新体操 アフロディーテカップ2024レポート①個人総合

報告者:新体操強化本部長 村田由香里

3月15日〜17日、ギリシャにて、インターナショナル アフロディーテカップが開催された。
今大会は、個人シニア80名、ジュニア104名が出場。日本からはコントロールシリーズシニア2位通過の松坂玲奈選手、3位通過の鈴木菜巴選手、ジュニア1位通過の井上結愛選手が出場。
シニアにおいては、今大会日本最上位の選手がアジア新体操選手権日本代表内定選手になるため、各選手にとって大変重要な大会となった。

◆個人総合 (3月15日、16日)
<ジュニア 井上結愛>
ボール:
パンシェのコンバインが抜けてしまうミスがあったが、全体を通し1つひとつ落ち着いて実施することができ、大きさの見える演技であった。インターナショナルではあるが、Eで8点台を獲得出来たことは今後に向けて収穫のある試合となった。

フープ:
少し緊張感が解けたことで、後半までのエネルギーや動きの大きさが1種目目よりも見える演技であった。全体を通し、DBの質はボールよりも良かったが、DB中の操作やDAの基準が不明確なものが多いため、改善していく必要がある。

リボン:
フロアに立った瞬間から緊張が感じられ、スタートのリスクが抜けてしまったことで、頭が真っ白になってしまったようである。前半2つのリスクが回転不足、3つ目のリスクは場外へと精彩を欠いた演技となってしまった。
どんな状況であれ、技術的な意識が抜けることなくやり切る力を身につけていかなければならない。今後、練習や試合の中で培っていってもらいたい。

クラブ:
リボンから気持ちを切り替え、投げのズレにも素早く反応し諦めずに取りにいき、ノーミスでまとめることが出来た。最終種目であったが、最後まで挑戦する強い意志が感じられる演技を披露した。

トップ選手と比較し 、4種目ともD得点において大きな差がある。今後世界の選手と戦っていくためには、今の構成を正確にやり切る力も身につけると同時に、DB,DAの構成点を上げるために技術力の向上が必要である。初の国際試合において堂々と踊り切った姿は見事であり、今後の成長に期待がもてる試合となった。

個人総合 73位
フープ 24.100(DB 5.90 DA 3.90 A 7.40 E 7.65)
ボール 25.550(DB 6.30 DA 3.60 A 7.30 E 8.35)
クラブ 24.850(DB 6.30 DA 3.60 A 7.30 E 8.35)
リボン 19.700(DB 3.10 DA 3.80 A 6.90 E 6.50 P0.6)

<シニア 松坂玲奈>
フープ:
1種目目のフープは持ち前の身体能力と手具の巧みさを発揮し、スピード感溢れる演技をやり遂げた。
課題としては、難度の終末動作を明確にすること、そしてパンシェバランスの開脚度がやや足りない事による実施減点を無くすことである。
なお、難度の得点が実際に入っているものより低くなっていることに関しては、転がしのDAを再度確認し精度を上げていきたい。

ボール:
2種目目のボールはスタートのリスクで落下、その後ももたつきがあり大きな減点となった。
しかし、今回の松坂選手の強さはミスのリカバリーである。落下とその後のもたつきにより曲に遅れてはいたが、全体をスピードアップし、入れるべき難度を全て入れ込み得点を残す努力をした。その判断は冷静であり、日頃の練習が活かされた形となった。彼女の技はリスキーであるため大きなミスも起こりうるが、冷静に対応出来たことに成長が見られた。

クラブ:
今日で代表が決まるという緊張感もあり、練習の段階からいつも以上に集中し確認をしていた。本番では手具を落下させたくないという思いが強く、スタートのコンバイン難度であるフェッテバランスからのエカルテターンが乱れノーカウント。また後半のエカルテバランスからトーノーも精度が悪くノーカウント、実施減点も入る形となった。投げ受けに関しては手堅く行ったが、DAの視野外、手以外受けでやや乱れ素早く対処したが、DA得点をのばすことは出来なかった。全体には表情も良くしっかりと踊れていたこともあり、実施も芸術も8点台に乗せることが出来た。今後クラブは、DB(特にコンバイン)の強化が必要である。

リボン:
ルパン3世の軽快な音楽に合わせテンポの良いスピード感と、流れるような手具操作を披露。最終種目であったが、全ての力を出し尽くし冷静且つ挑戦的に演技をやり切った。
やはりクラブと同様にDBの強化が課題であり、次の大会までにいかにD得点を上げられるかが重要である。

今回はアジア選手権の権利がかかる大会であった。プレッシャーに打ち勝ち、勝ち抜く力を試すためにも、今日の2種目をパーフェクトにやることを目標に試合に臨んだ。
課題はまだまだあるものの、今持つ力を全て出し尽くすことは出来た。
ここから日本代表として進む上で、課題を克服し、より確実に高い得点が獲得できるよう努力を続けたい。

個人総合 6位
フープ 32.500(D 16.90 A 7.70 E 7.90)
ボール 29.500(DB 8.20 DA 6.10 A 7.70 E 7.50)
クラブ 29.550(DB 9.30 DA 4.10 A 8.05 E 8.10)
リボン 28.800(DB 9.00 DA 4.00 A 8.00 E 7.80)

<シニア 鈴木菜巴>
ボール:
コントロールシリーズから短期間であったが、今できる修正を行い今大会に臨んだ。
ボールは安定感のある種目であり、直前練習でもしっかり体を動かし良い状態でフロアに立つことが出来た。冒頭2つのリスクがきまると、思い切りのよい動きで、最後まで大きなミスなく終えた。それでも、リスクの受けの加点においてやりきれていな部分がある。怖がらず挑戦した積み重ねが、現在の鈴木選手につながっているため、この緊張感のかかる場面でも挑戦することを忘れず強気で演技してもらいたい。

フープ:
事前に分かってはいたものの競技時間が遅くいつもとは違う疲れを感じていたが、ポイントを明確にし試合に臨んだ。身体の張りにやや欠けるものの、スムーズに進んでいたが、終盤DAの転がしがはねてしまい落下。この場面でのミスは練習でも起こっておらず予想外であったが、事前の調整など問題点はいくつか考えられる。残りの種目で改善し、このミスを活かしたい。

リボン:
加点の取りづらい種目ではあるが、挑戦する気持ちを忘れず実施出来る形で演技を調整し臨んだ。慣れない環境からか、動き始めから身体が思うように動かず2つ目のリスクでやや乱れ、続くリスクの受けにおいてはスティックにリボンが引っかかってしまうなど、全体的に精彩を欠いた。ラストの受けでも、足にはまって受けたものの曖昧な受けになってしまい、思うような点数を出すことが出来なかった。

クラブ:
リボンの演技終了時に脚に違和感があり不安が走ったが、鈴木選手から絶対にやり切ると言う強い覚悟が見られた。リスクの加点やバランスの静止などもきっちりこなし、彼女らしさが見える演技で締めくくることが出来た。

個人総合 8位
フープ 29.550(DB9.70 DA5.00 A7.40 E7.45 )
ボール 30.650(DB9.50 DA5.60 A7.50 E8.05)
クラブ 30.250(DB 9.80 DA 4.50 A 7.80 E 8.15)
リボン 27.200(DB 7.30 DA 4.50 A 7.75 E 7.65)

今大会の個人総合の結果により、日本最上位である松坂玲奈選手が、アジア新体操選手権大会の日本代表内定選手となった。
大変厳しい戦いになるが、既に内定している、喜田未来乃選手(コントロールシリーズ1位通過)とともに、オリンピック出場権獲得に向け残された時間を最大限に活かし、全ての力を発揮してもらいたい。

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