北京オリンピック種目別決勝3日目レポ

報告者:

◎ 平行棒
1番手 ペトコフセク選手(スロベニア)
いきなり世界的名選手の登場、実施に定評のある選手だけに後続の選手にプレッシャーをかける素晴らしい演技が期待された。
棒下宙返り3/4ひねり倒立~棒下宙返り倒立~棒下宙返りひねり倒立~ベーレ、チッペルトと素晴らしい実施の演技が続いたが、ヒーリーで体重が乗りすぎる実施になってしまい、続く倒立をかかえこみ姿勢で調整するまさかの大きなミス、その後の演技はまとめたもののこの大過失が致命傷となり、得点は15.725(Aスコア=6.80)。
16点台でのメダル争いが予想されるこの種目ではメダル獲得が困難な状況になった。
2番手 黄旭選手(フォアン・シュー)
屈身ベーレ、ドミトリエンコ、ベーレ、屈身モリスエとE難度以上の技をほぼ完璧にきめていき、高得点が期待されたが終末技直前のモリスエからの前振り上がりで支持になれず痛恨のダブルスイング、後方屈身2回宙返りの着地も後ろに大きく動き、得点は15.700(7.00)。ペトコフセク選手に及ばず、やはりメダル獲得は難しい状況に。
3番手 ハンビューヘン選手(ドイツ)
入りの逆上がりひねり倒立から力が入りすぎているのか若干のブレが見られ、演技中盤のベーレからの前振り上がりの後の倒立でバランスを崩し肘を屈げての調整、その後の演技は大きなミスこそ見せず後方屈身2回宙返りの着地を見事に止めたが、終始ぎこちない演技で得点は15.975(6.90)。暫定1位になるが、16点台に乗せることができずメダル獲得は微妙な状態に。
4番手 フォーキン選手(ウズベキスタン)
平行棒以外にもあん馬でいわゆる逆メリーという独創的な技を持つ選手である。前振り上がり開脚抜き倒立から入り、棒下宙返り系の連続から屈身ベーレ、ベーレと素晴らしく伸びやかな実施で演技を進めるが、チッペルトでわずかな停滞、その後順調に演技を進めE難度の前方かかえこみ2回宙返りの着地を見事にきめ、得点は16.300(6.80)、暫定トップに立つ。
5番手 クリュコフ選手(ロシア)
棒下宙返り系の連続から車輪ディアミドフ~ベーレ、ディアミドフ1/2ひねり、ピータースとミスのなく演技を進めていったが、モリスエで肘が抜けあたかも後方かかえこみ2回宙返り下りで空中分解したような状態になりバーに接触しながら横に落下。大事故には至らず演技を続行し、前方かかえこみ2回宙返りの着地も1歩で押さえた。しかし、途中の落下が響き、得点は15.150(6.70)。
6番手 ユー・ウォンチュル選手(韓国)
屈身ベーレ、ベーレ、屈身モリスエ、ドミトリエンコ、チッペルト、モリスエ、ヒーリー、ピータースと盛りだくさんの後難度技をまずまずの実施で捌いていったが、開脚浮き腰上がり倒立で若干反って調整、後方屈身2回宙返りの着地は小さく1歩に押さえ、得点は16.250(7.00)。フォーキン選手にわずかに及ばず暫定2位。
7番手 ヤン・テヨン選手(韓国)
同僚のユー・ウォンチュル選手とほぼ同じ演技構成で中盤まで順調に演技を進めていったが、ヒーリーで痛恨のダブルスイング、後方屈身2回宙返り下りの着地も大きく右足を引いてしまい、得点は15.650(7.00)。メダル圏内に入れず。
最終演技者 李小鵬選手(中国)
棒端での逆上がり倒立、棒下宙返り3/4ひねり倒立、チッペルト、屈身ベーレ、ヒーリー、ドミトリエンコ、ベーレ、前方宙返り開脚抜き腕支持の高難度技を素晴らしい流れで捌き、後方屈身2回宙返りの着地もわずかにバランスを崩したものの足は動かさず止めた。
得点は16.450(6.90)、Bスコア9.550の素晴らしい実施で今大会中国8個目の金メダル。
1位:李小鵬選手、2位:フォーキン選手、3位:ユー・ウォンチュル選手。
◎ 平均台
1番手 程菲選手(中国)
台の横から跳び上がり片脚を水平に保持した360度ターン、安定した演技の入りに見えたが、続く後転とびからの後方かかえこみ宙返り1回ひねりの着地でバランスを崩す。その後は非常に安定した余裕ある実施で演技を続け、後方伸身宙返り2回半ひねり下りの着地は前に1歩で押さえ、得点は15.925(6.80)。
2番手 ドラゴイ選手(ルーマニア)
体操系と宙返り系の組み合わせをうまく取り入れたバランスのとれた演技構成で大きな過失は見られなかったが、予定の連続がとぎれた箇所があったようで、得点は15.625(6.50)。
3番手 アパナシア選手(ロシア)
落下などの大きな過失はなかったが、予定した2カ所の宙返り連続がとぎれ、加点を獲得できずAスコアを伸ばせず。後方かかえこみ2回宙返り下りの着地こそぴたりと止めたが、得点は14.875(5.80)。
4番手 李燦燦(リ・シャンシャン)選手(中国)
予選トップ、いつも通りの演技ができれば高得点の期待がかかったが、片足踏切前方開脚宙返りからの後ろとび1回ひねり正面臥で落下、その後の演技はなんとかしのぎ後方屈身2回宙返りの着地を止めたが得点は15.300(7.00)、暫定3位だがメダル獲得は難しい状況に。
5番手 パブロワ選手(ロシア)
横向きの伸腕屈身倒立で入り、片足踏切前方開脚宙返り~側方宙返りを順調にこなしたが、横向き後ろとびひねり倒立が止まらず、後方伸身宙返り3回ひねり下りの着地も大きく1歩動いてしまった。その辺りが響いたか全体的には旧ソ連の伝統を受け継ぐ美しい演技を披露したが、得点は15.900(6.80)、暫定2位につけたが残る選手の顔ぶれを見るとメダル獲得は微妙。
6番手 ジョンソン選手(アメリカ)
その場立ちからの後方かかえこみ宙返り1回ひねりや後転とび連続からの高い後方伸身宙返りなど、脚力を活かしたパワフルなほぼ完璧な演技、後方かかえこみ2回宙返り1回ひねり下りの着地こそピタリとはいかなかったが、得点は16.225(7.00)、暫定トップ。メダル獲得が確定。
7番手 リューキン選手(アメリカ)
ジョンソン選手とは対照的なしなやかで美しい実施、ほぼミスの無い演技を続けていったが、片足踏切前方かかえこみ宙返りの着地でバランスをくずし、さらに後方伸身宙返り2回半ひねり下りの着地も両足で前に1歩。得点は16.025(6.60)、ジョンソン選手に及ばず暫定2位、メダルは確定。
最終演技者 鶴見選手(日本)
そうそうたる決勝出場者たちに混じり、そのトリをつとめることになった。前方倒立回転上がりからオノディ、後転とび~後方開脚宙返りと、うまく演技に入ったが、側方宙返りでふらつき、ひつじとびの後の側方かかえこみ宙返りで落下。その後の演技はうまくまとめたが得点は14.450(6.30)。
1位:ジョンソン選手、2位:リューキン選手、3位:チェン・フェイ選手、アメリカがワン・ツーフィニッシュ。鶴見選手は8位となったが、この経験を今後の体操人生に役立ててほしい。
◎ 鉄棒
1番手 ハンビューヘン選手(ドイツ)
いきなり優勝候補の一人が登場。16点台のハイレベルの演技が期待されたが、やはり力が入りすぎたのか最初の見せ場コールマンが近く車輪につなげられず、アドラ1回ひねり倒立で戻ってしまう。その結果、伸身コスミックとの組み合わせが得られずAスコアを下げてしまった。その後の演技はまずまずの実施で、後方伸身2回宙返り2回ひねり下りの着地は見事に止め、得点は15.875(6.80)、16点台に乗せることはできず。
2番手 ゾンダーランド(オランダ)
エンドー1回ひねリ大逆手で入り、姿勢に若干の乱れはあったものの続くカッシーナ(伸身コールマン)を成功、さらに雄大なコバチを成功したが、コールマンで落下。
その後、リバルコ、アドラーひねりなどを成功させ後方伸身2回宙返り2回ひねり下りの着地を止めたが、落下が響き得点は15.000(6.50)。
3番手 雛凱(中国)
正直決して良い演技(実施)とは思えなかったが、シュタルダー1回半ひねり片大逆手、アドラー1回ひねり~伸身コスミック、リバルコ、ポゴレロフ、アドラーひねり、シュタルダー1回ひねり大逆手、エンドー1回ひねり大逆手~伸身イエガー、後方伸身2回宙返り2回ひねり下りという演技構成で3E7D、組み合わせ加点+0.40で7.20という高いAスコアを達成。大きなミス無くまとめ16.200を獲得、ハンビューヘンを抜いてトップに立つ。
4番手 中瀬選手(日本)
アドラー1回ひねり~伸身コスミック、コールマンを問題無くこなし、その後の演技も順調に捌いていったが、終末技の後方伸身2回宙返り2回ひねり下りで大きく前にくずれてしまった。何とか踏ん張ったが、これが致命傷となり得点は15.450(6.60)、この時点で3位につける。
5番手 冨田選手(日本)
コールマン、アドラー1回ひねり~伸身コスミッとほぼ完璧にこなし、素晴らしい演技実施だったが、後方伸身2回宙返り2回ひねり下りの着地でまさかのお手つき。得点は15.225(6.60)、この時点で4位。メダル獲得ならず。
6番手 ジョンソン選手(アメリカ)
若干荒削りな実施だが、アドラー1回ひねり~伸身コスミック、カッシーナ、伸身コバチ、コールマンの4つの手放し技を成功させ、終末技はフェドルチェンコ(後方伸身2回宙返り3回ひねり下り)の着地もほぼ止め、得点は16.175(6.90)
7番手 クシェラ(フランス)
コールマンを成功させたが、アドラーひねり~コバチで落下、その後の演技はまとめたものの得点は14.825(6.40)。
この時点で、雛凱選手、ジョンソン選手のメダル獲得決定。
8番手 カッシーナ(イタリア)
アテネのこの種目チャンピオン。連覇をかけての演技だったが、オリジナル技のカッシーナ、コールマン、コバチと順調に成功させていったが、アドラー1回ひねりで戻ってしまい、得点は15.675(6.60)。ハンビューヘン選手に届かず4位、連覇ならず。
1位:数階選手、2位:ジョンソン選手(アメリカ)、3位:ハンビューヘン選手(ドイツ)、5位:中瀬選手、6位:冨田選手。
中国が今大会9個目の金メダル獲得となった。
日本チームは種目別でのメダルを獲得できなかったが、演技実施の美しさは十分アピールできたのではないだろうか。
惜しむらくは、美しい実施が必ずしもBスコアに結びつく採点になっていなかったことである。
今後、日本選手のAスコア向上に向けての努力は避けて通れない課題となるだろうが、美しい実施がしっかりBスコアに反映するよう関係者が世界の体操界に働きかける努力をしていく必要があるのではないだろうか。
それはさておき、日本代表チームの選手、スタッフのみなさんには本当にご苦労様と言いたい。