イタリア体操現地レポート2

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■3月23日(土)シニア/ジュニア団体、個人総合試合
<ジュニア団体/個人戦>
 ジュニアチームは7:00より朝のトレーニング、7:30朝食。8:45より15分のローテー練習後、オープニングセレモニー。数十人の赤い着物をきた子供達が入場し続いて各国の民族衣装を着た子供達が会場中央のフロアーに集まり踊りを披露。そして選手が入場し、それぞれ紹介されてセレモニーが終了。その後すぐに選手は整列して競技が開始された。
 日本ジュニアチームは、段違い平行棒からで1人アメリカのBailie Key選手が同じ班に組み込まれた。プロテクターを付ける暇もなくアップが始まってしまい慌てる選手を落ち着かせる。イタリアのエリンココーチがやって来て「すべての種目で5分のアップとする」という話が伝えられた。開始直前になっていろいろと変更があったりするので戸惑う事が多い。平均台も5分なので、6人チームなら一人50秒の練習が許されることになる。
 段違い平行棒1番安井若菜、すばらしい出来で、12.750。続く杉原愛子はイエーガーで落下。土橋ココは最初の翻転1回ひねりでミス。内山由綺は下りまでしっかり決め14.000の高得点。ラスト河崎真理奈は心配していたイエーガー宙返りで落下。5人中3人が演技にならなかった。
 平均台、1番杉原。開始前のアップ時に下りのマットを移動してはいけないとの突然の指示が出て、急遽、練習とは全く逆向きでの演技を余儀なくされフラフラの演技となるも13.000。安井はロンダート~スワン、スワン前宙、側宙と3回の落下。河崎はまずまずの演技で13.000。そして土橋もいい出来で13.300。内山も演技を練習と逆方向で行い、12.850と点を伸ばす事が出来なかった。2種目を終わって日本は、イタリアA、Bチームに水を開けられ3位、2位イタリアBチームとの差が4.45もあった。なんとしても巻き上げを計りたい所だ。
 3種目目ゆか、河崎、アクロバットの高さがあり12.900。杉原、かわいい動きもよく13.500と高得点。安井、月面宙返りが決まり、13.500と好調維持。土橋、出発前からかかと痛に悩まされ、構成を変えての演技だったが13.200。内山も少し技をおとしての演技で13.400。3種目を終わってイタリアBチームにまだ約2点の差があった。
 最終種目跳馬、イタリアBは段違い平行棒。1番河崎、伸身笠松とびが練習とは見違えるように見事に決まり14.050の高得点。土橋13.450、安井若菜13.900と得点を伸ばす。内山、跳躍が甘く着地して前に大きく出てしまい12.950。ラスト杉原、2日前のチェックでは、まったく跳べていなかったがすばらしい跳躍で13.600の高得点。結果、イタリアBチームを抑え2位となって表彰台に昇った。優勝はイタリアAチームその差10点。3位との差3点だった。個人優勝は日本と一緒に回ったBailie Key選手(アメリカ)だった。日本の最高は6位の内山由綺だった。
<シニア団体戦>
 シニアは、遅い朝食をとり出発。ジュニアの応援、13:55より15分のローテー練習の後、16:00よりオープニングセレモニーが行われ、競技が始まった。会場は、1階2階席まで満席となり試合への緊張感は最高潮となった。日本はゆかから、笹田夏実、月面宙返りを抜きまとめた演技13.500。井上和佳奈12.850。龍和貴子は腰痛があり、思うように練習が出来ていなかった為、龍コーチとも話し合い月面宙返りや2回半~前宙も取りやめ本人は不本意な演技ながらも12.750。寺本明日香13.400と得点を上げ、ラストの村上茉愛。高得点を期待するも最初の新月面宙返りで回転不足でつぶれるように着地し12.800と得点を伸ばす事が出来なかった。
 2種目目、日本チームは休憩となった。イタリアAチームが平均台の演技を行っていた。演技が進み「イターリー、フェラーリ バネッサ!」のアナウンスがありイタリアのスター選手、バネッサの登場。異常な歓声の中、彼女の演技が始まった。しかし後方かかえ込み宙返り1回ひねりを行った時、高さがなく、平均台にぶつかるように着地してそのまま彼女はゆかに崩れ落ちた。2度ほど立ちあがろうとしたが立ちあがる事が出来ずに平均台の演技を終えた。エリンココーチに抱きかかえられ大声援の中、退場してしまった。
 3種目目(日本にとって2種目目)跳馬。井上13.75、笹田13.50、寺本13.75とまずまずの試合運びだったが村上がユルチェンコ2回ひねりに挑むも回転不足で着地ミス13.200。ラストの龍も同じく2回ひねりを実施したが1回半で回転が止まるように落下し、着地ミスで12.800。日本の跳馬の二人のエースの思わぬミスに動揺が走る。
 段違い平行棒、井上、いい出来13.60。笹田、シュタルダー1回ひねりを演技前半に持ってきての実施だったがそこでミスがでてしまい12.75。村上、イエーガー宙返り落下。龍、フット倒立でミス。あとがない日本チーム、ラストの寺本明日香に期待するも肩に力がはいり、閉脚シュタルダー1回ひねりでミスし、下りの前方2回宙で尻もちをついてしまい痛恨の2ミスとなり11.800。日本チームは、追い込まれた状態となった、パネルに映し出された得点表示を見る、日本4位、3位イタリアBチームとの差4.05。このままでは、日本に帰れない。
 どうしても表彰台に乗りたいと最終種目平均台の演技に期待し祈るような気持ちで見つめる中、1番井上13.50と高得点でのスタート。龍、入りのロンダート~宙返りで落下。しかしここからが良かった。笹田、本来の強さが少し戻りつつある演技、Dスコア5.7で決定点14.050と高得点。続く寺本もDスコア5.8で決定点14.050と続いた。ラストの村上13.25とまとめ、日本チームは、表彰式を迎えた。アナウンスが順位を伝える。1位アメリカ、2位イタリアA、そして3位・・・・「ジャポーネ!」。私は日本のコーチ達と喜び合った。苦しい戦いの末の3位入賞だった。個人優勝は、アメリカンカップ2位だったBiles  Simone,2位にRoss Kyla。アメリカは上位6位までを独占した。日本選手の最高の成績は12位の笹田夏実だった。
■3月24日(日)シニア/ジュニア種目別決勝
 天候は崩れ、朝から雨となった。気温も下がり肌寒い、朝食、昼食と予定はなく時の経つのを待つ。14:00出発、15:00より16:00までの種目別出場者によるフリー練習が行われた。開始の1時間以上も前から観覧席が埋まり始め、館内は、熱気に包まれた。出場者はチーム各種目の最上位者1名と各種目のベストスコアを持つ選手1名の合計6名。試技順は、下位より演技し、べストスコアの選手は最後の演技者となる。日本選手の各種目出場者は次の通り
<ジュニア>
跳馬:杉原、河崎、段違い平行棒:内山、平均台:土橋、ゆか:安井
<シニア>
 跳馬:龍、段違い平行棒:井上、平均台・ゆか:笹田
 1種目目のシニア跳馬1番目龍。1本目の試技、ユルチェンコ2回ひねりを実施し着地をとった直後、左膝がふるえるような動きを見せ崩れるようにしゃがみこんでしまった。2本目を棄権し、龍コーチに抱きかかえられての退場となってしまった。その後、他の選手は、順調に演技をこなしジュニアのゆか安井の2回半ひねりと河崎の跳馬の着地でのミスがあった以外は大きなミスは無く、いい演技が多かった。
<ジュニア>跳馬3位に杉原が入賞した。段違い平行棒4位内山、平均台4位土橋、ゆか4位安井
<シニア>段違い平行棒4位井上、平均台とゆか4位笹田
<総評>
 本大会においてロンドンオリンピック団体優勝のアメリカが団体、個人、種目別を通して見事に上位独占を成し遂げた。日本はこれに見習い、より強化を進めなければならないと痛感した。イタリアも日本の上位国である事を、実力を持って記していた。メンバーが少なく急きょ出場を決めた選手がいたことなどを考慮してもイタリアのAチームに日本チームは及ばなかった。最終日に龍が負傷した事は非常に心痛い気持ちだ。しかし、選手、コーチ、審判員全員にとって今回の大会を経験した事は、大きな財産となる。このような機会を与えて頂いた日本体操協会や関係各位に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。