第75回全日本新体操選手権大会レポート(男子)10/30

報告者:日本体操協会 男子新体操委員会

いよいよ大会最終日となった本日は、男子団体8チームによる決勝競技と個人種目別決勝ロープ、クラブが行われる。久しぶりの有観客となった本大会は連日ほぼ満員。集まった人々は新体操最高峰の大会を満喫している。最後までどのようなドラマが待っているのか目が離せない!

【男子団体決勝】

3位 倉敷芸術科学大学
予選第3位の倉敷芸術科学大学が決勝でも安定した演技を披露し見事初のメダルを獲得した。予選では多少ミスのあった第一タンブリングでも完璧に決め、小気味よい流れが途切れることなく最後まで集中力を保ち通しきった。創部間もないチームのため選手たちも若いが、今後の飛躍に繋がる大きな結果であったはずだ。得点は予選より上がり17.600で銅メダルの座を勝ち取った。

第2位 国士舘大学
予選第2位の国士舘大学が決勝でも高いレベルの技術を安定した実施でやり遂げることに成功した。第一タンブリングでは伸身ダブルスワンを交差で使用するなど新し挑戦も評価された。動きの部分でも多彩な運動量に加え時折見せる男子新体操ならではの「間」もよいアクセントになっていた。こちらも予選より得点を伸ばし18.300で銀メダルに輝いた。

優勝 青森大学
予選トップ通過の青森大学が決勝でも盤石の強さを発揮し昨年に続く連覇を飾った。スピード感ある隊形変化と運動量を武器にフロアを縦横無尽に動き回る。6名の選手が一つの生き物のように次々と変化していくのも青森大学の魅力だ。途中勢い余ったのか場外減点はあったものの、内容としては予選より動きの硬さが抜け最後まで駆け抜けた。男子新体操の魅力がたっぷりと詰まった3分間。得点も今大会最高得点の18.650で連覇を飾った。

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【個人種目別決勝】

ロープ3位 向山蒼斗(国士舘大学)17.900
向山選手が手具捌きには定評のあるロープで高い技術力を見せつけてくれた。予選で少し揺らぎのあった投げ技でも安定した実施で最後まで繋いだ。しかし、ラストポーズでわずかに姿勢を崩した。もったいないミスではあったが、向山の演技に会場から大きな拍手が送られた。予選より得点を伸ばし17.900で銅メダルに輝いた。

ロープ第2位 堀孝輔(高田RG)18.275
決勝種目全ての種目で通過し、高い実施力で常にメダルに絡む堀。ここでも流石の演技で見事銀メダルに輝いた。構成点では全体の3位であったが、実施点が構成点とほぼ同点を出し安定感のある内容で18.275。銀メダルを獲得した。

ロープ優勝 東本侑也(同志社大学)18.475
予選でこの種目トップ通過の東本が会場を沸かせた。躍動感ある演技に会場の一体感も加わり東本の演技がより一層光を放った。常に手具が動き、高い跳躍力を駆使し身体全体を使って表現する。第一タンブリング後の開脚ジャンプは圧巻で、会場から大きな歓声が上がった。見事演じ切り18.475の高得点で嬉しい初の金メダルを獲得した。

クラブ第3位 堀孝輔(高田RG)17.650
 出場した決勝4種目で素晴らしい演技を披露してくれた堀選手。クラブでは惜しい落下があったものの、その高い技術力と精神力には敬意を表したい。男女通じて社会人選手として現役を続行することの難しさ。その中でもトップ選手で居続けることはさらに難しい。4種目全てで決勝進出し素晴らしいパフォーマンスを披露した堀に心から拍手を送りたい。

クラブ第2位 東本侑也(同志社大学)17.675
ミスはあった。しかし素晴らしい演技であった。観客にもそれは伝わった。音楽のメロディと完璧にシンクロした大きく流れるような徒手。その動きに会場が魅了された。東本選手はまだ大学2年生これからの選手である。今大会で大きく成長したように感じる。

優勝 田窪莉久(青森大学)17.775
勝負とは本当にわからないものだと痛感した。個人総合上位者が軒並みミスする中、決勝で田窪選手が見事に金メダルに輝いた。前演技者の堀選手、その後の東本選手、大村選手と個人総合上位3名に落下があり点数が伸ばせない中、完璧な演技を披露し17.775で優勝した。体の大きさと爆発的なタンブリング力で見事な演技であった。
個人種目別決勝では全ての種目で優勝者が異なる珍しい決勝であった。

4日間の激闘を終え全ての競技が終了した。久しぶりの有観客の熱量に選手達や関係者も心から楽しむことができた素晴らしい大会であった。新体操演技は人に見せることでその華を咲かせる。コロナ禍で揺れた2020年、2021年は無観客の中での大会開催。選手たちは誰に見せるか迷い、苦しみながら進んだ大会であった。

今大会では久しぶりに様々な感情を見た。喜びの笑顔、悔しさの涙、やり切った安堵感、終わったことへの脱力感、そして観客との一体感。このスポーツは様々な感情を見せてくれる。その選手たちの感情の動きを、感動を共に分かち合うことができた最高の時間であった。

世の中はまだコロナの中にある。しかし、確実に前進している。暗く長いトンネルの先に見えていた光明が今大会であったのではないかと確信している。これからまた選手たちと共に笑いあえるかけがえない時が待っていると信じてやまない大会であった。

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