第15回アジアシニア新体操選手権大会レポート②

報告者:新体操強化本部長 村田由香里

<5月2日、3日 個人総合>
【松坂玲奈】
●フープ
日本ではベテラン選手ではある松坂選手だが、日本代表としての経験は浅く、オリンピックの権利を争うのは初めての経験であった。しかし持ち前の技術とスピードを武器に、フープは手応えのある内容をやり遂げた。1つ目のステップに入る前の転がしDAでわずかに転がしの軌道が外れ0.4を失ったが、それでも他の技をパーフェクトに行い得点を33点台に乗せ、努力の成果が見える内容であった。

●ボール
日本からの応援団の声援の後押しもあり、伸びやかで晴々とした松坂選手らしい個性あふれる演技を披露した。
1つ目のステップ、後半部分の持ち替えで、ボールが手から滑り落ち落下となった、しかし踊りの中で上手く繋げ大事には至らず、このような場面でも松坂選手の対応力の高さを見せた。

●クラブ
1つ目のステップ、クラブを口の上に乗せステップを踏む所でクラブが滑り落ちそうになったが、背中でキャッチし上手くカバーした。
それ以外については、全ての投げを躊躇することなく行い、数日前に加点を増やしたラスト部分もしっかりとやり切った。
日々進化出来ることも松坂選手の強さであると改めて感じた。

●リボン
前回のワールドカップバクー大会において、リボンの演技をパーフェクトに行ったものの得点が伸びなかったこともあり、急遽作品を変更し今大会に臨んだ。作品は昨年のものであるが、加点を増やし挑戦することにした。この半年行ってきた作品を、大会前、僅か数日で変更し大会に臨むことはかなり難しい決断ではあったが、松坂選手の技術と勇気を信じチャレンジすることを選んだ。その結果、プログラムをパーフェクトに行い銅メダル獲得へと繋がった。
今回、クラブ、リボンにおいてインクワイアリーを出し点数がプラスになったことも成果である。
オリンピックの切符を手にすることができなかったことは大変悔しい。しかし、大会を経験する度に得点を伸ばし進化し続ける松坂選手に賞賛を送りたい。

フープ 33.450(DB11.50 DA5.70 A8.10 E8.15)
ボール 31.200(DB9.60 DA5.90 A7.95 E7.75)
クラブ 32.050(DB 10.90 DA5.10 A8.15 E7.90)
リボン 31.050(DB10.00 DA5.2 A8.00 E7.85)
個人総合 3位

【喜田未来乃】
●フープ
緊張感の中にも落ち着きが見え、序盤からリスク、DBを丁寧に実施し、ダンスステップやつなぎ要素も表現豊かに実施できていた。後屈のジャンプターンによるリスクのシリーズでは、ジャンプの形、大きさ、スピードにおいて不足が感じられることや、パンシェローテーションはルルベでの実施に挑戦しているが、まだ安定感と確実性に欠ける実施であった。終盤までDAの連続も何とか堪え最後のリスクを成功させたが、ラストの転がしから小さく投げ上げるDAが後方に上がり何とか足でキャッチした。ミスなく実施できたことは成果であったが、今後ローテーション難度の回転数の増加やDBの強さと全体的なスピードの強化が課題であると感じた。

●ボール
序盤からDB、DAを丁寧に実施し、後屈のジャンプターンの連続も形、手技操作ともに改善が見られた。中盤のリスクやコンビネーションバランスも崩れることなく実施できたが、やや慎重になり中盤以降演技に遅れが見えた。最後のリスクを成功させた後、若干のもたつきがあり次の動作が遅れ、結果的に最後の転がしのDAで落下、ボールを取りに行き音楽の終末に遅れる結果となった。ダンスステップやつなぎ要素では曲の特徴における表現に不足が見え、動きのスピード化とともに今後の課題であると感じた。

●クラブ
最初のパンシェローテーションに明確な形が見え、続く後屈のジャンプターンも大きく勢いがあり良いスタートであったが、最初のリスクを不安定な状態でキャッチする実施となり、落下は回避することができたが受ける際の回転が不完全となった。中盤はリスクやDAの連続も何とか堪えたが、脚の下からの小さな2本投げのDAを落下し、持ち堪えていたリズムが途切れた。終盤のリスクの連続は何とか決めたが、最後までエネルギーがもたない演技となった。曲の特徴がだいぶ見える動きとなっていただけに、落下のミスが惜しい結果となった。

●リボン
最終種目ということもあり、序盤から音楽を表現しエネルギーの感じられる良い演技であった。リスク、DBの実施も概ね正確に実施できていたが、DAにおけるリボンのベースの甘さと基準の不正確さが所々見え、DAを正しく確実にしていくという課題を感じた。DBに関しては だいぶ改善が見られたが今後一層の強さと形の明確さを向上させる必要がある。最後のリスクも乱れることなく決め、最終種目をやりきれたことは今後の自信につながる。全体的にリボンの描きの緩さが見られDAやDBにも影響があることから、今後改善していく必要がある。
様々なプレッシャーの中自分自身と戦い、昨年よりも強い気持ちで練習に立ち向かう喜田選手は、少しずつではあるが確実に成長している。この経験をどう活かせるか、今後も期待したい。

フープ 31.850(D16.60 A7.70 E7.60 P0.05)
ボール 29.750(DB10.30 DA5.00 A7.40 E7.10 P0.05)
クラブ 29.100(DB 10.00 DA4.60 A 7.25 E7.25)
リボン 29.650(DB 9.60 DA4.60 A7.85 E 7.60)
個人総合 6位

種目別決勝には、松坂選手4種目、喜田選手3種目に残っているため、最後まで全力で戦い、更なる進化を遂げてほしい。

<5月3日 団体種目別>
●フープ5
前日の団体総合の結果もあり、選手たちの気持ちは計り知れない状況であったが、『与えられた結果を受け止め、それでも最後まで自分たちに出来ることを全力でやり切る、進化し続ける』ことを合言葉に種目別決勝に臨んだ。
序盤、交換や連係においてやや乱れる箇所はあったが、中盤から力強く果敢に攻めパーフェクトな演技をやり遂げ、日本の底力を見せつけた。
割り当て練習である朝7時過ぎから、歯切れの良い通し練習を行い、力強く挑戦的に演技する姿は『強いチーム』そのものであり、たくさんの他国のコーチから『練習の姿勢、作品、技術全てにおいて日本チームはNo.1だ』と声をかけていただき、日本の金メダルを喜んでくださった。そのような”日本チーム”になれたことを誇りに思う。
リボン3・ボール2も日本にしか出来ない演技をやり切りたい。

フープ 36.350(DB 9.00 DA 11.40 A 8.30 E 7.65) 1位
【出場選手】
鈴木歩佳、竹中七海、稲木李菜子、田口久乃、西本愛実

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