第75回全日本新体操選手権大会レポート(男子個人)10/27-28

報告者:日本体操協会 男子新体操委員会

例年は3日間で開催される全日本選手権大会であったが、本年は4日間の開催となり大会としてもより厚みを増し生まれ変わった。荘厳なオープニングセレモニーを経て始まった大会は男女ともインカレの個人総合チャンピオンからスタートする贅沢な順番となり、コロナ禍で溜まっていた観客の鬱憤を晴らすかのような口火を切った。

【1日目 前半2種目】10/27

初日トップに立ったのは2021年度個人総合王者 堀孝輔 選手(高田RG)。

スティックの演技では珍しい落下があり得点は17.625と出遅れるが、その後の演技は集中力高く、高難度の内容をしっかりと決めミスしたことを感じさせない演技で、続くリングの演技は王者の貫禄を感じさせる圧巻の演技であった。一種目目の影響を全く感じさせない素晴らしい演技は手具の流れ、タンブリングの高さ、投げの正確性どれをとっても素晴らしく堀選手の技術力が結集した作品として見る者を惹きつけてくれた。18.475の高得点を出し初日暫定首位発進となった。

その堀の背中を追いかけ2位の位置につけたのは、夏の全日本インカレで個人総合2位を獲得した尾上達哉 選手(花園大学)。
スティックでは巧みな手具さばきと類稀な表現力を武器に、レベルの高い投げ技を組み込んだ構成を最後まで演じきることに成功した。表現一つ一つに感情をこめることにより尾上選手の世界観に観客たちも引き込まれているように感じた。

続くリングでも表現力を武器にハイレベルな演技を披露してくれた。投げ受け地点が多少ずれる瞬間もあったが、落ち着いて対処し最後まで集中力を切らさず演じ切ることができた。得点も17.825と18点にこそ届かなかったが上位陣が崩れる中、2種目ともまとめ点数を伸ばすことに成功し暫定の2位となった。

続く3位につけたのは、これまでの大会でも常に上位に名を連ね、高い技術力を披露してきた向山蒼斗 選手(国士舘大学)。
スティックでは冒頭の転がしが若干ずれる場面がありヒヤリとさせられたが、その後落ち着きを取り戻し見事なノーミス演技。技術価値、難度の高い演技構成を最後まで集中力を切らすことなく素晴らしい演技を披露し、18.100の高得点をマークした。

リングでは他の選手が真似できないようなオリジナリティの高い演技構成。スピードもあり流れもよく最後まで演じていたが、ラストポーズ直前の投げで惜しくも落下。得点を伸ばすことができず17.350。初日は暫定3位となった。

全体的にルール改正によるリスクの高い演技内容が影響しミスが多い印象の初日が終了し、明日の後半競技へと続く。明日は今年度の個人総合王者が決定する。

この混戦を誰が抜け出すのか注目したい!

【2日目 個人総合順位決定日】10/28

個人総合第3位 大村光星 選手(花園大学)
全日本インカレ王者として臨む後半最初の種目ロープ。スピード感ある手具捌きから次々とハイレベルな技術を惜しみなく見せてくれた。しかし、最近の試合では安定した演技を披露していた大村選手だが手具の落下、捌き中のミスが目立った演技になってしまった。昨日の前半ではリングのミスが影響し4位と出遅れたが、ここでも点数はあまり伸ばすことができず、17.075であった。

クラブでは出だしから手具が常に空中に浮いていると思わせるほど手具を離す操作が多く、他の選手には真似できない構成内容であった。途中タンブリングで空中分解し一瞬ヒヤリとしたがその後、冷静に対処し最後まで流れが途切れることなく演じ切った。得点は17.750。本来の大村選手らしい演技とはいかなかったが前半上位の選手が崩れたため3位に滑り込んだ。

個人総合第2位 東本侑也 選手(同志社大学)
ロープで東本が見せてくれた。ノリのいい音楽を軽快に演じ切り素晴らしいパフォーマンスを披露した。ロープでは難しいとされる連続投げ、4動作の加点もしっかりとこなし勢いが切れることなく最後まで観客を楽しませてくれた。昨日はスティックのミスが響き5位と出遅れたがこの演技で息を吹き返した。この種目トップの点数18.325をマークした。

クラブでは情緒あふれるメロディに合わせ、東本選手の武器である大きな体の動きでダイナミックに演じ切った。投げ受けで少し危ない場面もあったが、最後まで集中力を切らさずこの種目もトップの18.400をたたき出した。後半2種目では堀を上回る得点で驚異の後半巻き返しをみせ見事2位の座についた。

個人総合優勝 堀孝輔 選手(高田RG
前半種目首位の堀選手がロープで会心の演技を見せてくれた。上位陣が点数を伸ばせず苦しむ中、難しい内容にも関わらず、巧みな手具さばきに加え難度の高い投げ技も教科書のように確実な実施を見せつけ18点台に乗せてきた。得点は18.050。

クラブは完璧な演技だった。優勝のかかる大事な一本ではあったが、それらの緊張感を全て押さえこみ守ることなく素晴らしい一本を見せてくれた。社会人選手となり円熟味を帯びたその演技は見ている者を堀の世界観に誘った。スティックでのミスはあったものの、見事に立て直し連覇を飾った。社会人の連覇は朝野健二(1996、1997)年以来の快挙である。

結果として堀孝輔選手の連覇で個人総合は幕を閉じたが、全体を通じてミスが非常に多い印象であった。その背景にはやはりルール改正の影響が関わっていると考えている。本年度より個人での加点が大幅に変更になり、各選手その加点の最大限獲得を目指し演技の内容を変更してきた。反面、演技のリスクは高くなり、技術が未完成のまま本番を迎えてしまうと大きなミスに繋がる要因になる。加点をとることは勝つためには重要であるのは言うまでもないが、結果ミスに繋がってしまうのであれば本末転倒である。自身の技術力に見合った加点を確実に重ねていくこともこの混戦から抜け出せる一つの方法ではないかと感じた。

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