい徒手と隊形移動、タンブリングや組み運動の組み合わせ、実施の同一性など、これぞ新体操という内容であった。しかし1ヶ所、中盤でのミスがあり得点に響いてしまった事が悔やまれる。D:9.450 E:8.650 得点18.100。

3位は花園大学。独創的な構成のもと美しさが際立つ素晴らしい演技を見せたが、後半に乱れが出てしまい実施点が伸び悩みD:9.225 E:8.150 得点17.375。少しのミスが順位に大きく響く、一発勝負の面白さと難しさを実感した全日本となった。

上位以外にも大きなミスなく、熟練度の高さを見せてくれた福岡大学。社会人枠からの唯一の参加であり親となった選手もいるRe:cordも素晴らしい演技だった。一つの演劇を見ているようなストーリー性を表現してくれた宮城県名取高等学校、話題性もあり会場を笑顔にしてくれる鹿児島実業高等学校など、これからの新体操界を背負っていく高校生チームにとっても今回の経験はとても大きな経験となるだろう。ぜひこの全日本で終わりではなく、ここからまた新しい目標に向かって進んでいき、また来年会えるのを楽しみにしたい。どのチームにとってもドラマがあり、とても見応えのある団体であった。

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