第33回世界新体操選手権イズミール大会現地レポート5

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現地9月26日、世界新体操選手権イズミール大会は、個人総合決勝が行われた。
日本からは早川さくらが18位、皆川夏穗が23位でふたりとも決勝進出を果たし、第1グループに出場した(予選13位~24位)。
試技順1番で登場したのは皆川。
予選で大きなミスが出て14点台になってしまったフープの種目からであったが、予選で失敗したジャンプでの投げの箇所は修正。動きも伸びやかに大きく演技できていたが、後半の足持ちローテーションで足をつかめず、ローテーション自体ができなかった。そしてラストのジャンプ投げのDERも予選と同じくミスが出てしまい、15.133。
早川はクラブの種目から。
アチチュードのローテーションが揺らぎ、回転数も少なくなったが、予選でミスをした箇所は修正して、16.466。
皆川のボール。
終始落ち着いており、難度も正確にやろうとする意識が見えた。指でボールを回す技が、数日前に爪をわった影響もあったがうまく指に乗らなかったが、すぐに動きに替えて事なきを得た。冷静な判断で、16.566。
早川のリボン。
今日はアチチュードのローテーションの軸の乗りがいまひとつで、回転数が少なくなっているが、全体的には過剰な緊張感もなく、華やかに演技できている。16.175
皆川クラブ。
全体的にはダイナミックに演技できていたが、バランスの組み合わせで、クラブで身体の揺れを支える形となり、15.633。
早川フープ。
アチチュードのローテーションの揺れが大きくなってきた。足運びにも疲れが出てきたように思うが、落下ミスは防ぎ、15.933。
皆川の最終演技はリボン。
ローテーションの回転数が早川と同じく少なかったが、予選でミスをしたラストのDERは、しっかりとリボンをキャッチして15.966。
早川の最終演技はボール。
最初の、転回したあとにボールを足でバウンドさせるMが、あまり良い精度ではなかったが無事キャッチ。すると終始伸びやかに美しく演技した。16.683
第1グループが終わった時点で早川は4位。皆川は11位。単純に第1グループの選手数12を足すと早川は16位で、順位をふたつ上げたことになる。
第2グループにはロシアのKudryavtsevaやMamun、ベラルーシのStaniouta、ウクライナのRizatdinova、韓国のSon、中国のDengなどそうそうたるメンバーが出場。
個人総合1位となったのはロシアのKudryavtseva。リボンの種目のみ、若干の操作ミスはあったが動じることなく落ち着いて対処。全種目、まったく揺らぎがなく、減点する箇所がない。非常に難しい手具操作や投げ受けをしているのにも関わらず、手具を操作している感がまったくない。スッと手の中に手具が入ってくる状態で、難しそうに見えないところが逆に欠点と言えるほどの精度である。難度も非常に正確で、模範的なやり方をしているため、こういう演技をされたら誰も太刀打ちできないであろう。
最終種目のフープでは少し曲が余ったが、床をたたく演技をしながら手をガッツポーズの形で喜びを表現。演技を終えて観客に手を振りながらもガッツポーズを繰り返した。表現という点ではMamunに劣るが、表現力の乏しさは選曲によってカバーされている。いまのルールでは、より正確に行う方が高い点数を得られやすいが、それにしてもこれほどの難易度の高い構成を正確に行えること自体が驚異的である。手具の扱いに関しては、ひとり違った世界をいっている。
2位はロシアのMamun。MamunもKudryavtsevaに負けず劣らずのすばらしい演技を見せた。クラブの種目で、ラストポーズ前にポトリと落下があったが、どの種目も緩急の変化に合わせての、動き、手具操作のスピードの変化が巧みで、空気が動く感じがする。Kudryavtsevaと比較すれば難度の揺らぎや、投げの揺らぎなどはあったが、それをミスに結びつけないように引き戻す執念があった。
3位はウクライナのRizatdinova。アチチュードからパッセにもっていくローテーションなどの軸の乗りが非常にすばらしい。これでもかとグルグル回り、難度点をかせいだ。ロシア勢に比べれば手具操作は簡単で、ほぼDERのときにしか投げないが、曲を表現する能力や大きさ、貫禄といった点で、卓越している。
韓国のSonは残念ながら、個人総合ではメダル獲得がならなかった。
最終種目、ボールの種目のラストで、バウンドさせたボールを背面で受ける技があるが、それがキャッチできず落下。それ以外はていねいに演技し、プログラム通りの演技を見せていたが、その落下がなかったとしてもRizatdinovaを超えることはできなかったろう。Sonは正確ではあるが、大きさ、貫禄、上体のしなやかな動きといった点で、Rizatdinovaにはいまのところかなわない。
それでもSonは種目別のフープで銅メダルを獲得しており、同じアジア人として、「やれる」という勇気を与えてくれたことは間違いない。中国のDengも軽やかで伸びやかで大きさのある演技をしており、ここに早川や皆川をはじめとした日本人が肩を並べるようにしていかなければならない。そういった意味でも早川、皆川が個人総合決勝に進み(昨年は皆川36位、早川40位で決勝に進めず)、早川が16位になったことは、大きな進歩である。国から2選手が個人総合決勝に進めたのはロシア、ベラルーシ、ウクライナ、イスラエル、ウズベキスタン、日本の6ヵ国のみ。それを考えると日本のレベルアップは間違いない。
今後の早川、皆川の課題は、自信を持って、”魅せる”演技をするとことであろうか。予選13位から24位の第1グループと、予選1位から12位の第2グループでは明らかに大きな違いがあった。第2グループはまったくよどみのない演技をし、そして作品を存分にアピールしてくる。第1グループが、どうにかこうにか作品をこなしているのに対し、第2グループは難しい技にも果敢に攻めている印象がある。少しぐらいミスが出ても最後までやりきる。難度が揺らぎそうになっても、強引に引き戻す。種目別ファイナルにすべて出場した選手は、計12演技を行ったことになるが、スピードやパワーが全く落ちていない。そんな精神的、技術的、体力的なタフさがある。
これからすぐにアジア競技大会があるが、ひとつひとつの経験をもとに、たくましく成長していってほしい。
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