2022新体操アジア選手権(シニア・ジュニア)大会レポート2

報告者:新体操強化本部長 村田由香里

アジア選手権大会2日目レポート
大会2日目はシニアのチーム対抗、個人総合・種目別予選の後半2種目が行われた。

◆シニアチーム対抗(個人総合・種目別予選)、団体

●喜田純鈴選手 クラブ
全体的にはクリアーな演技が行えていたが、途中アチチュードターンで崩れ、手具操作が行えずに終わってしまった。上位の選手とはローテーション難度の回転数で大きく差がついているため、今後ローテーション難度の回転数を上げることがDのポイントアップにつながるだろう。
D 12.4 A 8.25 E8.35 合計29.00

●喜田未来乃選手 クラブ
スタートのリスクで場外ギリギリに手具が流れたが、よく見て冷静に対処した。その後のターンジャンプのシリーズのリスクでキャッチのターンジャンプが飛びきれず、1回目のみのカウントとなってしまった。小さい投げのDAのもたつきなどもあったが、思ったほど得点に響かずにすんだ。
D 12.1 A 7.8 E 7.9 合計28.00

●喜田純鈴選手 リボン
ここまで落下ミスなくまとめてきた喜田選手であったが、最終種目のリボンでブーメランに落下ミスが出てしまった。リスクのキャッチで足元が滑り、ヒヤッとした場面もあったが、歯切れのよい動きでエネルギーのある通しであった。春先の試合に比べて、曲に対する表現も深みを増したように感じるが、世界の上位に食い込んでいくためには、Dのポイントを更に上げていく必要があるだろう。
D 12.7 A 8.05 E 7.70 合計28.45

●喜田未来乃選手 リボン
ステップ中にリボンに結び目が出来てしまい、それをほどくのにかなりの時間を要してしまった。その後も落下ミスや再度の結び目など、最後までミスが続いてしまった。まだ4種目を通して安定性に欠け、ミスが出てしまうとなかなか切り替えられずに、ミスを引きずってしまうことが多い。今度安定感のある実施力と手具技術、少しのミスで動じないタフさが求められる。しかしながら、海外選手の中に入っても頭一つ出ている高身長は武器であり、試合ごとに見せる成長にも期待がかかる。
D 5.9 A6.8 E6.6 合計19.50

前半2種目でトップにつけていたIkromova Takhmina選手はクラブでリスクの落下ミスからリズムを崩し精彩を欠いたが、リボンでは高い身体難度に加え、力強い手具操作でトップを守った。明日は個人総合決勝に4位で通過した喜田純鈴選手、7位で通過した喜田未来乃
選手が出場する。1日に4種目を行う精神的にも体力的にもハードな戦いである。

●団体(フェアリージャパン POLA)
今朝から雷雨のため体育館は雨漏りで、あちこちにバケツが置かれている状態でのリボンの試合は選手にとっては非常に過酷だったと言えるが、全チーム同じ条件の中で、ミスを最小限に抑えられたチームが結果を出した。

3位 カザフスタン
演技冒頭からリボンが床に垂れている状態。交換や身体難度も同時性に欠ける。演技中盤の足投げ交換で1人の選手がリボンを踏めず、投げに遅れキャッチに間に合わず落下。すぐ後の交換でも落下。終盤の連係でも大きく乱れ落下。前半はよくまとめていただけに、後半のミスが残念。
D 11.8 A 6.35 E 5.6 合計24.25 団体総合3位

2位 日本
最初の交換で投げが低く、ヒヤッとする場面があったが、その後はしっかりと演技の内容を見せることが出来ていたが、CCで落下が出てしまい、続く複数投げの準備で選手の足にリボンが絡まり、きちんと準備出来ないまま投げ、大きな移動と落下になってしまった。しかしその後は取り戻し、ステップや難度、リスクもしっかりと決めたが、演技終盤のリボンでリボンの複数投げを行う日本の見せ場でミスが出てしまった。ミスが出てしまった部分以外はしっかり演技の内容を見せられていただけに残念である。
D 12.7 A 7.45 E 5.6 合計 25.75 団体総合2位

出場選手:鈴木歩佳、竹中七海、稲木李菜子、生野風花、中村知花

1位 ウズベキスタン
スタートの2本持っている選手のリボンが体に絡まったが、焦ってバサバサ動かしたりせずに一度リボンを止め、ほどいてからすぐに演技を続け、大きな中断にはならなかった。ステップで大きな結び目が出来、ステップがノーカウントになったり、交換で大きな移動が出たりしたが、落下のミスは防ぎ、日本をかわして団体総合優勝を決めた。交換や身体難度の同調性もなく、団体演技としてのクオリティは日本が数段上だっただけに、ミスが悔やまれる。
D 14.1 A 7.35 E 6.75 合計28.20 団体総合1位

やはり総合では2種目をしっかりと並べられることが大切である。そのためには更に熟練して、試合でやり切る強さを身につけていかなくてはならない。種目別決勝に向け、ミスの原因となっている部分を修正して臨む。種目別ではあるが、もう一度2種目をやり切るという目標に向け、挑戦していきたい。

個人8種目と団体2種目の合計点で競われるチーム対抗では銅メダルを獲得した。
(1位 ウズベキスタン 2位 カザフスタン 3位 日本)

 

◆ジュニア国別対抗(種目別予選、団体)2日目
2日目はチーム対抗、種目別予選の後半2種目、団体総合後半が行われた。

・丸山莉奈 クラブ
ステップ中のDAにて落下があったものの、終始とても落ち着いており質の高い身体難度を実施することができた。演技のつなぎもなめらかであり、今後さらに高得点の技を習得することで上位に食いこめるようになるだろう。
D 9.3 A 7.5 E 7.75 合計24.55

・馬場せせら リボン
スタートRの取りにて、すそを踏んでしまうミスがあったものの大きなミスなくまとめ上げた。表情は華やかであるが、今後は音の緩急に合わせた表現をすることが更に求められる。
D 8.70 A 7.95 E 7.55 合計24.20

国別対抗に出場していたウズベキスタン4名のジュニア個人選手は、皆29点台にのせる力を持っている。また、カザフスタンの選手においては30点台にのせる内容をこなしている現状である。これらの選手たちがシニアにシフトされることを考えると、日本との差が明らかであることは明確である為、日本の強化、並びに評価の仕方も考え選手育成にあたらなければならない。

団体 ボール5
昨日のロープ5同様、同時性、身体難度の精度、手具操作、ジュニアとは思えない完成度でまとめたカザフスタンが一位を獲得した。どちらの演技構成も見易く、また大変曲にあったストーリ性であり、審判にとっても観客にとっても見ごたえのある内容であった。
D 10.8 A 7.85 E 7.50 合計26.15

・日本
このボールの作品は選手たちの雰囲気にあったテンポの良い明るい曲調であり、皆生き生きとした表情で踊り切ることができ、この種目においてトップの点数をたたき出した。
両手受けが何ヵ所か見られたものの、物怖じすることなくのびのびと演技できた選手たちは、この大会を通じ成長したように見えた。
D 11.3 A 8.0 E 7.55 合計26.85

出場選手:初根鈴乃、中村心結、中村明里、庄司遥、田邊胡桃

上位にいくために綺麗に動くことは絶対的に必要であるが、新ルールにおいては多少粗くてもエネルギッシュにキャラクターを演じ切る、また難度や技をやり切る力が必要不可欠である。一曲一曲そのキャラクターにあった踊りを演じることを重要視されているルールであることからしても、ただ綺麗なだけでは評価されないのが国際大会である。日本国内においても、型にはめず選手一人一人の個性を生かし長所を存分に生かした作品作りにこだわっていく必要がある。もちろん四肢が汚かったり、質が悪ければ減点対象になるのがこのルールである。しかしながら、減点されることを恐れ無難な身体難度、技しかやらないでいるといつまでも世界との差が埋まらないであろう。
その為、ジュニア期においては基礎の徹底とともに踊ることの楽しさ、また難しい技に挑戦することの大切さを経験させることが必要である。

個人4種目と団体2種目の合計点で競われるチーム対抗ではシニア同様銅メダルを獲得した。
(1位カザフスタン 2位 ウズベキスタン 3位 日本)

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