全日本体操競技選手権1日目

報告者:

 10月31日、新潟県のリージョンプラザ上越にて、競技1日目(個人予選、種目別決勝)が行われ、個人総合予選トップ通過は男女ともノーミスの試合運びをした北京オリンピック代表の内村航平選手(日本体育大学)と上村美揮選手(朝日生命体操クラブ)だった。
 全般的にみて印象的だったのは、跳馬において男子は7.0の価値点の技を散見されるようになったこと、女子はユルチェンコとび2回ひねりを跳ぶ選手が多くなったこと。特に、杉村美奈選手(レジックスポーツ)が跳躍2本目に最高価値点のユルチェンコとび2回半ひねりに挑戦した。男女とも競技力を伸ばしたい種目だけに、こうした選手の出現は、国内への刺激になるであろう。
 なお、最終班を前に、アテネ、北京オリンピック代表だった鹿島丈博選手の引退会見を開催した(下記、コメント)。
■上村美揮(朝日生命体操クラブ)
 思っていたより調子がよく、全種目ミスなくできました。社会人大会ではモチベーションが上がらずにいて、全日本前にも上がっていませんでしたが、こちらに来てから調子が上がってきました。跳馬も2本練習してきて、優勝できたのは嬉しかったです。ゆかの優勝は思いがけないものでした。明日も今日と同じように落ち着いて自分の演技をしたいです。
■内村航平(日本体育大学)
 今回は調整不足の中よくふんばれたと思います。特にあん馬がよくて、今年で一番いいできだったと思います。ミスではなかったですが、ゆかが当初の予定した構成と変わってしまったのが残念でした。しかし、今日は全種目ノーミスで、今のところ目標は達成中です。五輪銀メダリストとして予選でも決勝でも1位でないと示しがつかないと思っていますし、大事なのは明日の決勝なので、明日は今日のゆかのようなことのないように、そしてノーミスでしっかり演技をしたいです。
■鹿島丈博(セントラルスポーツ)
-引退に至る経緯は?
 北京五輪団体決勝の後、「そろそろなのかなぁ」という思いで、大体の決断はしていました。また、薄々五輪合宿中からもその思いはありました。理由としては、常に100%の力で練習をしたい気持ちが強いのに、自分の思うような練習ができなくなってきたからです。
 中途半端なことをやりたくないし納得できる練習をして試合に臨みたいのに、思うような練習が出来ない、そして、試合に向けて体がついていかないといった状態が続いていた中での決断でした。体操は一日一日が大事で、その積み重ねが試合に繋がると思います。だからそれに体がついていかないということが引退を決意させるものになりました。
 冨田選手には、個人総合決勝の後、彼がまだ試合が残っていたものの「引退すると思う」と、選手村で話しました。
-思い出に残ったこと、苦しかったことは?
 体操人生そのものが自分を成長させる「僕自身」であったと思っています。なので、関われたことだけでも嬉しく思っています。獲得した金メダルの中ではアテネ五輪の団体金メダルが一番嬉しく思い出に残っています。五輪というものが僕の夢でありましたし、それに向けて辛い練習をみんなで乗り越えて、そして獲得したのが金メダルというのは一番嬉しかったです。逆に怪我で出場できなかった2007年の世界選手権は苦しかった思い出として一番大きいです。
-鹿島選手にとって、あん馬とは何でしたか?
 自分を生かす一番の種目でした。
-今後の予定は?
 まずは11月に豊田国際に出場し、あん馬のみの出場ではありますが、お世話になった方々に感謝の気持ちを持って演技をしたいと思います。そして、今後は指導者など、自分のできる何らかの形で体操に携わりたいと思っています。
-後輩たちに対してメッセージを
 美しい体操を目指してもらいたい。技をやらないといけないルールになっていますが、体操は美しさ、基本が重要というのを忘れないでほしいです。
会見に臨む鹿島選手